雨の日に傘を差しながら自転車を運転している人を見掛けることがあります。傘差し運転をすると前が見えにくくなるため、事故のリスクが高まります。また、ハンドルに傘を掛けた状態で自転車を運転している人もいますが、この場合は傘が車輪に巻き込まれて転倒する恐れがあり、危険です。これらの行為は道路交通法違反に該当する可能性があるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
5万円以下の罰金を科される可能性
Q.そもそも、雨の日に傘を差した状態で自転車を運転すると、法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。
牧野さん「自転車の傘差し運転を行った場合、道路交通法違反に該当し、5万円以下の罰金に処される可能性があります(同法71条6号、同法120条10号)」
Q.では、もし自転車の傘差し運転が原因で事故を起こした場合、より重い法的責任を問われる可能性はありますか。
牧野さん「自転車の傘差し運転で交通事故を起こして歩行者をけがさせてしまい、損害賠償の責任を負ったときは、傘を差していたことを理由に過失が重いと認定され損害賠償金額が増額される可能性があります。
さらに傘差し運転中に交通事故を起こした場合には、相手がたとえ車であっても、傘を差しながら自転車を運転していた、つまり安全運転していなかったことによって、自転車側の過失が認定されて(過失相殺されて)損害賠償金額が減額される可能性があります」
Q.自転車のハンドルに傘を掛けた状態で運転する行為はいかがでしょうか。この場合も法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。
牧野さん「片手運転ではないので、道路交通法違反には該当しません。ただし、同法55条2項の『乗車または積載の方法』の次の条文に該当する可能性があり、5万円以下の罰金に処される可能性があります(同法120条2項)」
【道路交通法55条2項】
車両の運転者は、運転者の視野もしくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害し、または外部から当該車両の方向指示器、車両の番号標、制動灯、尾灯もしくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ、または積載をして車両を運転してはならない。
Q.道路交通法違反に該当するにもかかわらず、雨の日に傘差し運転をする人を見かけます。自転車の傘差し運転がなくならないのはどのような理由が考えられるのでしょうか。
牧野さん「やはり『レインコートを着たくない』といった心理が働くのではないでしょうか。しかし、傘差し運転はやはり危険ですので、雨天でも両手で運転できるようにレインコートを装着する安全意識を持つことが重要です」
オトナンサー編集部