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1日10万人の大盛況→赤字の苦境へ 熊本市電を襲う“信頼の危機” 脱線・追突の連鎖は断ち切れるか「再生プロジェクト」の全貌

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大盛況から「マイカー」による大苦境へ 100年の栄枯盛衰

 熊本県には日本でも少なくなった路面電車があります。熊本市交通局が運行している熊本市電です。開業から1世紀以上が経過している歴史ある交通機関で、市民や観光客の足として活用されています。

Large figure1 gallery8熊本市電のイメージ。手前の1063号車は熊本市電で最古の車両で、1951年製(画像:写真AC)。

 しかし、近年では脱線事故などの重大な問題も引き起こし、信頼性が揺らいでいます。熊本市電の歴史と今後について見てみましょう。

 熊本市電が開業したのは100年ほど前の1924年(大正13)8月です。開業時の路線は熊本駅前~花畑町~水道町~浄行寺町と水道町~水前寺間。初日は3万人以上が乗車し、窓に腰掛けたりバンパーの上に立ったりした人まで出たそうです。

 その後も熊本市電は発展を続けます。開業して数年後には路線を延伸。1957(昭和32)年には一日平均乗客数が10万人の大台を突破しました。1959(昭和34)年には田崎線も開通し、営業路線は25kmにまで及んでいます。

 しかしこの頃から熊本市電の苦境が始まります。当時の日本は高度経済成長の真っただ中。人件費の高騰や諸物価の急上昇、さらに自動車の増加によって1958(昭和33)年には赤字を記録するなど、経営状態が悪化していきます。

 特にマイカーの普及は乗客の減少だけでなく、市電の速度低下も招き、その赤字を拡大させました。そのため、1970年代には赤字路線の閉鎖や運転系統・運転間隔の見直し、運賃の値上げといった改革が行われています。

 近年はロシアのウクライナ侵攻によって電力費が上昇したり、IC部品が入手しにくくなったりといった問題が発生。その影響で、鉄道設備のメンテナンスや車両整備にも遅れなどが生じています。改善しようと運賃の値上げも複数回実施していますが、それでも収益状況は厳しいようです。

 さらに、ここ2年ほどは運行にも多くのトラブルが発生しています。熊本市交通局が発行した「令和6年度(2024年度)安全報告書」を見ると、インシデントを含めた全体事故が34件発生。例年は数名しかいなかった年間の死傷者が、2024年には15名を記録しています。

 特に波紋を呼んだのが、大晦日の2024年12月31日に発生した脱線事故です。乗客乗員から負傷者が出ることはありませんでしたが、事故の影響で1月3日まで運行を見合わせる事態になりました。

「負傷者15人」の衝撃 栃木県から「プロ」を登用し組織刷新へ

 事故は2025年になってからも止まらず、同年3月25日には停留場に停車していた電車に後続車が追突する事故が発生。乗客乗員15人が負傷しました。事故原因の調査などのため、当日は全線運休、翌日も区間運休になっています。九州運輸局もこれらインシデントを鑑み、2024年9月と2025年7月に相次いで改善指示を熊本市交通局に出しています。

Large figure2 gallery9観光名所の熊本城と熊本市電(画像:写真AC)

 続発するトラブルに対して、熊本市交通局も対策に動いています。まず2025年1月には交通局内に安全対策チームが発足。運行中の市電に対し、抜き打ち検査などを実施しています。さらに、2025年11月には栃木県の宇都宮ライトレール(芳賀・宇都宮LRT)などで線路や車両の安全管理を行っていた福島孝一郎氏を登用するなど、改善を試みています。

 加えて2025年10月には「熊本市電再生プロジェクトに関する専門家会議」が開かれました。このプロジェクトは交通事業の立て直しに関する課題や対応方針等について審議を行っています。会議では個々のケースに限らず、組織風土などの面についても言及されるなど、抜本的な解決を図ろうと動いている模様です。

 このように問題の続く熊本市電ですが、筆者(鈴木伊玖馬:乗りもの好きライター)が2025年11月に熊本を訪れた際には、大きな魅力を感じました。

 まず運行している場所がとても良いと感じます。JR熊本駅へのアクセスも便利なうえ、熊本城や水前寺公園といった観光スポットにも最寄り駅があり、市内の移動で大変便利でした。

 また、今の日本では珍しい市電というのも魅力的なポイントです。車内から外を眺めると、バスとも乗用車とも異なる目線で街の景色が楽しめます。他の交通機関ではなかなか体感できないアングルだったので、とても新鮮でした。

 そういった魅力があるだけに、2026年は事態が好転するよう、熊本市電の改革に期待したいです。

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