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ひとりの経営者の思いつきが物流を変えた 貨物船に積まれる20世紀最大の発明とは?

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1956年4月26日、とある船がニューアーク港から、ヒューストンに向けて出港しました。その船は計58個のコンテナを載せており、それが後に、物流に革命を起こします。

箱を統一することで海陸関係なく輸送が効率化

 1956年4月26日とある船がニューアーク港から、ヒューストンに向けて出港しました。その船は「アイデアル・X」と呼ばれる、第2次世界大戦中に大量に作られたT2タンカーを転用した船でしたが、この船に積まれていた、計58個のコンテナが、それまでの物流の歴史を大きく変えるものでした。

Large 230420 co 01コンテナ船のイメージ(画像:GustavsMD)。

 同船が登場する以前、貨物船の貨物はバラ積みの状態が主流。クレーンを使って荷物の積み下ろしをするのは一部のもので、多くの作業は港湾労働者の人手によって行われていました。

 そのため、荷下ろしもかなり時間がかかり、大きな港となると、荷下ろし待ちに多数の船が数日順番待ちをするということも珍しくなかったそうです。

 1950年代に、アメリカで運送屋を経営していたマルコム・マクリーンは、陸運業界の競争が激しくなっていくうち、海運に目をつけ、「トラックの荷物をそのまま船に載せてしまえる方法はないか」と考えます。そこで、決まった大きさのアルミ製のコンテナをトラックで運び、船に搭載したクレーンでコンテナを積み、そのまま運ぶというアイデアを考えます。そして、海運会社を買収し、その発想を実行に移したのが1956年4月26日でした。

 この画期的な輸送方法のおかげで、物流に革命を起こしたマクリーンの会社は、低コスト、大量輸送で同業者を吸収するなどし、どんどん大型化していきました。後にこの会社はシーランドという世界最大のコンテナ船会社にまで成長していきます。

ベトナム戦争でも輸送を効率化し世界に波及

 マクリーンの考えたコンテナ船が大きく普及していくのは1960年代からでした。

Large 230420 co 02日本初のコンテナ船「箱根丸」(画像:日本郵船)。

 1961年、ニューヨークに国際標準化機構加盟11か国の代表とオブザーバー15か国の代表が集まり、コンテナの標準化会議が行われ、最終的に1964年ISO規格として、コンテナの大きさが世界的に統一されます。

 軍事面でもコンテナ船は重要な役割を果たします。1965年、アメリカはベトナム戦争に本格介入しますが、アメリカ軍は船からの軍事物資の積み下ろし作業の多さとコストの高さに難儀していました。そこで、より合理的な輸送方法があるからベトナムにコンテナ船を派遣させてくれとマクリーンが提案し、導入したところ、アメリカ軍の輸送は各段に効率化され、兵站は飛躍的に改善されます。
 
 その後、シーランドは1966年に北大西洋航路で世界初の国際海上コンテナ輸送を開始。規格化されたコンテナに貨物を積載することで、従来に比べ荷役効率を飛躍的に向上した貨物船を世界的にアピールすることになります。日本では、日本郵船と昭和海運が共有で1968年に「箱根丸」を就役させ、日本の貨物船もコンテナ船の時代が始まります。

 運送効率がコンテナのおかげで向上したことや、港湾にガントリークレーンが設置されたことで、1960年代以降、貨物船は大型化の道をたどっていきます。現在では、2万4000TEUの船が最大の船になっています。TEUとはコンテナ船の20フィートコンテナ1個分を指す単位ですので、2万4000個のコンテナが1隻に搭載可能ということです。

 なお、このコンテナに関しては20世紀最大の発明のひとつともいわれています。

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