「この空域を警戒せよ」あとはお任せ!
戦闘機と一緒に飛ぶ無人機と聞くと、地上や別の航空機から誰かが遠隔操縦する姿を想像するかもしれません。しかし、オーストラリアとボーイングが開発するMQ-28「ゴーストバット」は違います。人間が直接操縦するのではなく、自律的に飛行します。なぜそんなことが可能なのでしょうか。
ファーンボローに展示されたMQ-28「ゴーストバット」の2号機(布留川 司撮影)。
世界では現在、有人戦闘機と協働する無人機「CCA(協働戦闘航空機)」の開発が活発になっています。そのなかでも実用化に向けて先行している機体のひとつが、オーストラリアとボーイングが開発するMQ-28「ゴーストバット」です。
2026年7月のファーンボロー国際航空ショーで、ボーイングはMQ-28についてメディア向け説明会を開催。同機がすでに200回以上の飛行を実施し、飛行時間は約240時間に達していることを明かしました。
MQ-28の開発が進んでいることを示す事例は、これだけではありません。2025年12月には、AIM-120 AMRAAM空対空ミサイルの実射と標的機の撃墜にも成功しています。さらに2026年にはアメリカへ展開して初の国外飛行を行い、多国間演習「Valiant Shield」ではグアム北方のロタ島へ展開。F-35やF-15EXとともに飛行しました。
ロタ島では5~7日程度で約9ソーティを実施し、1日に3回飛行した日もあったといいます。着陸から再び出撃可能になるまでの時間はわずか19分だったといい、前線で有人機と繰り返し運用できる能力を実証しています。
もはや“操縦”しない! 新しい無人機との付き合い方
これほどの実績を持つMQ-28ですが、最も興味深いのはその「操縦」方法です。これは、遠隔地にいる人間が操縦桿などを使って逐一飛ばす、という従来の無人機とは考え方が根本から異なります。
ボーイングでMQ-28グローバル・プログラム・ディレクターを務めるグレン・ファーガソン氏は、その特徴を「飛行を指示するのではなく、行動を指示する」と説明します。
実際、2025年に行われた空対空任務の試験では、MQ-28に与えられたのは「この空域を警戒せよ」という趣旨の指示だけでした。すると機体は自律的にCAP(戦闘空中哨戒)を行い、目標となる航空機を発見すると識別や追跡、センサー情報の統合まで実施。その情報をE-7早期警戒管制機へ送信したのです。
つまり人間は「何をさせるか」を決めるだけで、そのために必要な飛行やセンサー操作は機体側に任せる。これがMQ-28が目指す、新しい有人機と無人機の協働の形なのです。
空自も試験に参加へ! 日本への影響は?
MQ-28の進化は、日本にとっても無関係ではありません。日本とオーストラリアはMQ-28を使ったCCA分野での協力を進めており、2026年4月には両国間で正式な活動を行うための実施取決めがまとまりました。航空自衛隊も2026年度にオーストラリアで実施されるMQ-28の飛行試験に研修として参加する方針です。
ファーンボローに展示されたMQ-28の脇には、MBDAの空対空ミサイルミーティアのモックアップが置かれていた。現在、MQ-28への適応が進められており、欧州地域への輸出を意識しているようだ(布留川 司撮影)。
開発はさらに先の段階へ進んでいます。オーストラリアでは試験成果を取り入れたBlock 2の生産が進められ、その先には能力を向上させたBlock 3も計画されています。Block 3では翼の大型化や燃料の増加に加え、機内にミサイルや爆弾を搭載できるウェポンベイを設置。欧州製の長射程空対空ミサイル「ミーティア」の搭載検討も進められています。
また、衛星通信にも対応予定で、これにより近くを飛ぶ戦闘機だけでなく、遠隔地の地上施設や艦艇などからMQ-28へ任務を与えることも可能になります。
日本は現在、イギリス、イタリアと次期戦闘機を開発するGCAP(グローバル戦闘航空プログラム)を進めており、将来の航空戦では有人戦闘機と無人機の連携が重要な要素になります。世界に先駆けて実績を積むMQ-28から得られる経験は、将来の航空自衛隊にとっても重要な意味を持つことになりそうです。
