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高速道路のガソリンなぜ高い? 統制廃止でさらに上昇も SAスタンド「負のスパイラル」

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一般道より、1リッターあたり全国平均で10円高い高速SAのガソリンスタンド(2016年7月、清水草一撮影)。
一般道より、1リッターあたり全国平均で10円高い高速SAのガソリンスタンド(2016年7月、清水草一撮影)。

高速道路のSAで給油するガソリンが、一般道平均よりリッター10円、場合によっては20円も高くなっています。かつての原油価格高騰による逆転現象から、上限制度がなくなった高速のガソリン価格。しかしそれにより、いま「負のスパイラル」に陥っています。

消えた上限制度 高速SAはリッター20円高いことも

 お盆の帰省・レジャードライブでは、高速道路のサービスエリア(SA)で給油する機会も多くなりますが、久しぶりにSAのガソリンスタンドに入った場合、あまりの燃料単価の高さに驚くかもしれません。

 SAスタンドにおける直近のレギュラーガソリン単価は、全国平均で128円/L。ガソリン価格比較サイト「gogo.gs」での全国平均は118円ですから、1リッターあたり10円高いことになります。

一般道より、1リッターあたり全国平均で10円高い高速SAのガソリンスタンド(2016年7月、清水草一撮影)。

 ただ、単価は地域によってばらつきがあり、NEXCO東日本および西日本管内ではともに126円/Lなのに対し、NEXCO中日本管内は133.3円/Lと、特に高くなっています。

 日本一高いのは北陸道・賤ヶ岳SA上下(滋賀県長浜市)の139円/Lです。全国平均より約20円、率にしておよそ18%も高いのですから、驚くしかありません。いったいなぜなのでしょうか。

 2008(平成20)年まで、SAの燃料価格には上限制度があり、前月の全国平均価格(財団法人日本エネルギー経済研究所石油情報センター調査)を翌月に適用していました。

 2006(平成18)年からの原油価格暴騰にともなうガソリン大幅値上げの際、SAのスタンドが一般店より断然安い状況が生まれ、SAが給油客で渋滞。その後、先述のように上限価格が廃止され、現在へいたります。つまり、すでに高速道路会社による価格統制はなく、SAのスタンドが自主的に価格を決めていることになります。

 中央道・談合坂SA下り(山梨県上野原市)のスタンド(レギュラーガソリン133円/L、2016年7月19日)で、店員に高値の理由を聞いたところ、このような回答が返ってきました。

「SAのスタンドは土地をNEXCOさんに借りて営業していますし、高速道路に燃料を運ぶのに高速料金がかかりますから」

 恐らく、多くの客に同じ質問をされるのでしょう。回答マニュアルができているようでした。

 確かに、SAのスタンドはNEXCOにテナント料(非公開)を払って営業していますが、一般道のスタンドも、自社の土地で営業しているスタンドばかりではなく、これが特段の理由にはならないでしょう。よほどNEXCOのテナント料が高いなら別ですが……。

 また、燃料の輸送に高速料金がかかるのは事実です。しかし、大きなタンクローリーで燃料を運び入れるわけですから、そう頻繁に高速料金がかかるわけでもなく、これもこじつけに近いと思われます。

 念のためNEXCO中日本に聞いてみたところ、「高速道路のガソリンの価格につきましては、テナントである各ガソリンスタンドで設定されており、当社では関与しておりません。従いまして、テナント料や輸送費がかかっているから高いのかどうかは、当方ではわかりかねます」という回答でした。

 それでは、一般のガソリン安売りスタンドはどうしているのでしょうか。レギュラーガソリン107円/Lの「セルフ調布インターSS」(東京都調布市)を経営する関東礦油に聞きました。

「特別、何かをしているわけではありません。販売競争ですので、他店と合わせてやっているだけです。利益的には正直、しんどいです」

 この価格では経営がしんどいのは想像に難くありませんが、しかしそれでもこの価格でやっている店もあることを考えると、SAスタンドの価格には競争原理が働いていないのは明白です。

 実際のところ、2008年まで設けられていた上限価格は、「閉鎖的な空間によりお客さまに不利益が生じないよう」設けられていると、NEXCO側は説明していました。高速道路はまさに閉鎖的な空間。現在のSAスタンドにおける状況は、そこで価格を野放しにするとこんなことになる、という見本なわけです。

 世界一高い高速料金を払ったうえに、燃料も高いなど、ドライバーとしては許せません。なんとかならないのでしょうか。

「おいしいビジネス」をほとんどしていない高速のスタンド、ならば

 高速道路会社の株主は100%、国です。そこで株主である日本国を代表して、国土交通省道路局に聞いてみました。

「基本的には燃料単価はテナントの判断となります」

 そして「我々としては、スタンドの空白地帯はなくしたいと思っています」と、こちらを優先したい様子でした。

 現在、ガソリン消費の減少にともなう競争の激化で、全国のスタンドは経営が苦しくなっています。特に地方ではスタンドの廃業が相次いでおり、高速道路のSAも例外ではありません。

 よって、価格高騰を抑えようとSAのスタンドに上限価格を復活させたら、ますますSAスタンドの撤退が相次いで、ドライバーにとって逆に不利益になる。それはそれで一理あります。

 また出光興産の広報は、「高速道路のスタンドは一般道路の店舗と違い、カーケアの商材が少ないというのが、価格が高くなる理由かと考えられます」と答えてくれました。

 確かにSAのスタンドは給油をするだけで、洗車やオイル交換といった「おいしい」ビジネスをほとんどしていません。これが燃料価格を押し上げている面はあるでしょう。ならば、それを始めてはどうでしょうか。

カーケア商材の販売が少ない高速道路のスタンド(2016年7月、下山光晴撮影)。

 思えば、2005(平成17)年に行われた道路公団の民営化によってSAやPAのサービスは飛躍的に向上しましたが、スタンドだけが旧態依然で何の変化もないばかりか、一般店との価格差が広がる一方。つまり、サービスが悪化しています。

 SAでは小一時間休憩をとる客も多いのですから、洗車や整備点検サービスを行うにはうってつけです。現状、SAのスタンドは「給油したらすぐ出る」という態勢ですが、それを変えて、一般のスタンドのように、預かりサービスが可能なよう変革すればいいのです。

 あるいは、NEXCOがスタンドを直営化し、損益度外視で価格の適正化を図り、SAトータルでの利益拡大を目指すという手もあるでしょう。ショッピングモールでは、ガソリンの安売りで集客しているところもあります。

 こういった案をNEXCO中日本にぶつけてみましたが、「当社が価格に対して関与することはございませんので、ご理解いただければと思います」とのことでした。

ドライバーが工夫するほど苦しくなる高速スタンド「負のスパイラル」

 こうなったら、ドライバーが自衛するしかないようです。

 まず、高速へ乗る前に満タンにする。これが基本ですが、うっかり忘れた場合、目的地までの距離が100キロ前後以内なら、いったんインターで降りて満タンにしたほうが、高速道路へ乗るたびにかかる150円+税のターミナルチャージを払っても安上がりになります(給油量にもよりますが)。それが面倒なら、SAのスタンドで10リットルだけ給油するのがよいでしょう。

 ロングドライブの場合、高速道路の料金には走行100キロ以上で25%、200キロ以上で30%割引の長距離逓減料金が適用されるため、途中のインターでいったん降りると料金が割高になり、ターミナルチャージもさらにかかります。よってこの点を考えて、SAのスタンドで目的地まで持つ程度の給油をするのが最大限の自衛策ということになります。

中国道の吉和SA(広島県廿日市市)ではガソリンスタンドが撤退した(2016年7月、清水草一撮影)。

 ただ、ドライバーがこうした自衛策をとればとるほど、SAのスタンドはさらに経営が苦しくなって、さらに単価を上げることになり、さらに客が減って最後には撤退……という負のスパイラルに陥ります。

 そうならない前に、NEXCO各社はなんらかの手を打つべきではないでしょうか。

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