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「政府の力強い後押し」1兆円! アツいぞ「造船」順風は続く? “潮目の変化”も顕在化

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官民1兆円投資で「順風」ムード しかし…

「米国との関係で造船の重要性が見直され、国土交通省では造船再生・強化に向けた1200億円もの補正予算が決定された。今年は『順風』、帆を上げる風を浴びられるように頑張っていきたい」

Large figure1 gallery20世界最大級のコンテナ船も建造したJMU呉事業所(深水千翔撮影)

 日本中小型造船工業会の田中敬二会長(福岡造船会長)は2026年1月に開かれた賀詞交歓会のあいさつで、造船業の再生に向けた意気込みを示しました。

 国内の造船所が2025年中に契約した輸出船の契約実績は、日本船舶輸出組合によると186隻、約894万総トンでした。年間竣工量は191隻、約833万総トン。2025年12月末時点の手持ち工事量は622隻、約3001万総トンで、3年分以上を確保しています。資機材価格や国際的な環境規制の動向など不透明要素はあるものの、リプレース(更新)需要の取り込みや堅調な海運市況が受注を支え、新造船商談は2029年以降の納期に移りつつあります。

 政府は2025年末、10年間で官民合わせて1兆円規模の投資実現を目指す「造船業再生ロードマップ」を策定。米国との関税交渉の一環として結ばれた日米造船協力や、もがみ型護衛艦の能力向上型に当たる新型FFMのオーストラリア輸出、今治造船によるジャパンマリンユナイテッド(JMU)の子会社化などニュースで取り上げられる機会も多くなり、造船・舶用業界関係者が集う賀詞交歓会の会場は明るい雰囲気となっていました。

 国土交通省海事局の新垣慶太局長は「造船再生の基金は、海事産業の皆さんの強い熱意と、それを支える政治関係者の力強い後援で認めていただいた」と話します。

「造船業再生ロードマップ」では2035年に日本船主の船舶建造需要を満たす1800万総トンの建造能力を確保することが掲げられています。これを実現するため、施設・設備整備による建造能力拡大を図りつつ、工程のデジタル化やロボット・AI(人工知能)技術を通じて建造プロセス全体の生産性を向上。ゼロエミッション船をはじめとした次世代船の需要増加が見込まれる中、これらの開発や建造を支える人材の確保・育成に向けた環境整備などを行っていくとしています。

 日本舶用工業会の木下和彦会長(阪神内燃機工業社長)は「高市早苗内閣が発足し強い経済と安全保障を掲げ、物価対策に正面から取り組む姿勢が示された。政府の力強い後押しに感謝したい」と力を込めました。

中韓に追いつけるのか?1兆円の内訳は

 必要な投資額1兆円の内訳は、造船業界による資金調達で3500億円規模、政府が造船業再生基金などで3800億円規模、残る部分はゼロエミッション船の開発支援などで2800億円規模です。2025年度の補正予算では、造船業再生基金を創設するため1200億円が計上されており、先進的な機器の導入や新技術の開発などを行う事業者を対象に今後10年間で計3500億円規模の支援を実施する方針です。

Large figure2 gallery22常石造船の常石造船所(深水千翔撮影)

「2025年は支援する仕組みができた。2026年はこれを成果につなげなければいけないと覚悟を決めている」(新垣海事局長)

 このように国をあげて造船業を後押しする背景には、日本が新造船の受注、建造ともにシェア率を大きく落としていることがあげられます。

 1956年に建造量が世界1位となった日本の造船業は、かつてシェア率50%を誇っていました。しかし、2024年の新造船受注のシェア率を見ると中国が71%、韓国が14%に対して、日本は8%。同年の竣工量を見ても日本は900万総トンですが、2位の韓国は2000万総トン、1位の中国は3900万総トンと大きく水をあけられています。

 特に、私たちの生活に欠かせない電気を作る発電所の燃料として使われる天然ガスを運ぶ大型LNG(液化天然ガス)船は、三菱重工業や川崎重工業などが手掛けていましたが、2019年を最後に国内で建造されていません。現在、LNG船は韓国が世界シェアの大半を握っており、中国の造船所も存在感を示しつつあります。

 ロードマップに関する海事局の資料では「エネルギー政策に係る船」としてLNG船が取り上げられ、検討会でも今後のテーマとして「LNG運搬船の建造体制整備」が触れられていますが、実際に建造を行うにはさまざまな面で高いハードルがあり、今治造船やJMUも実現可能性の調査・検討に留まっている状況です。

 日本財団の海野光行常務理事は「海事業界に関わるようになって、これほど造船というワードがニュースを通じて、連日目にすることはなかった」と述べつつ、米トランプ大統領や高市早苗首相の方針があったという点に触れ、「今の大波に乗るために対応するのも大事ですが、変化を起こす側に身を置き、攻めのチャンスが巡ってきたと受け止めています」と話していました。

 ただ、業界の「順風」が続くとは限りません。海運では、政情不安により迂回が続いていた紅海とスエズ運河について、2026年1月から海外大手の一部が通航を再開しています。これまでは欧州-アジア間でスエズを避けてアフリカの喜望峰を回っていたことで運賃の高騰が続いていました。

 しかし、スエズの通航が本格的に再開すれば運賃が下がり、時間が短縮されることで“船余り”が起き、新造船の供給過多に陥る可能性が指摘されています。すでに新造船供給の増加と運賃の下落による影響が出ており、コンテナ船社のオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)は1月に発表した25年10―12月期決算で、税引き後損益が8800万ドルの赤字だったことを明らかにしています。“世界単一市場”である海運や造船市況の変化は、日本も例外なく影響を受けます。

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