福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生し、東北新幹線が足掛け11日間にわたり不通に。この際、福島の交通アクセスに重要な役割を果たしたのが、高速バス「あぶくま号」です。この臨時便に実際に乗車しました。
郡山駅新幹線改札は「立ち入り禁止テープ」
2021年2月13日(土)夜、福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生。東北新幹線が設備の被災により一部区間で運転見合わせとなり、関東と東北を結ぶ大動脈が足掛け11日間にわたり断たれました。
その交通アクセスを守るべく、航空会社やバス会社が臨時便を設け、首都圏~東北の「足」確保に奔走します。とりわけ首都圏~仙台便は多数運行されましたが、福島県内と首都圏の足もしっかり確保されています。
平時は新幹線で2時間弱の福島県郡山市と東京の場合、航空会社のANA(全日空)が定期便路線にはない羽田〜福島線の臨時便を期間限定で開設しました。そして陸路では、ANA便にあわせて福島空港と郡山駅を結ぶバスも運行されたほか、15日(月)から、ジェイアールバス東北とジェイアールバス関東、福島交通が共同運行する高速バス「あぶくま号」で、大幅増便するなどの対応が見られました。
郡山駅前で客扱い中の「あぶくま22号」(2021年2月19日、乗りものニュース編集部撮影)。
今回、陸の“助け船”となったこの高速バスの臨時便へ、2月19日(金)に乗車しました。
この日乗車したのは、郡山17時30分発、バスタ新宿21時48分着予定のあぶくま22号です。予約は出発の約1時間前に、電話で行いました。臨時便の東京行き最終となるこの便ですが、予約時点で、空席は16席とのこと。乗車料金は4300円でした。ちなみに、郡山駅周辺の様子は大きく変わったところはないものの、新幹線改札口には立ち入り禁止テープが貼られており、電光掲示板の表示もありませんでした。
車内の様子は?
乗車15分前に「あぶくま22号」が出発する郡山駅4番乗り場に向かうと、乗車待ちの人が待機しています。私服を着た若い人もいましたが、スーツを着たビジネスパーソンらしき人が比較的多くみられました。こうしたビジネス客は普段、新幹線で移動するケースが多いと考えられますが、それが不通になったなか、首都圏までの直通アクセスを確保できるのは大きなメリットなのかもしれません。
臨時便は、各席にUSBポートが装備され4列シートで、トイレも備わります。車内では、睡眠を取る人やパソコンを開き仕事をする人、スマートフォンを操作する人などが見られました。感染拡大防止の観点から、バス事業者も車内での会話を控えるよう呼び掛けていますが、一人の利用者も多いこともあってか、誰も話している人がいない状況です。
バスタ新宿に到着した「あぶくま22号」(2021年2月19日、乗りものニュース編集部撮影)。
あぶくま22号は東北道を都心に向かいつつ、阿武隈PA(福島県白河市)と佐野SA(栃木県佐野市)で2度の休憩を取ります。ただ、この休憩の際にも「静けさ」は続きます。あぶくま22号はその後、王子駅、池袋駅を経て、ほぼ定刻の21時45分ごろバスタ新宿に到着。新型コロナ感染拡大に加え、今回の地震で「必要がある人が乗る」便であろうことから、新宿駅まで車内に会話はほぼ皆無でした。
なお、このあぶくま22号も2月23日(火)をもって運行を一旦終了。東北新幹線は、翌24日(水)から全線で運転を再開しています。
※誤字を修正しました(3月4日12時40分)。