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「退職マナー」は会社のためならず? 自分を一生守る“最強のよろい”になる理由【専門家が解説】

オトナンサー

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上司に退職を伝える際に必要なこととは?(画像はイメージ)
上司に退職を伝える際に必要なこととは?(画像はイメージ)

上司に退職を伝える際に必要なこととは?(画像はイメージ)上司に退職を伝える際に必要なこととは?(画像はイメージ)

 働き方が多様化し、転職が珍しいものではなくなりました。春以降に転職を予定している人も多いのではないでしょうか。

 一方、転職先が決まったときに避けて通れないのが上司への「退職」の報告です。上司から叱責を受けたり、退職を拒否されたりするのを恐れる人も多いのか、近年は退職代行サービスを使って急に退職してしまう人もいます。

 上司に退職を伝えるときのマナーや、できるだけ円満退職をするコツについて、ヒロコマナーグループ代表で、企業価値を高める人財育成コンサルティングをはじめ、皇室のマナー解説やNHKドラマ「岸辺露伴は動かない 富豪村」などのマナー指導などでも活躍するマナーコンサルタント・西出ひろ子さんに聞きました。

マナーは義務や規則ではない

Q.「退職は労働者の権利であり、マナーまで気にする必要はない」という考え方があります。この点について、どのように考えますか。

西出さん「確かに退職は正当な権利です。その上で、マナーはこうしなければならないという『規則』や『義務』ではありません。マナーは相手の立場に立って相手と自分のために、どのように振る舞えば良いかの『選択』だと考えます。

繰り返しますが、大前提として、退職は誰にでも認められた権利です。理由を詳しく説明する必要もありませんし、その会社で何かマイナスな理由があっての退職の場合は、我慢し続ける必要もないでしょう。

その上で、退職時のマナーという観点から、マナーは『守らなければならないルール』ではなく、『自分がどのような社会人でありたいか』を表現することだという観点で考えてみてはいかがでしょうか。

マナーは、本来それを守らなかったからといって罰せられるものでもありません。さらにマナーは守るものでもありません。

しかし、マナーを自身で意識することで『後味の良い別れ』になる可能性が高まります。これは、退職する側だけでなく、会社側にも言えることです」

Q.近年は会社側が強く言えない時代にもなっており、マナーを考えずに退職されて困るという声も聞きます。どのような配慮が必要でしょうか。

西出さん「新型コロナウイルスの流行以降、マナーの観点も多様性の時代になりました。確かに、特に近年は会社側が退職者に強く干渉しにくくなったのは事実です。

一方で、退職する側は『何も言われない』、会社側は『止められない』環境だからこそ、退職時の振る舞いがそのまま、一緒に仕事をした人への配慮となります。
退職時のマナーとして、可能であれば、最低でも退職の1カ月前に上長に相談や意向を伝え、後任の人が困らない範囲で引き継ぎを行うと現場は助かるでしょう」

Q.多様性の時代において、上長に早めに退職の旨を相談するほかに、退職時に最低限行った方が良いマナーがあれば教えてください。

西出さん「共通して言えるのは、『相手に向き合う姿勢・気持ち』を大切にすることです。状況や事情は人それぞれ違うため、全員に同じ退職の形を求めることはできません。その上で、次のような点は、多くの場面で無理なく意識できることだと思います」

(1)退職の意思は、できるだけ対面やオンラインで伝える
(2)引き継ぎは、次に担当する人が困らない範囲で整理する
(3)不満があっても、感情的な表現は避ける
(4)最終日まで、任されている役割を果たす

これらは「会社のため」ということもありますが、一緒に働いた人への配慮にもつながりますね。

Q.マナーは大切とのことですが、そこまで気を遣う余裕がない場合はどうすればいいのでしょうか。

西出さん「完璧を目指す必要はありません。できる範囲で十分です。心身の不調や、やむを得ない事情がある場合、無理に理想的な退職を目指す必要はありません。大切なのは、『できなかったこと』よりも、できる範囲で誠実に対応しようとしたかどうかだと考えます。

短い言葉でも、『お世話になりました』『引き継ぎ資料はこちらにまとめました』
という一言があるだけで、受け取る側の印象は大きく変わります」

Q.近年、退職代行サービスを利用する人も増えています。これについてはどう思いますか。

西出さん「退職代行サービスを利用する人は何らかの事情があり、自分を守るための手段としているケースが多いと思われます。『代行を使ったから失礼だ』と一概に言えるものではありませんし、それにより『ありがたい』と思う人もいらっしゃるでしょう。大切なのは、それを『使うかどうか』ではなく、『なぜ使うのか』『どう使うのか』だと考えます。

利用する場合はその代行会社が『法的に問題のない範囲で業務を行っているか』『説明が丁寧か』などを確認し、納得した上で利用することも自身を守ることにつながるのではないでしょうか。

私は30年間、『マナーは相手の立場に立つ思いやりの心』だと一貫して伝えていますが、その相手には『自分』も含まれます。私自身、20代で何度も転職をしました。退職する人の気持ちもよく分かります。そして現在は経営者として、退職をされる会社側の気持ちも分かります。私の経験からお伝えするならば、結局、退職時のマナーはお世話になった会社や同僚への配慮ですが、その後の自分のためでもあると感じています。

退職後に、元の会社と関わらない人もいれば、思わぬ形で再会する人もいるかもしれません。また、直接関わらなくても、評判や印象がどこかで共有されることもあるかもしれません。

だからこそ、退職時のマナーは、過去に勤めた会社のためでもありますが、これから先の自分の人生において、自分を守る行動とも言えます。

西郷隆盛の愛読書ともいわれている、幕末の儒学者の佐藤一斎が書いた『言志四録』には、『礼儀はよろいとして守ってくれるもの』という一節があります。礼儀、すなわちマナーを身に付けるということは、よろいとして自身を守ってくれるものなのです。マナーは守るものではなく、あなたを守ってくれるものです。

退職する側も、される側も、お互いの未来にとってプラスとなるよう願っております」

オトナンサー編集部

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