「TWの対抗馬」として登場するも敵はシレッと排気量アップ
1990年代に起きたネイキッドバイクブームを受けて、2002年に発売されたのがスズキの「バンバン200」です。1970年代の原付レジャーバイクの再解釈でしたが、当のネイキッドブームがやや落ち着いた頃の発売だったこともあり、登場のインパクトはやや低めでした。ですが、日本国内モデルは2017年まで15年のロングセラーとなりました。
さらに、世界各国に輸出されると、一転してコアな人気を博します。バンバンシリーズは世界中で愛されるモデルに発展を遂げ、特に“ビーチバイク”として親しまれた事実はあまり知られていません。
まず、そもそものバンバン200の登場の経緯から紹介します。
90年代のネイキッドバイクブームを牽引したヤマハ・TW200は、従来のバイクユーザーだけでなく、興味の薄いユーザーをも巻き込むほどの人気を博しました。特徴であるリアのバルーンタイヤは、もともと70年代に大ヒットしたスズキ・バンバンシリーズが履いていたものが先駆です。
おそらくはこのTW200の大ヒットを前にして、スズキが“かつてのバンバンの名を冠させたTW200に対抗するバイクを作るべし!”と、意欲を持って開発に取り組んだのがバンバン200でしょう。
実際のところ、バンバン200の特徴であるタイヤサイズはフロント・リアともにTW200とまったく同じもので、対抗意識がバリバリに見えました。ですが冒頭の通り、2002年の発売時はネイキッドブーム、TWブームが落ち着いた頃です。さらに同年には、ライバルであるTW200が225ccモデルへとフルモデルチェンジしたこともあり、対抗モデルとして登場したバンバン200のインパクトはやや弱めでした。
しかし、日本でのブームが下火になっても、海外輸出がスタートすると各国でコアな人気を誇りました。ライバルTW200もそうでしたが、バンバン200の“独特の足回り”が特に重宝されたのです。
【ヨーロッパ】スケールダウンモデル、バンバン125が大ヒットに
2003年、バンバン200をベースにしたスケールダウンモデル、バンバン125がヨーロッパに輸出されました。特にフランスでは一定条件付きながらも“普通自動車免許”で125ccクラスのバイクに乗ることができ、この制度のおかげかバンバン125は街乗りやビーチバイクとして大ヒットしました。
さらに、2010年代にはネオクラシックブームが巻き起こり、2016年より長兄モデル・バンバン200が輸出されました。
しかし、フランスでの200ccクラスのバイク搭乗には二輪免許を新たに取得する必要があり、バンバン125ほどのヒットには至りませんでした。また、図らずも輸出翌年の2017年に、ヨーロッパ全域で厳しい排気ガス規制とABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の義務化が本格化しました。バンバン200はこの規制に適合できず、わずか2年足らずで、各国のカタログから外れることとなったのです。
【アメリカ】ライバルTW200のシェアに戦いながらも、コアな支持を獲得
バンバン200の日本国内モデルが生産終了となった2017年、スズキはアメリカ向けモデルを発売します。アメリカの保安基準に適合させるため、ウインカー形状、メーター表記などの細部を変更したモデルでしたが、足つきの良さと独特の足回りはそのままに輸出された同車は、ビーチバイク、トレイルバイクとしてコアな支持を得ました。
しかし折悪く、すでにライバルであるTW200のアメリカ仕様車が市場を席巻していました。また高速ライドでのパワー不足も見られ、著しい販売成績を収められず、2019年ごろにアメリカ市場から姿を消すことになりました。
【タイ】バンバン200は雨季の冠水が残る道路に最適だった!
海外のバンバン200市場の中で“最もバンバン200が受けた国”として知られているのがタイです。
日本国内での評価よりもタイ、フランス、イギリス、アメリカなどの諸外国で高評価を得たスズキ・バンバン200(画像:SUZUKI MOTORSALES CORPORATION)
2013年、スズキはヨーロッパ同様のスケールダウンモデル、バンバン125のタイ輸出を発表。2014年にタイに正式に輸出されると、「南国リゾートの雰囲気にあう」「雨季の冠水が残る道路を走るのにバンバン125のバルーンタイヤは最適」という評判が立ち、瞬く間に大ヒットを記録。バックオーダーを抱えるほどの高い人気を博しました。
この事態を受け、2010年代半ばより、バンバン200の正規輸出がスタートします。タイ国内のパタヤ、プーケット、サムイ島、パンガン島といったビーチリゾートの日常に溶け込むスタイルのバイクは、多くの若者の支持を集めました。
また、こういった“ビーチバイク”としての用途以外でもバンバン200の姿が見られました。バイクカスタム王国・タイの都市部では、ストリートカスタムされる例も多くあったのです。
強い日差しにマッチするタイ仕様車のカラーリング
タイにおけるバンバン200は、現在も現地販売元・SUZUKI MOTORSALES CORPORATIONの公式サイトにラインナップされています。
「JAPAN MOBILITY SHOW 2025」に参考出品された電動モデルのe-VanVan。70年代のバンバンをモチーフにしたモデルだが、バンバン200もなんとか復活してほしいものだ(画像:スズキ)
そのカラーリングはメタリックフォックスオレンジ、メタリックトリトンブルー、ソリッドブラックの3種。いずれも日本仕様車にはなかった太いストライプが入ったデザインが特徴です。強い日差しが射すビーチを悠々と駆け抜ける様子をイメージすると、なんともシビれる一台です。
これらタイ仕様のバンバン200は、現地価格で12万9000から13万9000バーツ。2026年8月のレートで換算すると、日本円で60万5000円から65万円程の価格帯です。日本国内仕様車の2017年の定価が43.7万円だったことや、200ccの排気量であることを鑑みればかなり高めに感じられます。
ですが、それでもタイで人気を得続けているということは、現地のバイクユーザーにとって“バンバン200にしかない魅力”が強くあるからだとも思います。
ここまでの通り、日本国内とはまた違うカタチでヨーロッパ諸国、アメリカ、タイで評価をされるに至ったバンバン200。この評価を受けて、日本国内仕様車も復活してほしいなぁと思うのは筆者だけではないと思います。
