全車が引退した強大な出力を持つEF200形電気機関車と、「大物車」と呼ばれるシキ800形貨車の展示が、京都鉄道博物館で終了。「お別れセレモニー」が開催され、多くの人々がそのさよならの旅立ちを見送りました。
JR貨物社歌『春夏秋冬』と『いい日旅立ち』で
京都鉄道博物館(京都市下京区)で2019年11月24日(日)、EF200形電気機関車とシキ800形貨車の展示終了に合わせて「お別れセレモニー」が実施されました。
3月に引退したEF200形電気機関車と、なかなか見られない「大物車」と呼ばれる特殊な貨車「シキ800形」は、11月16日(土)から京都鉄道博物館で特別展示されていました。
大勢の来場者に見守られ、京都鉄道博物館から旅立っていくEF200形電気機関車(2019年11月24日、伊原 薫撮影)。
「お別れセレモニー」では、JR貨物吹田機関区の松田佳久区長が「EF200は、活躍した期間は30年弱と短かったのですが、これだけ多くの人に愛されていたことを実感しました。ここで培われた技術はほかの機関車に生かされており、とても大きな存在の車両でした」と挨拶したのに続き、日本通運株式会社関西重機建設支店の平松孝則支店長も、「大物貨車という、あまりなじみのない車両にもかかわらず、これだけ多くの人が集まってくださったことに驚きました。この貨車が、日本のインフラを支えていたということを知っていただければと思います」と話しました。
また京都鉄道博物館の三浦英之館長は「この2両は、それぞれ日本の経済に大きく寄与してきた車両です。『ありがとう、お疲れさまでした』という気持ちで見送りたいと思います」と、ねぎらいの言葉をかけています。
その後、JR貨物の社員が演奏するJR貨物社歌『春夏秋冬』に送られて、まずシキ800形貨車を移動し、EF200形電気機関車に連結。EF200形電気機関車の運転台から来館者に紙テープが渡され、『いい日旅立ち』のメロディが流れるなか、2両はその場を後にしました。
本来の実力を十分に出せなかった「最強電気機関車」EF200形
EF200形電気機関車は、1990(平成2)年から1993(平成5)年にかけて、JR貨物が製造しました。当時は鉄道貨物輸送が増加傾向だったことから、輸送力を増やすためにEF200形電気機関車は、従来車両より大幅なパワーアップが図られました。その定格出力は6000kWと、それまで「最強」だったEF66形電気機関車(定格出力3900kW)の約1.5倍。コンテナ貨車32両分に相当する1600トンを、最高速度120km/hでけん引できます。
左から松田佳久JR貨物吹田機関区長、平松孝則日本通運関西重機建設支店長、三浦英之京都鉄道博物館長(2019年11月24日、伊原 薫撮影)
一方で、出力が大きければ消費する電力量も多くなるため、変電所設備も増強する必要が生じます。また、編成両数が長くなれば、待避線なども伸ばさなければなりませんが、こうした設備増強が進まず、EF200形電気機関車は本来の実力を十分に生かすことができませんでした。
結局、EF200形電気機関車は試作車を含めて21両の製造にとどまりましたが、機関車としては初めて採用されたVVVFインバータ制御装置(架線から取り入れた直流の電気を交流の電気に変換し、モーターを効率よく制御する装置)が後継のEF210形電気機関車へ受け継がれるなど、電気機関車の歴史に大きな足跡を残しました。登場以来一貫して、物流の大動脈である東海道・山陽本線で活躍を続け、2019年3月に全車が引退。今回の展示が“最後の晴れ舞台”となりました。
日中はなかなか見られなかった「大物車」の巨体
一方、シキ800形貨車は1973(昭和48)年に製造されました。この車両は日本通運が所有する「私有貨車」で、おもに大型の変圧器を運ぶためのものです。
シキ800形貨車の特徴は、なんといってもその姿。重さ160トンの機器を運べるよう、前後にそれぞれ2軸台車4台がつなぎ合わされており、車輪の数は合計で16軸32輪もあって、まるでムカデのようなスタイルです。こうすることで、1軸当たりにかかる重量を軽くし、線路への負担を軽減しました。変圧器はこの中間部にボルトなどで接合され、車体の一部となって運ばれますが、「アタッチメント」と呼ばれる接合用部品を変えることで、どのメーカーの製品も運べます。
シキ800形貨車が走るのは変圧器の輸送時に限られ、また荷物を積んだ状態では45km/hまでしか出すことができません。そのため夜間に運行されることがほとんどであり、鉄道ファンのあいだではなかなか姿を見られないレアな車両として有名でした。製造から46年間、おもに変圧器をメーカーから全国の設置場所近くまで運んできましたが、2019年11月上旬に山陽本線で最後の仕事を完了。廃車されるのを前に、京都鉄道博物館で展示されていました。
登場以来、物流の最前線で活躍を続けたEF200形電気機関車と、産業界を支える裏方として貢献したシキ800形貨車。彼らの“人生”には幕が下ろされましたが、その姿は多くの鉄道ファンの心に刻み込まれたことでしょう。
京都鉄道博物館に展示されたシキ800形貨車。荷重を分散させるための「16軸32輪」という多数の車輪が特徴のひとつ(2019年11月24日、伊原 薫撮影)。
