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一方的にボコられた「中東屈指の軍事大国」自慢の空軍戦力なぜ使わなかった? じつは自衛隊も他人事じゃないかも

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2025年6月に起きたイスラエルによるイラン攻撃は戦史に新たな1ページを刻む出来事となりました。「12日間戦争」と呼ばれるこの戦闘のポイントは、イスラエルが限りなく完璧に近い航空作戦を展開した点でした。

有効な迎撃態勢を敷かなかったイラン空軍

 2025年6月半ば、戦争の歴史に新たな1ページを刻む出来事が起きました。イスラエル空軍は、周到に練り上げられた作戦計画のもと、イラン本土に対する大規模な航空攻撃を敢行したのです。後日「12日間戦争」と呼ばれるようになったこの戦いの注目ポイントは、イスラエルが限りなく完璧に近い航空作戦を展開した点でした。

Large figure1 gallery5イラン空軍のF-14「トムキャット」戦闘機。見慣れたアメリカ海軍の灰色主体の迷彩とは異なる、茶色主体の迷彩が施されている(画像:サンディエゴ航空宇宙博物館)。

 名称どおり12日間続いた戦闘において、イスラエル空軍は1500ソーティ、すなわち「延べ1500機」にも及ぶ頻繁な攻撃をイランに対して行い、同国の広い範囲に点在していた軍事拠点や指揮通信網、防空システムなどの多くを無力化しています。

 驚嘆すべきは、その過程でイスラエルが失った有人機は1機もなかったことです。せいぜい、ごく少数の無人機を失ったぐらいしか目立った損害はなく、イスラエル空軍が誇るF-35I「アディール」、F-15I「ラーム」といった戦闘機群は、文字どおり無傷のまま戦域を支配したのです。

 この圧倒的ともいえる戦果の背景には、徹底した奇襲作戦の実施がありました。開戦初頭、イスラエルは電子妨害機や無人機を駆使し、イラン全土に展開していた防空レーダー網を早期に沈黙させます。防空ミサイル部隊は標的を見失い、発射機が稼働するよりも前に、誘導兵器による精密攻撃で次々と無力化させられてしまいました。こうした流れにより、イランの防空態勢は「盲目」と化し、組織的な迎撃を展開することができなくなったと言えるでしょう。

 ここで浮かび上がる大きな疑問は、イラン空軍の存在です。表向き、イランは中東屈指の空軍戦力を有しています。戦闘機だけでも数百機規模で保有していると言われており、古いながらもF-14「トムキャット」やF-4「ファントムII」、F-5「タイガー」などといった傑作機が名を連ねるほか、自国で近代化改修したと称する各種機体までリスト上には並びます。

 しかし実際には、戦争の全期間を通じて、イラン空軍は有効な迎撃戦闘をほぼ採っていません。いったい、彼らは何をしていたのでしょうか。

戦力温存の結果、多くを失うことに

 結論から言えば、イランは航空戦力をあえて温存したと考えられます。イスラエルの奇襲で制空権が完全に失われた以上、残存機を無理に出撃させれば瞬時に撃墜され、国家防衛の象徴的資産を失うことは必至でした。イランは、戦闘機を分散退避させ、目立った出撃を控えたと推測されます。言い換えれば、イラン空軍は「戦わないことによって生き残る」という苦渋の選択を取ったというわけです。

Large figure2 gallery6イスラエル空軍機のセンサーに捕らえられたイランのF-14「トムキャット」。この後破壊されたが、非稼働機であったと考えられる(画像:イスラエル空軍)。

 ですが、それは戦場において敗北を意味しました。自国上空を含む周辺空域はほぼイスラエルが支配し、戦術的に「やられたい放題」の状態になってしまいました。結果、核開発関連施設、弾道ミサイル基地といった施設はもちろん、軍や革命防衛隊の要人、核技術者に至るまで、精密誘導兵器による攻撃に対してまったく対抗することなく終わったのです。

 加えて、イランの戦闘機群が沈黙を保った背景には、構造的な問題も挙げられるでしょう。主な原因は機材の老朽化が著しいことです。イランの軍用機の多くは1970年代から1980年頃に導入されたものであり、制御系統やエンジンは何度も改修されているものの、最新の装備で固められたイスラエル空軍機と対峙するのは難しい性能です。

 イラン空軍には象徴的な存在としてF-14「トムキャット」がありますが、イスラエルのF-35Iと比べると、第二次世界大戦中の傑作機「零戦」と航空自衛隊現用のF-15「イーグル」を並べるのと同じだけの世代的な違いがあり、同じ戦闘機といっても全く太刀打ちできません。

自衛隊にとっても他人事じゃないワケ

 さらにイスラエルは、開戦直後から通信妨害とサイバー攻撃を並行して仕掛け、イラン空軍の指揮統制系統を分断したと推測されます。奇襲と妨害によって空軍は効果的な作戦自体が不可能であった可能性が高いでしょう。結果としてイランは、航空戦力を組織的に運用するどころか、戦闘空域に出る機会すら与えられなかったのが実情でした。

 こうして「12日間戦争」は戦術的にイスラエルの圧倒的な勝利で幕を閉じています。戦果の大きさに注目が集まりましたが、実はイスラエル空軍が「無傷で勝利した」という事実も特筆すべき事象なのです。

 過去の戦史を振り返れば、いかなる空軍であれ出撃すれば損耗を伴うのが当たり前でした。ところが、「12日間戦争」では前述したように、イスラエル空軍が1500ソーティを重ねながら、有人機に一切の損害を出さなかったのです。

 この結果は、2020年代の航空戦の歴史としてウクライナとは全く違った様相を見せた例であり、しっかり研究・検証したうえで我が国では同じ轍を踏まないよう対策を進める必要があると言えるでしょう。

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