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「タスクフォース」は半沢直樹だけじゃない! リアル文科省のチームが掲げる「次世代教育」の本気度とは

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公教育の見直しは急務となっている

 今期話題沸騰のドラマといえば、もちろんTBSテレビ系の『半沢直樹』。ご覧になっている人も多いことでしょう。

 劇中、東京中央銀行に勤める主人公の半沢が対峙しているのは、国交大臣率いる「タスクフォース」チームです(ほか、大物政治家など)。

 タスクフォースとは、特定の課題に取り組むために設置される特別組織のこと。ドラマを通してその名称を知った、という視聴者もいるかもしれません。

 さて、千代田区永田町・霞が関にあるリアルな日本政府には、どのようなタスクフォースがあるのでしょうか。教育ジャーナリストである筆者は今回、文部科学省の例を紹介したいと思います。

 ドラマをきっかけに、国の政策に目を向ける機会としていただけたら幸いです。

※ ※ ※

 2020年、新型コロナウイルスという予想もしなかった出来事が起きましたが、教育の世界も一気に変革の時代に突入しました。

 もともと2020年度は新しい学習指導要領がスタートするなど、大きな転換期の年度として注目を集めていました。

劇中、国交大臣率いる「タスクフォース」と対峙する半沢直樹(左)。一方、リアル文科省のタスクフォースが描く次世代の教育とは?(画像:TBSテレビ)

 そこに新型コロナウイルスの感染拡大も重なり、緊急時にも学習を継続させるオンライン学習を始めとした「教育でのIT活用」を求める声が大きくなったのは記憶に新しいところでしょう。

 特に公立学校では旧態依然の学校教育システムの限界が露呈し、根本的に見直す機会にもなりました。

 しかし、すでに2016年1月22日に閣議決定された「科学技術基本計画」で、教育環境をICT機器を取り入れ時代に合った整備を推進し、将来に渡って役に立つ生徒児童の総合力を伸ばしていくことが提言されているのです。

政府が掲げる「ソサイエティー5.0」とは

政府が掲げる「ソサイエティー5.0」とは

「科学技術基本計画」は1995(平成7)年に制定された「科学技術基本法」を基に、5年ごとに策定されています。

 2016~2020年度の「第5期科学技術基本計画」に登場したのが「Society5.0(ソサイエティー5.0)」という言葉です。

「第5期科学技術基本計画」概要版に記述されている「Society5.0」の説明(画像:文部科学省)

 マンモスを追いかけていた狩猟時代をソサイエティー1.0、田畑を耕す農耕社会を2.0、産業革命以降の工業社会を3.0と、社会構造の変化に合わせた呼び方をしています。

 1990年代半ば以降の情報社会(ソサイエティー4.0)からさらに進化した現代社会は、ビッグデータを人工知能であるAIを活用する時代になりました。

 ソサイエティー5.0では新たな社会の到来に沿った対策をしてい必要があると提言したのです。

 農林水産省や総務省、内閣府など、各府省がソサイエティー5.0時代に取り組むべき課題や未来図を掲げています。

 特に文科省が提言した内容は、昭和から脈々と受け継がれてきた公教育を刷新させる中身となっており、コロナ禍も重なり変化の動きが加速しています。

従来の学校授業のあり方にも切り込む

従来の学校授業のあり方にも切り込む

 日本の公教育では、良くも悪くも「成績に関係なくクラス全員が先生の授業を聞く」スタイルを基本としてきました。

 小中学校の義務教育課程ではグループ活動による生徒児童の自主性を重んじるアクティブラーニングが行われていますが、今も変わらず大きな柱は「先生による一斉授業」のままです。

 文科省内のタスクフォースが作成した資料を見ると、ソサイエティー5.0に向けて大きく舵を切ろうとしていたことが分かります。

 2018年年6月の大臣懇談会「Society 5.0の社会像・求められる人材像、学びの在り方」によると、クラスの形は従来通りにしつつも、生徒児童の成績に合わせた学習計画をAIが立て、苦手単元の復習を容易にできる学習支援の確立を目指しています。ICT(情報通信技術)を駆使した内容です。

 公教育に新時代のシステムを導入することで、幅広い学力層が集まるクラスの一斉授業では達成が難しい生徒児童に合わせた学力定着が目指せます。

 コロナ以前は“机上の空論”と捉えられがちでしたが、休校時に学習機会がなくなってしまうことを危惧する保護者からのニーズは高まっています。

 ICTを活用することで、今後需要が高まるデータサイエンスや統計学の分野を小学生の頃から学ばせることも可能になります。

 文科省が提言するソサイエティー5.0では情報活用能力の重要性を訴えており、2024年度以降の大学共通入学テストに「情報」を追加科目にする検討を開始していました。

 正式発表は今のところ行われておりませんが、文科省は時代に沿った改革を推し進めていくと考えられます。

高校での文系理系分断の見直しも

高校での文系理系分断の見直しも

 ソサイエティー5.0時代の人材育成のため、高校教育の分野でも大きな変革を行うことを示唆しています。 

 普通科の高校に在籍する生徒のうち7割が文系なため、高校2年以降に理数系科目を十分学習しないまま就職や進学をしています。

勉強する高校生のイメージ。普通科の高校に在籍する生徒のうち、実に7割が文系(画像:写真AC)

 そのため、今後需要が高まると見込まれるビッグデータを解析する人材(データサイエンティスト)は不足しており、育成するには早い時期から統計学やプログラミングに慣れ親しませることが必要です。

 高校で文系理系と決めてしまうと、こうした分野に進学や就職を考える学生数が圧倒的に少なくなってしまいます。

 AIに対する知識を持ち、文系理系に偏らずバランスよく学べるよう高校改革に言及しています。

 全ての改革を一度に行うことは物理的に難しい面もありますが、急激に社会が変化した今、教育の世界も待ったなしで変貌を遂げるのは避けられない状況です。

新しい時代にマッチしているが課題もある

新しい時代にマッチしているが課題もある

 文科省が打ち出した新しい教育の形(Society5.0)は、新時代に沿った教育のあり方を提言しています。

 ICT活用に関しては、さまざまな学力層の生徒児童がまんべんなく理解を深める役割が期待できますが、学校内の学習によって学力格差問題など全てが解決することは難しいでしょう。

 新技術が次々に登場し、それを瞬時に理解できる子は無限に伸びる可能性がありますが、時間をかける必要のある子もいます。

 両者の溝を広げず、またひとりひとりの個性を活かせるにはどういった公教育が良いのかという視点を持って教育改革を進めていくことは必要です。

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