漫画「バウンダリーを引く話」のカット(中村あいさつさん提供)
漫画家で、コミュニティースペースを運営している中村あいさつさんの漫画「バウンダリーを引く話」が、Xで合計1万1000以上の「いいね」を集めて話題となっています。
主人公は、人からの誘いや頼まれごとを断れずに悩んでいました。ある日、そのことをバーで相談すると「バウンダリーがもろいのかな?」と言われ…という内容で、読者からは「めっちゃ刺さる…」「共感しかない」「『分かる』と『できる』は違う、という言葉に救われました」などの声が上がっています。
中村あいさつさんは、Xで漫画などを発表しています。2023年に「ソリチュード ひとりを愛する人が集まるバー」(KADOKAWA)、2021年に「死逢わせサポートセンター」(GANMA!)を出版しました。中村あいさつさんに作品について話を聞きました。
Q.漫画を描き始めたのは、いつごろからでしょうか。
中村あいさつさん「小学3年の頃、4コマ漫画を描いていました。初めて雑誌に投稿したのは中学1年のときで、大学3年から本格的にデビューを目指し始めました。初連載が決まったのは26歳のときです」
Q.今回の漫画を描いたきっかけを教えてください。
中村あいさつさん「このお話は、『ソリチュード ひとりを愛する人が集まるバー』という、『1人時間』をテーマにした連載漫画の一編です。1人の時間を大切にするためには、他者に必要以上に振り回されないことも重要だと考え、バウンダリー(心の境界線)をテーマに描きました」
Q.主人公の心情がとても具体的でした。こうした感覚は中村あいさつさんご自身の体験や、実感から来ている部分もあるのでしょうか。
中村あいさつさん「そうですね、かなり自分の体験に近い部分があります。今でこそだいぶ改善しましたが、以前は人の頼みをなかなか断れませんでした…! また、発言するたびに『相手を傷つけないだろうか』『もっと場を盛り上げなければ』と考えてしまう時期もあり、振り返ると当時はかなり負担に感じていました」
Q.主人公に一番共感する部分はどこでしょうか。
中村あいさつさん「全編にかなり共感するのですが…(笑)。終盤の、『できているのに“できた”とカウントできない』という点は、今の自分にも当てはまると感じます。バーのマスターが言っていたように、『それはできているのでは』と他者に言ってもらえることで、気付けることがあり、ありがたく思っています」
Q.中村あいさつさんご自身は、普段悩みやモヤモヤを感じたとき、どのように気持ちを整理したり、解消したりしていますか。
中村あいさつさん「仲のいい人に話を聞いてもらったり、AIと対話したりして、考えを整理することが多いです。1人で考え続けると行き詰まってしまうため、抱え込みすぎないよう意識していますが…。なかなか難しい…。最近は無理に結論を求めず、ある程度手放すことにもチャレンジしています」
Q.この作品を描く中で、ご自身が改めて気付いたことや、考え方の変化はありましたか。
中村あいさつさん「バウンダリーという考え方自体は、この作品を描くより前から知っていましたが、漫画としてまとめられていることや、マスターのような第三者の視点を描けていることから、『以前よりもバウンダリーを引けるようになっている』と感じました」
Q.今回の作品について、どのようなコメントが寄せられていますか。
中村あいさつさん「『同じく、人の頼みを断れない』『寝て回復するの、分かる』など、各シーンに共感していただけています。『自分を大切にできるように、少しずつ頑張っていきたい』といったコメントもあり、この漫画が生きやすさにつながる一助になっているのであればうれしいな、と思いました」
Q.創作活動で今後、取り組んでいきたいことを教えてください。
中村あいさつさん「私は、『他者に性的欲求が向かない』というセクシャルマイノリティである、『アセクシャル』を自認しています。まだ認知度が十分とは言えず、そのことによって感じる困難もあります。そうした背景もあり、アセクシャルについて伝える漫画を描けたらいいなと思っています」
オトナンサー編集部
