2隻の船で運航
日本列島には数多くの離島があり、有人離島には生活を支えるための航路があります。今回はそうした航路の中でも、淡路島の近隣にある離島・沼島(ぬしま)の生活と観光を支える沼島汽船を取り上げます。
沼島汽船「しまちどり」(安藤昌季撮影)
沼島は、『古事記』『日本書紀』に記された国生み神話の舞台という説もある島です。イザナギとイザナミの二神が天の沼矛で青海原をかき回してできた島が「オノゴロ島」で、二神が国生みで最初に生んだのが淡路島とされます。オノゴロ島がどの島なのか、そもそも実在するのかは諸説ありますが、沼島には古来「おのころ島の伝え」や「おのころ神社」があるため、「日本の始まりの島」として観光地にもなっています。
また、豊富な漁業資源があり、ハモなどの特産品も有名です。
この沼島と淡路島の間には定期航路があります。古くは1946(昭和21)年に洲本~沼島航路が開設され、旧日本海軍から払い下げられた木造貨客船「原田丸」が就航しました。後年は南淡路の港を経由し、洲本~沼島に2時間近くを要していたようです。
そして1969(昭和44)年、淡路島の洲本・福良・土生と沼島を結ぶ3社が合併して発足したのが沼島汽船です。その後、福良航路は1997(平成9)年、洲本航路は2016(平成28)年に廃止され、現在は沼島から最も近い土生を発着する航路のみが残っています。
所要時間は片道10分です。1日10往復を運航しており、利便性は低くありません。往復運賃は920円ですが、運航コストを考えるなら妥当でしょう。
船は小さいけど俊足
では、さっそく利用してみましょう。2026年7月の金曜、土生港10時30分発の便に乗りました。土生港のターミナルはかなりきれいです。切符売り場では野菜や花の無人販売もありました。
乗り込んだ船は「しまちどり」です。56総トン、旅客定員82人、全長25.9mで小型ですが、最大速力は22.44ノット(41.5km/h)とかなり速い船です。バリアフリートイレやテレビも備えます。乗客は30人とかなり乗っています。自転車を後甲板に載せる人もいました。
座席は進行方向向きのクロスシートです。飲み物ホルダーも付いています。天気が良かったからか、船はあまり揺れません。船足が速く、沼島のヒョウタンのような島影がぐんぐん近付きます。なお、空から見ると勾玉のような形をしているのも、神話の地という感じがあります。
沼島港の建物も新しく、ピカピカです。島の文化や歴史に関する展示がありました。島内のパワースポットを観光し、昼食を楽しんだ後で、14時40分発の便で淡路島に戻ります。
3代目「しまかぜ」には52人が乗船していました。2020年に建造された56総トンの船で最大速力は21.81ノット(40.4km/h)。「しまちどり」とよく似ていますが、定員は2人多く84人です。
こちらもバリアフリートイレが付いています。テレビは電源が切られていました。人口389人(2023年)の島ですが、学校もあり、船には子どもたちも多く乗っていました。
沼島へ行くには、神戸や大阪からだとまず淡路島に渡り、さらにコミュニティバスで土生港まで来る必要があるため行きにくくはありますが、記紀神話のロマンとおいしい食べ物は十分な魅力です。乗船時間も短いため、離島航路デビューにもおすすめです。
