デジタル技術の発達やスマホの普及などにより、複数の工程を同時にこなす、いわゆる「マルチタスク」で作業を行う機会が非常に多くなっています。特に仕事の際は業務効率化のため、マルチタスクの能力が求められる傾向にあります。
一方、SNS上では「マルチタスクが苦手」「マルチタスクを行うとストレス」という内容の声が多く上がっており、苦手意識を感じている人は多いのではないでしょうか。マルチタスクを行うと、心理的にどのような影響があるのでしょうか。マルチタスクの注意点や負担を軽減する方法などについて、心理カウンセラーの平井綾乃さんに聞きました。
Q.マルチタスクを行うと、心理的にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。注意点も含めて、教えてください。
平井さん「一度に複数の作業を平行して行うことをマルチタスクといいます。自分が処理できるキャパシティー以上のことをしようとすると、ミスが起こりやすくなったり、集中力が散漫になったりといったデメリットが考えられます。特に仕事中などは、『~しなきゃ』といったプレッシャーに常にさらされることになるため、焦りや不安からストレスが増大する危険性もありますね。
この状態でミスをしてしまうと、『またやってしまった』『自分なんてダメだ』と、自己否定につながり、さらにストレスが生まれるという悪循環に陥るケースも考えられます」
Q.仕事でどうしてもマルチタスクが避けられない場面もあると思います。その場合、負担を軽減するコツはあるのでしょうか。
平井さん「脳がどの程度のマルチタスクの処理に耐え得るかどうかは、人それぞれです。誰もが同じ環境やプロセスで作業ができるわけではないということは、頭に入れておいた方が良いと思います。
マルチタスクによる作業で負担を感じるようであれば、『情報を処理する量がそもそも多いのか』もしくは『平行作業が苦手なのか』ということが原因であることが多いです。作業のプロセスや量を調整できるのであれば周囲に相談してみましょう」
Q.マルチタスクが得意な人と苦手な人がいると思いますが、どのような違いがあるのでしょうか。
平井さん「脳がどのように働き、情報を処理するのかは生まれつきの脳の働きによって異なっていて、それぞれに得意分野、苦手分野があるんです。マルチタスクが得意な人は、短期記憶や同時処理の能力がもともと優れている人といわれていますね。
あとは、能力というよりも個人の考え方や特性の問題もあります。1つの物事を最後までしっかりこなしたいと考える人よりも、一つのことだけだと飽きてしまうからあれこれと手を出しながら作業するのが好きな人の方が、マルチタスクとの相性が良いのかなと思いますね」
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マルチタスクの際に自分のキャパシティーを超えて作業をすると、ミスが起こりやすくなったり、集中力が散漫になったりすることがあるということです。マルチタスクの働き方に依存するのではなく、自分が働きやすいプロセスや環境に合わせて調整できると良いですね。
オトナンサー編集部