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高度経済成長を支えた都内のレトロ団地が「登録文化財」になったワケ

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戦後復興を支えた団地

 2020年は東京が世界各国から注目を集めるオリンピックイヤーです。前回の東京五輪は1964(昭和39)年に開催。そこから半世紀以上が経過し、世界も日本も大きく変わりました。

 前回の五輪開催は、戦災から復興した姿を世界に見せるという意味合いが含まれていました。戦後の復興は、敗戦国が短期間で奇跡的に経済成長を遂げたことをアピールする狙いもありました。そうした戦後復興を住宅面から支えたのが、団地です。

昭和に建てられた都内団地の階段のイメージ(画像:写真AC)

 東京は焼け野原と化したために、満足な家屋に住める人はほんの一握りでした。住居を失った人々は、自力でバラック小屋を建てて生活の再建を目指します。また、親を失った戦災孤児も多く、住居をどうにかできなかった子どもは地下道などをねぐらにしていました。戦後の一時期は劣悪な住環境を強いられていたのです。

住宅問題の解決に動いた鳩山首相

 劣悪な住環境の改善は、戦後日本が再出発するのに喫緊の課題でもありました。住宅難は東京だけの問題ではなく全国的な問題ですが、戦争で家や財産を失った人々が終戦後に食と職を求めて東京に集まりました。また、地方に疎開していた人たちも東京に戻ってきました。そのため、東京は地方よりも深刻な住宅不足に陥ってしまったのです。

 安心して生活できる住宅がなければ、人は働くことができません。働くことができなければ、金を得ることができず、金を得られなければ、日本経済は再生しません。つまり、戦後日本が陥っていた負のスパイラルは、住宅問題が根源だったといえます。

 この難問解決に動いたのが、1955(昭和30)年に首相に就任した鳩山一郎です。鳩山首相は住宅を供給するために、日本住宅公団を設立します。

 各地方自治体も住宅局や住宅供給公社などで公営住宅を建設。日本住宅公団や地方自治体は、賃貸型集合住宅と分譲型一戸建ての2タイプの集合住宅をつくりました。どちらも一般的に団地と呼ばれる集合住宅ですが、団地と聞いたときに多くの人がイメージするのは前者の賃貸型集合住宅でしょう。

地方自治体も建設、住宅難は解消へ

地方自治体も建設、住宅難は解消へ

 賃貸型集合住宅の多くは4~5階建て、間取りは2~3DKでした。日本住宅公団がつくった団地は敷地内に多くの住棟が建てられるのが特徴です。規模の大きな団地は20棟以上にも及び、居住者も500~1000人というものでした。

 そのため、団地の1階には生活用品や生鮮食品を販売する商店、集会場などが設けられました。また、住棟の中心部にはお祭りなどができる公園や広場が設計されました。

ヌーヴェル赤羽台へと生まれ変わった旧赤羽台団地の住棟群(画像:小川裕夫)

 戦後復興期から高度経済成長期は、特に住宅難が深刻でした。日本住宅公団だけが団地を建設しても需要に追いつきません。日本住宅公団と地方自治体が競うように団地を建設したことで、住宅難は解消に向かいました。

 1981(昭和56)年、住宅供給を担った住宅公団は一定の役割を果たしたことを理由に住宅・都市整備公団へと改組。役割を住宅の供給から住環境の改善へとかじを切りました。

平成になって再評価された団地

 さらに、1999(平成11)年には都市基盤整備公団になります。2004年には似たような役割を担っていた地域振興整備公団の地方都市開発整備部門を統合し、名称を都市再生機構(UR都市機構)と改めています。

 戦後復興期から高度経済成長期にかけて日本住宅公団が建設した団地は、歳月の経過とともに老朽化。また、ライフスタイルも変化し、団地は暮らしに適合しなくなります。一昔前の生活スタイルを踏襲する団地は、ダサい・貧乏くさいといったイメージで見られるようにもなりました。

 その一方、平成に入ると団地が再評価される兆しも出てきます。再評価する声の中には、昭和の懐かしい暮らしや輝かしかった高度経済成長といったような思い出をきれいに補正している部分もあります。それでも団地が日本の住環境と意識を劇的に変え、ライフスタイルに大きく影響を与えたことは間違いありません。

国の登録有形文化財になった赤羽台団地のスターハウス

国の登録有形文化財になった赤羽台団地のスターハウス

 高度経済成長期に建設された団地は、50年の歳月を経て次々に建て替えられています。東京・北区の赤羽台団地は日本住宅公団が1962(昭和37)年に建設しました。3000戸を超えるマンモス団地ということのみならず、赤羽台団地にはスターハウスと呼ばれる形状の住棟があり、それが抜群の存在感を放っていました。

 建て替えが始められた赤羽台団地は、新たにヌーヴェル赤羽台というスタイリッシュな住棟に生まれ変わっています。ヌーヴェル赤羽台の第1号住棟は2006(平成18)年に完成。順次、住棟が新しく建て替えられています。

ヌーヴェル赤羽台に今でも残るスターハウス(画像:(C)Google)

 スターハウスは貴重な建築物であることから文化資源としての価値が高いと判断され、日本建築学会がUR都市機構に保存を要望していました。2019年7月に赤羽台団地のスターハウスは団地内の住棟として初となる国の登録有形文化財に認められました。こうして、保存がかなうことになったのです。

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