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“見た目ほぼ戦闘機”な旅客機つくります! ボーイングがブチ上げた“新型機構想”なぜ頓挫? てか作る気あったの…?

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アメリカの航空機メーカー、ボーイングではかつて、既存機とは大きく異なる設計の新型機の開発を計画したことがあります。なぜ開発され、なぜ実用化までに至らなかったのでしょうか。

コンセプトは「既存機よりちょっと速い」

 アメリカの航空機メーカー、ボーイングでは21世紀初頭、既存機とは大きく異なる設計の新型機の開発を計画したことがあります。これはどのようなものだったのでしょうか。

Large 01 ボーイングの「ソニック・クルーザー」(画像:ボーイング)。

 ボーイングは欧州のエアバスと共に世界で2社のみになった、大型機から小型機までつくる巨大旅客機メーカーゆえに、新型機は世界の注目を浴びるところです。

 21世紀以降の新型機としては「787」と「737MAX」が実現しています。その次の新型機として、業界関係者のなかでは「797」が取り沙汰されることもあります。

 797のコンセプトは、かつて発表された「NMA(New Midmarket Airplane)」とされています。これは、大型の単通路機と、いちばん小さい複通路機の中間にあたるものとされ、220席から270席程度の座席数を持つモデルです。過去に公開された機体イメージは、ワイドボディ機の「787」にかなり近しいものでした。

 ただ、旅客機開発の歴史では、メーカーが発表し、斬新なコンセプトを持っていたものの、結果として実現せずに消えていった計画もあります。そのなかのひとつが、21世紀に入った直後、ボーイングが構想を発表した「ソニック・クルーザー」です。

 ソニック・クルーザーの発表は2001年3月。250席級の中型機ではあるものの、最大の特徴はその飛行速度でした。ソニック・クルーザーでは、既存の旅客機より12~15%速いマッハ0.95を目指すというコンセプトだったのです。

 それゆえ、外見もそれまでのジェット旅客機とまったく異なっていました。機首の後ろにカナード翼(先翼)を付け、主翼は折れ曲がった三角形をしたダブルデルタとなっており、そのルックスはまるで戦闘機。旅客機の未来を変えようとする同社のチャレンジング精神が垣間見える機体設計となっていました。

なぜ「ちょっと速いボーイングの異形機」は頓挫したのか

 しかし、ソニック・クルーザーは、航空会社の興味は引くことなく、2002年暮れには早々と棚上げされることになります。その背景には、2001年に発生した米国同時多発テロによる航空旅客需要の大幅な落ち込みもありましたが、速度を15%ほど向上しても近距離路線は時間短縮効果が見込めず、航空会社の興味をひかなかったためとされています。

Large 02ボーイング787。「ソニック・クルーザー」計画頓挫のあとに開発された旅客機(乗りものニュース編集部撮影)。

 ボーイングはなぜ、この時期にソニック・クルーザーを打ち出したのでしょうか。

 当時はエアバスが、総2階建ての超大型機「A380」の開発を進めていたのに対し、ボーイングは「ジャンボ機」こと747シリーズに次ぐような、まったく新しい超大型機の開発については消極的でした。

 このため、新型の超大型機を出すエアバスに向いた航空会社の目をそらそうと、あえて中型機クラスでソニック・クルーザーを発表したと見られています。また、技術的挑戦・開発費も「コンコルド」のような超音速旅客機より抑制できるとみたのかもしれません。

 棚上げされたとはいえ、航空機の開発はこのようなしたたかさも必要なうえ、リスクも伴います。のちの787でのバッテリー(リチウムイオン電池)のトラブルや、単通路機「737MAX」一連のトラブルなどで辛酸をなめた末、ボーイングは近年、技術主体からコストカットで利益を上げる企業に変化したとも言われています。

 ボーイングは2024年9月、労使交渉の場で「次の新型機はワシントン州(本社のあるシアトル近郊を意味する)で製造する」と表明しました。しかし、その直後、同社の労働組合はストライキを実行し、こちらの方が大きな社会的関心を寄せられることとなりました。

 しかし、いずれ同社は「しかるべき時期」に、新型機開発のゴーサインを出すでしょう。一瞬の言及でも注目が集まったのも、新型機への関心が高いゆえです。ソニック・クルーザーのような奇手は、リスクを最小限に抑えるため取ることはないと思われるものの、ボーイングがいつ新型機開発に踏み切るかも、経営安定化とともに注目されるポイントでしょう。

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