安全な船舶航行にはさらに艦艇が必要?
欧州連合(EU)の外交・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長のカヤ・カラス氏は2026年9月28日、加盟国に対し、紅海での「アスピデス(ASPIDES)作戦」への海軍支援を強化するよう求めました。
紅海で商船を護衛するEUの派遣艦(画像:ユーナフアスピデス)
EUでは、イエメンの反政府組織・フーシ派による攻撃から商船を守るため、2024年2月19日からアスピデス作戦を開始し、紅海およびアデン湾に艦艇を派遣しています。
当初は、フーシ派がイスラエル軍と戦うイスラム組織「ハマス」との連帯を表明し、イスラエルに寄港するなど、イスラエルと直接的な関係を持つ商船を攻撃すると宣言したことを受け、艦艇が派遣されました。しかし、その後はイスラエルとの関係が希薄な商船も攻撃対象となっていました。
これまでEUが派遣してきた艦艇は3~6隻程度と小規模なものにとどまっていましたが、現在は10隻を超える規模への増強が検討されているようです。
フーシ派の勢力拡大が大きな原因
艦隊の増強を急ぐ背景には、フーシ派の攻勢によって、紅海とアデン湾を結ぶバブ・エル・マンデブ海峡周辺の地域を同勢力が掌握するに至ったことがあります。2026年7月20日には、フーシ派が対立するサウジアラビアに関連する船舶に対する海上封鎖を宣言しています。
フーシ派の攻撃を受け船体の一部が燃えている石油タンカー「スニオン」(画像:ユーナフアスピデス)
フーシ派は公式発表で「攻撃対象をサウジアラビアに限定する」としていますが、これまで同武装勢力が攻撃対象としてきたイスラエル、アメリカ、イギリス、サウジアラビアとの関係を持つ船舶や、サウジアラビアの港に寄港する企業グループの船舶などについても、高いリスクにさらされる可能性が懸念されています。
バブ・エル・マンデブ海峡は世界的にも重要な海上交通の要衝ですが、特に欧州にとっては、インド洋と地中海を結ぶ貿易ルートとして極めて重要な海域です。
フーシ派による海峡掌握の宣言が出された当時、アスピデス作戦に参加して任務に就いていた艦艇は2隻まで減少しており、イタリアのグイド・クロセット国防相が警鐘を鳴らしたことをきっかけに、艦艇増強の方針が検討されるようになったとされています。
カラス氏は「より適切な装備を備えた海軍・航空戦力が必要だ」と述べています。現状の最大規模である6隻程度であっても、多数の船舶が常時航行する非常に複雑な海域である紅海においては、小規模な戦力にとどまります。
なお、紅海やアデン湾ではアメリカ海軍やイギリス海軍の艦艇も活動していますが、フーシ派の拠点への攻撃も選択肢とする両国の部隊とは異なり、EUのアスピデス艦隊は、基本的に商船の護衛・防護と航行の自由の確保を主な任務としています。具体的には、商船を狙って飛来するドローンやミサイルの迎撃、攻撃を受けた船舶や乗組員の救援などを担っています。
