愛知県の豊橋と名古屋近辺を結ぶ国道23号「名豊道路」最後の未開通区間がまもなく開通。半世紀にわたる計画のなかで最後になった「蒲郡バイパス」には、難工事の痕跡と“絶景”が待っていました。
愛知県内72.7kmの無料バイパス「最後の区間」
愛知県の三河地域を貫く72.7kmのバイパス、国道23号「名豊道路」がまもなく全線開通を迎えます。その最後の建設区間である「蒲郡バイパス」II期9.1kmが、2024年11月7日に報道陣へ公開されました。
蒲郡ICから未開通の豊橋方面を望む。仕上げの工事中(乗りものニュース編集部撮影)。
「名豊道路」は豊橋市から名古屋市近傍の豊明市に至る、豊橋東、豊橋、蒲郡、岡崎、知立5つのバイパスの総称です。なかでも最後の区間となったのが蒲郡バイパスで、I期5.9kmは2014年に開通しています。
それから10年を経て、2024年度、いよいよII期区間(豊川為当IC-蒲郡IC)が開通する予定です。
名豊道路の最初の区間が事業化したのは1972年のこと。事業主体である国土交通省 名四国道事務所は今回の全線開通を「半世紀の夢、つながる」と大々的にアピールしています。静岡県から続く国道1号バイパス群とつながることで、浜松市から名古屋市まで、約100kmにわたって信号のない無料のバイパス道路が形成されます。
名豊道路の他の区間はおおむね平野部ですが、豊川市から蒲郡市、幸田町にかけては山が立ちはだかります。そこを貫くのが蒲郡バイパスで、なかでも“ほぼ全区間が山間部”なのが、この最後に残ったII期区間です。
集合場所となった蒲郡ICは高台に位置し、三河湾に浮かぶ竹島、三河大島、その背後に渥美半島を望みます。どことなく“小さな瀬戸内海”をイメージさせる絶景でした。
現在、西の終点となっている蒲郡ICは、本来の上り線出口ランプを上下線で共用して地上道路と接続していますが、ほか3つのランプもほぼ完成。下り線の入口ランプは11月13日(水)に先行して開通し、1ランプを狭苦しく使っている上下共用の状態を解消させます。
ここからバスに乗り込み、仕上げの工事を行っている豊橋方面の本線を視察しました。
ここが「半世紀の夢」の“ラスボス”だ!
蒲郡ICから2つのトンネルを抜けて、今回の区間で唯一の途中ICである「御津金野(みとかねの)IC」へ向かいます。周辺は御津川に沿う谷間の静かな集落です。
御津金野ICの前後は、ゴルフ場の敷地を一部譲ってもらい、建設されているといいます。そのため、本線上には網でできたトンネルのような「飛球防護柵」と呼ばれるゴルフボールの飛来に備えた構造物が2か所設置されています。
それらの位置は離れていて、連続的に柵を設けなかったのは「何番ホールからボールがどう飛んでくる可能性があるか、実際に転がっているボールも拾いながら位置を検証した」結果なのだとか。
この区間は山の斜面の高いところを通っています。実は蒲郡バイパスII期区間の2024年度の開通見込みには「大規模切土工事が順調に進んだ場合」との条件がついていますが、その工事区間が御津金野ICの前後です。
山を削り取る量が多いうえ、「流れ盤」と呼ばれる崩れやすい地盤であることも、工事に時間がかかった要因だといいます。
豊橋が見えた! その先は「高校の下のトンネル」へ
本線は御津金野IC付近から一気に下り坂となり、遠くに豊橋市街と三河港を望みながら、豊川市の平野部へと下りていきます。その途中にもトンネルがあり、「県立御津あおば高校」のグラウンドの下をくぐります。
正確には、グラウンドの下はカルバート(函渠)で、隣の山を貫く豊沢トンネルと連結しています。内部では、丸い断面のトンネルから、四角い断面のカルバートへと移る際に、天井の高さや形状が変わるのがハッキリわかるとのこと。開通後、四角い断面のトンネルの上では、高校生たちが運動をしているかもしれません。
豊川為当ICから豊橋市街を望む(乗りものニュース編集部撮影)。
そして、東の終点となっている豊橋バイパスの豊川為当ICには、蒲郡バイパス本線の橋桁がつながり、すでに一部の遮音壁や標識なども設置されています。豊橋方面から来た全てのクルマが地上道路に下ろされるランプへ、未開通の本線から報道陣を乗せたバスが入っていくという、今だけの体験をしました。
名四国道事務所の山岡正和工務課長は、「残りの工事も安全第一に、末永く親しまれる道路を仕上げていく」と話します。
ちなみに、今回は暫定2車線での開通ですが、トンネル以外は全て4車線分の用地が確保されており、橋脚やカルバートも4車線化を見越した仕様になっています。