1.深夜特急 (沢木耕太郎)
この本の26歳の主人公「私」は、インドのデリーからイギリスのロンドンまでを乗り合いバスだけを使って行く!と決め、仕事を辞めて旅に出ます。
途中で立ち寄った香港やバンコクで、日本にはない熱気に煽られ、思わぬ長居をしてしまったり……。一年以上にわたるユーラシア放浪の物語です♡
1986年に刊行されて以来、30年以上にわたってバックパッカーの心をつかみ、旅に送り出してきた名作です。この本の影響で、80年代と90年代に個人旅行が流行したと言われています。当時、ボロボロになったガイドブックとこの本を、旅先のお供にする人があちらこちらで見られました◎
photo@ニューデリー
この本は筆者自身の旅行体験に基づいており、ネットインフラが整っていない1970年代前半当時の交通・宿泊事情や、途上国の貧困さも赤裸々に描かれています。
インドやトルコで出会った人々との出来事が主人公の内面を成長させていく様子、日常生活では味わえない価値観の変化や、ふとした瞬間に感じる寂しさなど、一人旅の経験がある人なら誰もが共感できそうです◎
新潮文庫より全6巻で刊行されており、1巻は香港・マカオ、2巻はマレー半島・シンガポール、3巻はインド・ネパール、4巻はシルクロード、5巻はトルコ・ギリシャ・地中海、6巻は南ヨーロッパ・ロンドンとなっています。
2.冷静と情熱のあいだ (江國香織・辻仁成)
主人公の順正とあおいは、10年前に日本で学生時代を共にし深く愛し合っていましたが、別れてそれぞれの人生を歩んでいました。順正はイタリアのフィレンツェで絵画修復士をめざし、恋人もいましたが、あおいの事を忘れられませんでした。
ある日、順正はあおいがイタリアのミラノにいることを知ります。いてもたってもいられずあおいを訪れると、あおいはアメリカ人の恋人と暮らしていました。その場を立ち去る順正。
二人は10年前にある約束をしていました。あおいの30歳の誕生日にフィレンツェのドゥオーモのクーポラで会おうと。10年前の約束を相手が覚えているか分からない上に、互いに恋人もいる。二人の恋の展開にときめく1冊です♡
photo@フィレンツェ
この小説は、月刊誌に江國香織があおい目線でストーリーを書き、次に辻仁成が順正目線でストーリーを掲載するという交互連載の形で書き上げられました。
江國香織のパートは赤い装丁で『Rosso(ロッソ)』、辻仁成のパートは青い装丁で『Blu(ブリュ)』と書かれ別々の単行本としてセットで発売されました。
江國香織の繊細かつ軽やかなタッチで日常を描きだす文章力と、辻仁成のえぐるような心理描写に引き込まれ、一気に2巻読めてしまう作品です♡刊行当時、50万部を超えるベストセラーとなりました◎
フィレンツェやミラノの街並みが浮かび、雑踏までも聞こえてきそうな風景描写がイタリアを訪れたくなる一冊です。
3.アルケミスト 夢を旅した少年 (パウロ・コエーリョ)
スペインの羊飼いの少年サンチャゴは、年老いた王様の導きによって、エジプトのピラミッドに宝物を探す旅に出ます。旅をする中で、さまざまな人々との出会いと別れをくりかえし、人生の知恵を学んでいく少年の物語です。
ブラジルでも売れていたこの本は、1993年にアメリカで出版されてから国際的なブームとなり、67か国に翻訳され世界で3000万部売れるという大ベストセラーになりました◎
photo@ピラミッド
この本の素晴らしいところは、人生の教訓となるような言葉がたくさん散りばめられているところです◎大人でもハッとして自分の人生に向き合わざるを得ないような核心を突く言葉がたくさん出てきます。
言い訳を探して夢をあきらめないこと、他人の評価を気にしすぎて自分を見失わないこと、今を一生懸命生きることが将来につながること、失敗や傷つくことを恐れないこと……旅の途中で出会った人々が、愛情ある言葉で主人公に語りかけます◎
この本は、小説としては短めで文章表現もやわらかいので、読書慣れしている人なら3~4時間で読めてしまいます♪少年と一緒に旅をしているような感覚も楽しめますよ♡
4.かもめ食堂 (群ようこ)
日本人の女性サチエは、フィンランドの首都ヘルシンキで「かもめ食堂」という日本食レストランをオープンしました。しかし、近所の人々に敬遠されてしまい、店はガラガラの状態に。
そんな小さな食堂で、次第に日本人同士やフィンランド人とも絆ができていく、笑いあり涙ありの1冊です♡
photo@ヘルシンキ
読み進める中で読者の心を暖かくするのが、仲間たちの友情のありかたです。登場人物それぞれが事情を抱えていますが、その苦しみや悲しみに触れても、無理に聞き出すことはなくただそっと寄り添うだけ。
酸いも甘いも噛み分けた、大人の女性だからこその友情の形がとても素敵です。純粋で風変わりな登場人物もいて、軽妙なタッチで人間模様を描いているため、楽しみながらさらっと読める小説です♡
この本をきっかけに国内で北欧ブームが起こったと言われています♪ヘルシンキを訪れ、素敵な北欧家具の並ぶレストランで食事をしたくなりますよ♡
5.空色ヒッチハイカー (橋本紡)
主人公の彰二は、憧れの兄が残したキャデラックに乗って、目的地に向かい車を走らせます。道中、いろいろなヒッチハイカーを乗せながら。
個性あふれるヒッチハイカーとの出会いと別れの中から、さまざまな気づきを得ていく青春の物語です♡
優秀な兄を持つ弟の迷いや葛藤が、若者の心をつかむ小説です。年代物のアメ車で旅をするなんて、それだけで絵になりそうですよね♡
※写真はイメージです。
この作品の魅力は、最初に乗せるヒッチハイカーとなる女性京子ちゃんと言っても過言ではないでしょう。可愛くて色気もあって、内面の芯の強さや美しさも兼ね備えている、素敵なお姉さんです♡そんな京子ちゃんに翻弄される彰二のドキドキと、車窓からの風景がリアルに伝わってきそうです♪
京子ちゃんの後にもいろいろな人を乗せます。後半に乗せるおじいさんの話は、命の大切さを感じほろりとしてしまう場面も。いろいろな生き方があるのだなと価値観を広げてくれるとともに、ヒッチハイクもしてみたくなる軽快な1冊です♡
6.ドナウの旅人(宮本輝)
西ドイツからルーマニアまでの3000kmをドナウ川に沿って旅する母と年下の愛人、娘とドイツ人の恋人。2組の男女の心の揺れ動きと成長を、旅の途中で出会う人々とともに描いた作品です。
旅行小説というとよく名前が挙がるのがこの一冊。1983年に朝日新聞でこの小説の連載が始まりました。文中に西ドイツという言葉が出てくることからも分かるように、時代背景は現在とはまるで違います。
こちらの本はとにかく物語の魅力にぐいぐいと引き込まれる、日本屈指のストーリーテラーである宮本輝ならではの作品といえます◎
photo@ドナウ川(ルーマニア)
麻沙子の母絹子は、突然、「ドナウを旅したい」という手紙を残して夫を捨てて家を出てしまいます!かつてドイツで勉強したことのある麻沙子は、母親を追いかけて西ドイツに行くのですが、絹子は17才年下の愛人長瀬道雄と一緒にいることを知り、二度目の衝撃を受けます!
この設定が奇抜ながらもリアリティのある心理描写であるため、絹子の心情にひきつけられ、読者の心をつかみます◎麻沙子はかつてのドイツ人の恋人シギィと再会し、一緒になって母親と道雄を別れさせようとするのですが、ここから先にいろいろなことが待ち受けています。
目前に広がるような風景の変化と、登場人物の悩みや葛藤、心の揺れの移り変わりにひきつけられ、夢中で読み進めてしまいます♡
7.源氏物語 (紫式部)
こちらは誰もが知っている古典の名作、光り輝く美貌の持ち主である男性貴族、光源氏(ひかるげんじ)の物語。皇族でありながら、姓を与えられ臣下となった光源氏は、その美貌や才能と繊細な感性で、さまざまな女性をとりこにしていきます。
顔も知らないうちに死別した実母に似ている、若い義母藤壺との禁断の恋。藤壺にそっくりで後に最愛の女性となる少女紫の上と出会い、理想の女性に育てる楽しみを見出します。
愛する女性の死や、正妻の不義など、政治的要素も取り込みながら波乱万丈な人生をつづった不朽の名作です◎
源氏物語には数々の名シーンがあります。旅に出たくなると言えば、危険な恋にはまり京からの追放を予知した源氏が、自ら須磨に退去するシーンではないでしょうか(源氏物語「須磨」「明石」の巻。講談社文庫では第三巻に収載。)
photo@明石海峡大橋(兵庫県)
最愛の妻である紫の上を京に残して、26歳の源氏は須磨に退去します。須磨には秋風が吹き、荒波が寝床にも打ち寄せるかのようでした。海を知らなかった源氏は、そこで憂愁の日々を過ごすことになります。
翌年、源氏の存在を知った明石の入道が迎えに来て、源氏は明石へと移ります。そこには、美しく教養あふれる明石の君との出会いが待っていました。
源氏は須磨で、月を眺め、歌を詠み、音を奏でるといった、源氏の人生の中で珍しく女性と関わりのない日々を過ごします。風流でありながらも、源氏の心の寂しさが浮き彫りになるような風景描写に心を打たれます。
源氏物語は、現在でも根強いファンが多く、物語に登場する舞台をたどるツアーが開催されるほどです♪ぜひ、美しくも物悲しい源氏物語の世界にはまってみてください♡
以上、読んだらきっと旅に出たくなる本をご紹介しました^^上記の小説の多くが映画化もされています。まずは、読書で自分だけの想像の世界を味わってから、映画でも楽しんでみてはいかがでしょうか◎
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