「自転車だと思っていました」――そんなユーザーの無理解から「ペダル付き原付」いわゆるモペットの違法走行が横行しているため、道交法が改正されます。ユーザーは無届、無保険、無免許まで、一気に問われる可能性があります。
もう「自転車だと思っていました」ではすまない
原付バイクと同等の性能を持ちながら、自転車のように歩道を走る“ペダル付き原付”(いわゆるモペット)の違法走行が目立つなか、その「原付」としての位置付けを明確化した道路交通法の改正が2024年11月1日から施行されます。動力を切ってペダルを漕いで乗ったとしても、自転車のように歩道を走ることはできません。
ペダル付き原付はアシスト自転車と見分けがつき辛いケースもある。写真はイメージ(中島みなみ撮影)。
松村祥史国家公安委員長は、ペダル付き原付の位置付けを明確化する目的について、国会でこう話していました。
「ペダル付き原動機付自転車の運転には運転免許が必要であり、さらに、今回の改正では、原動機を用いずにペダルのみで走行させる行為であっても原動機付自転車などの運転に当たることを明確化することとしてございます」(4月12日衆議院内閣委員会)
道路交通法では、ペダル付き原付の動力を切って運転したとしても、特別な装備を付けない限り、自転車と同じルールで運転することはできません。動力だけで走ることができる乗り物は、その性能に応じて「原付」または「自動二輪」と定めているからです。
ただ、2023年7月に無免許で運転できる「特定小型原付」の区分が創設されて以降とくに、ペダル付原付も自転車と同じ運転ができるという誤った認識での違法走行が増えてきたため、法律を改正することになりました。すでに改正案は成立し、今回、8月30日の閣議でこの施行日が決定しました。
今回の閣議決定は、この明文化を盛り込んだ改正の施行日を2024年11月1日に決めた、というものです。「(ペダル付き原付は)原動機付自転車等の運転に該当する」と明文化した後は、「自転車だと思った」という思い違いは摘発を免れる理由にならなくなります。
自転車と原付の違いは、ユーザーがナンバープレート(課税標識)を車両に取り付けるか否かに関わらず、“人力を使わずに走ることができるか”が分かれ目です。電動車いすなどを除き、速度に関係なく、動力だけで進む仕組みがあれば「原付」に分類され、市区町村への届出をして、ナンバープレートを取り付けることが義務です。
つかまるよ まずはナンバープレートの取得を
運転に免許が必要か否かは次の段階で、速度20km/h以下に抑制されている車両は免許不要の「特定小型原付」、それ以上は原付免許が必要な「一般原付」(原付一種)か、その上位の「自動二輪/小型限定」(原付二種)で、それぞれ必要な免許を取得していることが運転の条件です。
アシスト自転車との見分け方は、スロットルなどスピードを制御するパーツが取り付けられているかどうか。動力輪を空転させた場合にペダルを動かさずに動き続けるか否かで判断できます。
では、ペダル原付の違法走行で、どのような違反に問われる可能性があるのでしょうか。
まずは無免許運転の可能性です。運転に免許を必要としない場合でも、特定小型原付として正方形のナンバープレートを取り付ける必要があり、条例違反に問われます。ナンバーが確定しないと強制加入が義務付けられている自賠責保険に加入できないので、未加入によるペナルティもあります。
自賠責法によるペナルティは最も重い場合は1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。ユーザーからすると、ただアシスト自転車のように乗っているだけかもしれませんが、警察から「原付」として取締りを受けると、複数の法律や条例の違反を問われ、想像以上のペナルティが課される可能性があります。
無免許運転だった場合は、罰則とは別に免許の取得ができない欠格期間ができるため、将来的な支障にもなります。
警視庁によるペダル付き原付の取締りの様子(乗りものニュース編集部撮影)。
これまではユーザーが運転に必要な条件を知らなかったということが“考慮”されてきました。自転車には当てはまらないことを運転者に説明し、警告した上で、違反を繰り返した場合に取締りを受けるケースもありました。しかし、11月1日以降はその段階を踏まずにより厳しくなることが予想されます。
ナンバープレートの付いていないペダル付き自転車のユーザーは、事故の賠償にも備えることができません。今すぐ車両の性能を確かめて、市区町村に届出、自賠責に加入して、適法な運転に切り替えることが必要です。