炭酸水を飲むときの注意点とは?(画像はイメージ)
健康志向の高まりで無糖の炭酸水を飲む人が増えています。砂糖が入っていないため、積極的に飲む人も多いと思います。ところで、水分補給の目的で炭酸水を飲んでも問題はないのでしょうか。炭酸水を飲むときの注意点について、たいや内科クリニック(愛知県豊田市)院長で、総合内科専門医の加藤大也さんに聞きました。
無糖炭酸水は「普通の水」と同じように水分補給できる?
Q.夏場、熱中症対策や水分補給の目的で『無糖の炭酸水』をメインに飲む人が増えていますが、医学的に見て『普通の水』と同じように水分補給として機能していると言えますか。
加藤さん「無糖で、カフェインやアルコールを含まない炭酸水は、普通の水と同じように水分補給に利用できます。炭酸水は、水に二酸化炭素を溶かした飲み物です。飲んだ水分は消化管から体内へ吸収されるため、『炭酸が入っていると吸収されない』『飲んでも体を素通りする』ということはありません。健康な人を対象とした小規模な研究でも、炭酸水と普通の水との間で、胃からの排出速度に明らかな違いは認められませんでした。
ただし、炭酸による胃の張りやげっぷで、必要な量を飲めなくなる人はいます。また、長時間の運動や屋外作業で大量に汗をかいたときは、水分だけでなく塩分も失われます。このような場面では炭酸水だけにこだわらず、水や食事、必要に応じて電解質を含む飲料を組み合わせることが大切です」
Q.炭酸水を飲むとガスで胃が膨らみますが、これによって脳が「水分はもう足りている」と錯覚し、結果的にトータルの水分摂取量が減ってしまうというのは本当でしょうか。
加藤さん「炭酸水を飲むと、胃の中で二酸化炭素の一部が気体となり、胃の張り、げっぷ、満腹感が生じることがあります。炭酸水によって一時的に満腹感が強まる可能性を示した小規模な研究もあります。
しかし、胃が膨らんだことで脳が『体内の水分は十分だ』と錯覚し、それだけで脱水になると断定できる医学的根拠はありません。口渇は、血液の浸透圧や循環する血液量の変化に加え、口や喉、消化管から伝わる情報をもとに調節されています。胃の膨らみだけで、体内の水分量を判断しているわけではありません。
注意すべきなのは、炭酸による膨満感のために飲むのを早くやめ、結果として必要な水分量を確保できなくなることです。つまり盲点は、炭酸水の『吸収の悪さ』ではなく、飲んだつもりでも量が足りていないことです。暑い日は一度にガブ飲みするのではなく、少量ずつ定期的に補給しましょう」
Q.冷たい炭酸水を飲むとトイレが近くなるといわれます。炭酸成分が膀胱(ぼうこう)を刺激しているのでしょうか。また、摂った水分が吸収される前に尿として出てしまうことはありますか。
加藤さん「無糖・ノンカフェインの炭酸水に、普通の水よりも明らかに強い利尿作用があるとは考えられていません。飲んだ後に尿が増えることがあるのは、水分が吸収されていないからではなく、消化管から吸収された水分のうち、体内で余分になった分を腎臓が調節して排出するためです。『飲んだ水が吸収される前に、そのまま尿になる』という理解は正しくありません。
また、冷たい炭酸水を飲んだだけで、炭酸成分が直接膀胱を刺激し、頻尿を起こすと断定できる十分な根拠もありません。炭酸飲料と尿意との関連を示す報告はありますが、一般的な炭酸飲料にはカフェイン、糖分、人工甘味料、酸味料などが含まれることも多く、炭酸だけの影響を切り分けるのは困難です。
ただし、実際に炭酸水を飲むと尿意が強くなる人はいます。その場合は無理に続けず、普通の水へ替えて構いません。頻尿に加えて、排尿時痛、血尿、発熱、異常に強い口渇、体重減少などがある場合は、尿路感染症や糖尿病などが隠れている可能性もあるため、医療機関に相談してください」
Q.夏の水分補給として炭酸水を正しく楽しむための、1日の目安量や飲むタイミングを教えてください。
加藤さん「炭酸水だけを対象とした医学的な『1日上限量』は定められていません。必要な水分量は、年齢、体格、食事に含まれる水分、気温や湿度、活動量、発汗量、服用薬、心臓や腎臓の状態などによって異なります。そのため、すべての人に同じ量を当てはめることはできません。
基本は喉が渇いてから一気に飲むのではなく、起床時、外出前、活動中、帰宅後、入浴前後などに少量ずつ補給することです。運動前後に炭酸水を飲んではいけないわけではありません。胃の張りや不快感がなく、必要量を飲めるのであれば、水分補給の一部として利用できます。
ただし、運動直前や運動中におなかが張る人、激しい運動や長時間の屋外作業で大量に汗をかく人は、炭酸のない水や、適切な塩分を含む飲料の方が補給しやすいでしょう。一方、日常生活で汗をあまりかいていない人が、熱中症予防のために塩分を積極的に取り続ける必要はありません。高血圧、心不全、腎機能障害などがある人は、水分や塩分の過剰摂取が負担になることがあるため、主治医の指示を優先してください。
就寝前も少量であれば問題ありませんが、大量に飲むと夜間頻尿、胃の張り、げっぷ、逆流症状につながることがあります。炭酸水は『水分補給にならない飲み物』ではありません。大切なのは、炭酸水か普通の水かという二者択一ではなく、その日の暑さや発汗量、体調に合わせて、必要な水分を無理なく確保できているかという視点が大切です」
オトナンサー編集部
