旅先で持ち帰ってはいけない物とは?(画像はイメージ)
秋は行楽シーズンですが、旅先で「これ、持って帰っていいのかな?」と迷ったことはありませんか。例えば、ホテルのタオルや旅館の浴衣、ビュッフェのパン、飛行機の毛布、空港ラウンジのお菓子などを持ち帰ってもいいか判断に迷う人もいるようです
「宿泊代を払っているから」「無料だから」と思いがちですが、無料で使えることと、自由に持ち帰っていいことは別問題で、場合によっては、単なるマナー違反ではなく「窃盗」として問題になることもあります。刑法235条の窃盗罪の法定刑は「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」です。元警視庁刑事の視点から、旅先で迷いがちな“持ち帰り”の境界線を紹介します。
【ホテル&旅館編】持ち帰ってもよいものは?
まずは宿泊編です。使い捨ての歯ブラシやカミソリ、個包装のアメニティーなどは、宿泊客に提供され、持ち帰り可能なケースが多いでしょう。
一方、タオルやバスタオル、旅館の浴衣、ドライヤーなどは一般的に、滞在中に使用するための備品です。「宿泊料金に入っているんだから、タオル1枚くらい」という理屈は通りません。宿泊料金を支払ったからといって、客室内の備品の所有権まで宿泊客に移るわけではないからです。
また、ホテルに置かれた化粧品やシャンプーなどは、小さな使い切りタイプなら持ち帰り可能で、大きなボトルは備品というケースがあります。私なら一つの目安として、「次の客も使う物か?」と考えます。
ただし、これだけで決めつけることはできません。施設によってルールは異なるので、迷ったらフロントに聞くのが一番確実です。
【新幹線・飛行機編】毛布やヘッドホンは?
次は移動編です。飛行機で配られるアメニティーと、座席に置かれている毛布やヘッドホン。同じように「無料」で利用できても、意味は違います。
ポイントは、「もらった」のか、「借りた」のかです。機内や車内で使用するために貸し出されている物なら、当然ながら持ち帰っていい物とは限りません。「記念に一つくらい」「他の人も持って帰っているから」というのも、持ち帰っていい理由にはなりません。
刑事事件として考える場合も、単に「持って帰った」という結果だけでなく、誰の所有物なのか、持ち主が持ち出しを認めていたのか、本人がどう認識していたのかといった事情が重要になります。
「知らなかった」と言えば、すべて許されるわけではありません。少しでも「これ、持って帰ったらまずいかな?」と思ったなら、確認することが大切です。
【ビュッフェ・ラウンジ編】「食べ放題」の料理は持ち帰り可能?
最後は食事編です。ホテルの朝食ビュッフェで、おいしかったパンを「夜食に」とバッグへ。これも注意が必要です。「食べ放題」は、「持ち帰り放題」ではありません。ビュッフェは一般的に、決められた場所や時間の中で飲食するサービスです。店側が持ち帰りを認めていないのに、勝手に料理を持ち出していいわけではありません。
消費者庁と厚生労働省の「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン」でも、一般的な飲食店の料理は店内で食べることを前提に調理されているとした上で、持ち帰りに適する食品は事業者が判断し、消費者はその指示に従うとしています。また、ビュッフェについては、まず少量ずつ取って「食べ切る」ことを基本としています。
空港ラウンジなどの無料のお菓子なども考え方は同じです。「無料」だからといって、バッグいっぱいに詰めて帰っていいとは限りません。「無料」と「自分の物になった」は別なのです。
私は警視庁で約30年間、さまざまな事件捜査に携わってきました。その経験から、こうしたケースでまず意識してほしいのは、「自分に提供された物なのか、それとも一時的に借りている物なのか」という視点です。
歯ブラシでも、タオルでも、パンでも、値段の高い安いが境界線ではありません。「たかがタオル1枚」「パン1個くらい」と軽く考えてしまいがちですが、他人の所有物を勝手に持ち去れば、窃盗の問題になり得ます。冒頭でも触れましたが、窃盗罪は決して軽い犯罪ではありません。
一方で、食品ロス削減の観点から、飲食店側の判断で食べ残しの持ち帰りを認める動きも広がっています。消費者庁も、店側の説明を十分に理解した上で持ち帰るよう呼びかけています。
だからこそ、迷ったときは自己判断しないこと。「これは持ち帰ってもいいですか?」と一言確認しましょう。それだけで、「持ち帰っていいもの」と「その場だけで利用するもの」の境界は、ぐっと明確になります。
せっかくの楽しい旅行です。「無料だから」「みんなやっているから」で、思わぬトラブルまで持ち帰らないように注意し、すてきな思い出を作ってくださいね。
治安戦略アナリスト・危機管理スペシャリスト 小比類巻文隆
