停めるのは「駐車場」?「駐輪場」?
街中でバイクを停める場所に困る「駐車難民」。四輪用は多いのに、なぜバイク用だけが極端に増えないのでしょうか。
バイクは駐車場・駐輪場どちらに?(画像:写真AC)
都市部でバイクの駐車場が不足している背景には、長年にわたる法律と行政の「ねじれ」が存在します。
まず、バイクはその排気量によって法律上の扱いが異なります。
50cc以下の原動機付自転車(原付1種)は「自転車法」の対象とされ、おもに駅前などに整備される「駐輪場」に停めることになります(2025年4月からは、最高出力を4.0kW以下に制御した125cc以下の二輪車も、法律上は原付1種として扱われることになります)。
いっぽうで、50cc(および125ccの原付1種)を超える自動二輪車は「駐車場法」の対象となり、法律上は「自動車」として扱われるため、「駐車場」に停めなければなりません。
しかし、この自動二輪車が駐車場法の対象として明確に位置づけられたのは、2006(平成18)年の法改正まで待たなければなりませんでした。
さらに問題だったのは、法改正後も自治体による対応に温度差があったことです。商業施設などを建てる際に駐車場の設置を義務づける「附置義務条例」にバイク駐車場を加える判断は、各自治体に委ねられました。
たとえば、新宿区では2008(平成20)年にワンルームマンションを対象に自動二輪車の附置義務を条例化しています。しかし、すべての建築物への適用には至らず、その一方で限定的な対応に留まる自治体も少なくありませんでした。
この行政の整備の遅れに拍車をかけたのが「縦割り」の問題です。国土交通省が駐車場の「整備」を推進する一方で、警察庁は駐車違反の「取り締まり」を強化します。
2006年以降、駐車監視員による取り締まりが強化されましたが、この状況はライダーにとって「停める場所(受け皿)がないのに、取り締まりだけが厳しくなった」というデメリットしか見いだせないものでした。
また、こうした法律や行政の整備の遅れに加え、民間事業者がバイク駐車場を増やしにくい、もうひとつの大きな理由があります。
都市部のバイク駐車場整備率はわずか2.5%!
民間事業者がバイク駐車場経営に積極的でない最大の理由は、その収益性の低さにあります。
駐輪場は経営難?(画像:写真AC)
駐車場経営はアパート経営など、ほかの土地活用と比べても収益性が低いとされますが、特にバイク駐車場は四輪車に比べて客単価が低いため、単体での収益化が困難です。
また、駐車場には固定資産税の軽減措置が適用されません。これは四輪用もバイク用も同じ条件なので、事業者が同じ面積の駐車場を運営するのなら、より収益性の高い四輪用駐車場を選ぶのは合理的な判断といえるでしょう。
この結果、需要と供給に圧倒的な格差が生まれています。東京オートバイ協同組合理事長の発言によると、都市部の時間貸し駐車場の整備率は、保有台数に対し、四輪車が約24.5%(4台に1台分)なのに対し、バイクはわずか約2.5%(40台に1台分)に過ぎません。
2023年にakippa株式会社が行った調査では、バイク利用者の78.5%が「目的地にバイク駐車場がない」ことを悩みとして挙げています。それにもかかわらず、2022年の自動二輪・原付の駐車違反取締り件数は、全国で約8万6000件に上りました。
この問題はライダーだけのものではありません。停める場所のないバイクが歩道に違法駐車することで、歩行者や車椅子、ベビーカーの通行を妨げる「都市インフラの問題」となっています。内閣府の世論調査でも、道路交通への不満として「違法駐車・放置自転車」が挙げられています。
解決に向け、最近では「タイムズ24」や「三井のリパーク」といった大手事業者が四輪駐車場の一部をバイク用に転換したり、個人宅の空きスペースを活用する「akippa」のような駐車場シェアリングサービスも登場しています。
行政も、国土交通省の指針に基づき、東京都や横浜市などが附置義務条例にバイクを追加したり、都立公園の駐車場にバイク用スペースを設置したりしています。
こうした動きを鑑みると、ようやく「受け皿」の整備が動き出した。まだそのような状況といえるのかもしれません。
