「中学受験は親子の受験」ともいわれます。親の出番が多いため、親子げんかも自然と増えがち。そこでお話を伺うのは、受験生の親でもあり、塾講師としても活躍する天海ハルカさん!小5の娘さんと、勉強や生活について毎日のように怒鳴り合っているという天海さんに「親子げんかでの対応」について話してもらいました。
親子だからこそけんかをする
私は塾講師として多くの子どもたちと接してきましたが、自分の娘となると勝手がまったく違うということを実感しています。
塾講師として宿題の多さや成績を上げる難しさを知っているので、精神的には落ち着いて我が子とも話せると思っていたのですが、現実は厳しかった……。
スケジュール通り勉強をこなす、勉強中はテレビを消す……簡単なはずのことがおどろくほど難しいんですよね。
やはり子どもにとって家というくつろげる場所、遊べる場所で勉強をするのは腰が重いことようです。
勉強の時間になってもテレビを止めない様子を毎日見ていると親としては、「いつも言ってるけど」「毎日毎日」とイライラしながら話すようになってしまいます。
子どもの中学受験において、親に中学受験の知識や経験があっても関係ありません。
一緒に生活しお互いを知っている親子だからこそ、けんかは避けられないのだと思いました。
精神的な密室を避ける
我が家では母親である私がメインになって娘の勉強に向き合っています。
親子の性格や生活環境にもよりますが、家という密室の中で親子2人向き合っていると、冷静さを欠きがちなんですよね。
どうしても話が堂々巡りになり、ヒートアップしてしまいます。
夫(父親)という第3の人物がいる時間は、私自身が冷静になれたり、いったん距離を置いたりできます。
ヒートアップを避けるためには、他の人をどんどん巻き込めるといいのだと気づきました。
同居しているのであればおじいちゃんやおばあちゃんに勉強を見てもらうのも良いですね。
我が家は一人っ子ですが、兄弟がいたら手伝ってもらいたいとも思いました。
第三者を巻き込むといっても、勉強は教えられなくても大丈夫。答えを見て、丸つけを手伝うなどのサポートで十分なのです。
重要なのは、親と子が2人きりで閉鎖的になるのを避けることです。
精神的に追い詰められないよう、あまりにけんかが続くようなら塾の先生に現状を話してみるのも良いでしょう。
実際に塾でも親御さんから、「親の言うことを聞かないので先生から課題をやるよう言ってほしい」という話を受けることはありました。
親の言うことは聞かない子どもでも、「先生が言うことなら聞く」というのはめずらしくありません。
ぜひこういうときは塾も頼ってみてくださいね。
我が家の親子げんか解決策3つ
「これをやればけんかがなくなる」という完全な策は、残念ながらありません。
我が家の対策も「今日のけんかをいったん中断する」「次のけんかを穏便に早く終わらせる」といった対症療法的な効果があるだけです。
しかし、対症療法でも日が過ぎればお互いに気持ちを切り替えられます。
あの手この手でその日を乗り切っているうちに、状況も変わってくるかもしれませんよ。
ここでは、我が家で親子げんかをなるべく避けるために大事にしていることを紹介します。
スケジュールにこだわらない
私自身が苦手なことではあるのですが、「スケジュールは理想であってその通りに進まないことがある」と、親が自分に言い聞かせることが大切です。
スケジュールを作ると、どうしてもその通りに進む前提で頭が動いてしまうんですよね。
「今日はここまでやらないと」と親のほうが焦って、つい強い言葉が出てしまう……。
こういった状況を回避するために、スケジュールの中で優先順位をつけておきます。
たとえば、テスト前に3回書く予定だった漢字を2回に減らすのは問題ないですよね。
しかし小テスト前に一度も練習しないのでは困ってしまいます。
たくさん準備してほしい気持ちをぐっとこらえ、優先順位の高いものをこなせば及第点と納得しましょう。
会話を強制終了する
けんか中は売り言葉に買い言葉で、何も話が進みません。
かーっとなったときは余計なことを言って、誰も得しない宣言をしてしまうことも。
「じゃあもうお母さんはスケジュール作らなくていいよ!」「わかったよ!じゃあもう作らないからね!」というやりとりは、我が家でも何度あったかわかりません。どうせスケジュールは作ることになるのに……。
こんなことをしても疲れるだけなので、けんかになりそうだと気づいたときは「一旦会話やめるね!」と会話を切り上げるようにしています。
会話を切り上げるという発言が火に油となることもありますが、そのぶん収束も早いように思います。
会話を強制終了することで、冷静になれるのも利点です。
私は家に他に人がいれば、会話をしないために外に出ることもあります。
自動販売機でコーヒーを買って飲む10分間は、親子双方の心を落ち着かせてくれますよ。
平時にけんかを振り返る
けんか中はヒートアップして何も考えられないもの。
我が家ではけんかをしておらず冷静なときに、けんか中にされると嫌なことや落ち着ける方法を話します。
娘は「自分を見てほしい・励ましてほしい・認めてほしい」というタイプで、「じゃあやらなくていいよ」といった突き放しはもっとも腹が立つと教えてくれました。
もちろん子どもがほしがる言葉だけかけるわけにはいきませんが、子どもの心理を理解するためには役立ちます。
その場しのぎの連続で乗り切ろう
中学受験の時期は子どもの反抗期も重なるため、ささいなことですぐけんかに発展してしまいます。
学校から帰ってすぐ塾へ行ったり休みの日もたくさん勉強をしたり、子どもの毎日の大変さはよくわかっていますが、受験するなら満足のいく結果を得てほしいですよね。
そのためには親として、注意をしたり叱ったりは避けられません。
親と子だからこその距離の近さが、事態を悪化させることはあります。
だからこそ、第三者を巻き込んだり、物理的にいったん距離をとったりといった策が効いてきます。
せっかく塾に通っているのですから、塾という場や塾の講師もぜひうまく使ってほしいと、塾講師の立場では思います。
とはいっても、どうにもエスカレートしてしまったり親として自己嫌悪に陥ってしまったりすることはありますよね。
私が心の支えにしているのは、このけんかばかりの毎日も「今だけ」であるということです。
中学受験は良くも悪くも6年生の2月まで。終わりがあると考えれば、気分的にとても楽になる気がします。
この状態がずっと続くわけではありません。親子げんかも「今だけ」と唱えて、一緒に何とか乗り切りましょう!