正式名称は「伝統的工芸品」
東京の伝統的工芸品の展示と実演を行っていると聞き、先日、羽田空港(大田区羽田空港)で開催の「関東ブロック伝統的工芸品展 2020」を訪れました。ちなみに「伝統工芸」という言葉をよく聞きますが、国が認定したものは伝統工芸ではなく、正しくは伝統的工芸品といいます。

私は伝統的工芸品を普段意識していませんが、「果たして身の回りにあるのか?」と身の回りを探してみたら、見つけました。東京産ではありませんが、京都のお土産でもらった西陣織の生地で作られた和風名刺入れです。
さて皆さんは東京の伝統的工芸品と聞いて、まず何を思い浮かべるでしょうか? 私は、下町っぽいイメージで、例えば浅草あたりで売っていそうな和風人形ぐらいしか思い浮かびません。しかし実際は食器などの日常品から装飾品まで、さまざまな伝統的工芸品が現在も作られているのでした。
東京の伝統的工芸品といえば?
そんななかでも、おそらく比較的知名度があるのは「江戸ガラス」にさまざまな切り子模様や装飾を施した「江戸切子」でしょう。

自分では買わなくても、プレゼントにもらうケースが多いかもしれません。実際退職記念や栄転記念といった贈答品として夫婦グラスなどを贈るケースが多いようです。その理由は、価格にバリエーションがあり、びっくりするほど高くないけど高級感があるからとか。
最近の伝統的工芸品は、タンブラーなどの洋食器や耐熱加工の製品が作られるなど、現代人の生活にマッチしています。そんな伝統的工芸品は、江戸後期から明治にかけて培われ、多様化に成功した東京土産の代表格と言えるでしょう。
展示会の会場である空港5階部分「EDO HALL」の展示ブースの中でも、伝統的工芸品はキラキラとひと際目を引いていました。
「作りたいものを作るだけじゃダメ」
「江戸切子」のような、伝統を生かしつつも時流に合わせた商品に比べ、会場の他の伝統的工芸品は伝統に裏打ちされた、いにしえの形を受け継いでいるものがほとんど。もちろん文化的価値はあるのですが……

そのような現状について、展示会のプロデュースを手掛けた小泉竜夫さんは、現在の伝統的工芸品が抱える問題点を話してくれました。
「出展している皆さん、同じものを100年間作っているんですよ。しかし100年前と今の生活文化は違います。リスペクトされて売れるものも当然ありますが、職人さんに『今の生活文化と合わないからなかなか売れないですよ』と言っても、ピンとこないんです。
いろいろな商品を開発するのですが、職人さんが自分で作りたいものを作るだけの、いわゆる『プロダクトアウト』で終わっているのが現状です。技術や素材を使って、職人ならではの発想で今の日本人の生活に合うものを作るという発想がないから、空回りしてるんです。そこを含めてなんとかしていかないと、日本の文化である伝統的工芸品が駄目になってしまいます」
「外国人に直接会ってニーズを感じてほしい」
また小泉さんは、羽田空港を開催場所とした意外な理由を語ってくれました。
「若い人や日本文化に興味を持つ訪日外国人観光客に直接会ってニーズを感じないことには、伝統的工芸品の業界は変わらないだろうという意味もあって開催しました。違った刺激を職人に知ってもらいたいと思ったんです。
訪日外国人観光客はこれだけ増えましたが、彼らは何にお金を使えばいいのか、まだ情報が少ないですからね。キティちゃんもいいですが、伝統的工芸品も買ってもらいたいですからね」

伝統的工芸品の新しい販路として訪日外国人観光客に期待する小泉さん。しかし販路の拡大だけでなく、後継者の育成も重要だと言います。
「よく言われますが、14歳ぐらいまでに伝統的工芸品を体験したり認識したりしないと、その職業には就きません。職人になった人は、14~16歳ぐらいの間に伝統的工芸品に触れて、すごくいいなって感じていますから」
会場ではさまざまな伝統的工芸品の実演が行われ、茶席も設けられ、訪日外国人観光客が興味深げに抹茶を飲みながら楽しんでいました。お茶によるおもてなしも小泉さんの発案です。伝統的工芸品を体験してもらうことが、その存在を知らせ、すそ野を広げる1番有効な方法だからです。
文化は体験することから全てが始まる――そんな当たり前のことを思い知った、今回の空港での出会いでした。
