プラント建設大手、日揮ホールディングス(HD)の株価が2022年5月13日の東京株式市場で、制限値幅の上限(ストップ高)となる前日終値比300円(20.5%)高の1765円まで急上昇し、終値も1765円をつけた。
前日12日に2022年3月期連結決算と併せて発表した2023年3月期の業績予想では営業利益を前期比25.7%増の260億円とし、その根拠となる前期比2.7倍の受注計画を公表したことが好感された。
ウクライナ情勢を受け、エネルギー安全保障の観点から、世界で液化天然ガス(LNG)プロジェクトなどへの投資が増えることが寄与する。週明け16日はさらに上値を追っており、投資家の反応が良い状況が続いている。
今期の売上高は前期比40.1%増、6000億円見込む
それでは、12日の発表内容を確認しておこう。まず2022年3月期連結決算は、売上高が前期比1.3%減の4284億円、営業利益は9.6%減の206億円、最終損益は355億円の赤字(前期は51億円の黒字)だった。
最終赤字は5年ぶりで、オーストラリアのイクシスLNGプラントの建設をめぐって、特別損失575億円を計上したことが影響した。営業減益にはコロナ禍で過去に受注が低迷したことや、足元の資材価格や輸送費の高騰が響いた。
2023年3月期の業績予想は売上高が前期比40.1%増の6000億円、営業利益は前述の通り25.7%増の260億円、最終利益は200億円を見込む。
予想の根拠となる受注計画は8400億円。計画の一部はスケジュールの遅れで前期からずれ込んで計上しているとはいえ、高水準の受注計画を株式市場は歓迎した。年間配当予想を前期比9円増の24円としたことも投資家が注目している。
高まる天然ガス、LNGの重要性...設備投資再開の兆し
野村証券は2022年5月13日配信のリポートで、受注計画が「野村予想の4500億円を大きく上回り、カナダのLNGプロジェクトを受注した2019年3月期(9354億円)に次ぐ高水準」であることから「ややポジティブな印象」と指摘した。「採算管理を重視し、契約条項の交渉が丹念に行われている点も好印象」という。
SMBC日興証券も「決算の印象は全体としてポジティブ」と評価。LNG案件に関して日揮が「顧客の引き合いは増加しており、米国で計画中のLNGプロジェクトが前倒しで着工される可能性があるほか、東南アジアでも期待案件がある」と説明していることなどから、「市場環境全体は回復している印象」と指摘した。
日揮は今後の見通しについて「世界的な脱ロシアの動きによるエネルギー不足や調達先の多様化などによって、低・脱炭素社会の実現に向けた移行期間における安定的なエネルギー源として天然ガスやLNGの重要性が高まっており、顧客の設備投資が再開していくことが期待される」と説明している。
ウクライナ情勢によって世界のエネルギー環境は激変しており、日揮のプラント建設受注が拡大し、株価がさらに上昇する可能性はありそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)