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零戦のプロペラの裏からズドドドド と弾が! なぜ問題ない? プロペラが撃ち抜かれない装備とは?

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レシプロ機は、回転するプロペラの真後ろに機銃があるにもかかわらず、なぜプロペラを撃ち抜いてしまわないのでしょうか。

プロペラと同調する装置で発射タイミングを調整

 2025年8月15日には、終戦から80周年を迎えます。第二次世界大戦当時、戦闘機はまだプロペラ機が主流であり、日本の零式艦上戦闘機、いわゆる「零戦」のように、1基のレシプロ(ピストン)エンジンで飛行する機体がほとんどでした。多くの場合、プロペラは機体の前方、つまり機首部分に取り付けられていました。

Large figure1 gallery7零戦では、コックピットの正面のエンジンカウル部分にある溝から7.7mm機銃弾が発射される(画像:アメリカ空軍)

 空中戦も、現代のような対空ミサイルではなく、機体に搭載された機関銃や機関砲によって行われていました。特にプロペラ機では、エンジンの直後、胴体上部に機関銃を据え付ける構造が一般的でした。このスタイルは、飛行機が登場して間もない第一次世界大戦の時代から定番とされていました。機首に機銃を集中させることで、パイロットが照準を合わせやすくなり、命中精度が向上するためです。

 しかし、ここでひとつ大きな疑問が生じます。回転するプロペラの真後ろに機銃があるにもかかわらず、なぜプロペラを撃ち抜いてしまわないのでしょうか。

 その答えが、「プロペラ同調装置」です。この装置は、機銃の発射タイミングをプロペラの回転と同調させることで、弾丸がプロペラのブレードに当たらないよう制御しています。

 この同調装置は、1915年6月、ドイツのフォッカー単葉機に初めて搭載されたのが始まりです。原理としては、プロペラのブレードが機銃の前を通過していないときだけ、弾丸が発射される仕組みになっています。これにより、次のブレードが銃口の前に来るまでのごくわずかな時間を見計らって、弾丸がプロペラの隙間を通過するようになっています。

 この制御は、エンジンの回転数や機銃の発射速度との兼ね合いによって調整されるため、機種や兵装によって設定は異なりますが、基本的な原理は、後に登場した同調装置搭載機でも同様です。

第二次世界大戦末には時代遅れになりつつあった?

 この機体(フォッカー単葉機)が登場する以前は、各国の戦闘機はプロペラを撃ち抜かないよう工夫していました。たとえば、弾丸がプロペラに当たっても跳ね返るように防弾板を取り付けた機体や、プロペラ自体を後方に配置した機体も存在しました。ただし後者の場合、離陸時に機首を上げる際、プロペラが地面に接触するリスクがありました。

Large figure2 gallery6モーターカノン搭載のため、機関砲を通す穴の空いたDB605エンジン。Bf109の後期型などに搭載された(画像:Ssaco[CC BY-SA 3.0])

 これらの機体は、性能面ではあまり優れておらず、1915年7月にフォッカー単葉機が登場すると、イギリスやフランスなど連合国側はその優秀な性能に対抗できず、瞬く間に制空権を奪われました。この状況を、イギリスのメディアは「フォッカーの懲罰(Fokker Scourge)」と呼び、大きな脅威として報じました。

 第二次世界大戦期にも、同調装置は引き続き使用されましたが、この時代には航空機の防御力が格段に向上しており、貫通力の高い20mm級の機関砲など、より強力な兵装が求められるようになっていました。しかし、機首に大型機関砲を搭載すると、同調装置が故障した際、威力が大きすぎてプロペラの損傷だけでなく、機体そのものが致命的なダメージを受ける恐れがありました。さらに、機首部分はエンジンが占めているため、大型兵装の搭載が物理的に難しいという問題もありました。

 この課題を解決するため、フランスやドイツではプロペラシャフト(駆動軸)を中空構造にし、その内部に機関砲を通して弾丸を前方へ発射する「モーターカノン(モーターキャノン)」と呼ばれる方式が開発されました。

 また、アメリカやイギリスでは、ブローニングM2重機関銃を航空機用として改良した12.7mm機関銃を、翼内部に多数搭載する方法が採用されました。これにより、重量増加は大馬力エンジンで補う方針が取られました。

 日本の戦闘機においても、戦争末期に登場した「紫電改」では初期型の「紫電」に装備されていた胴体内の7.7mm機銃が廃止され、最終的には翼内の20mm機関砲のみを搭載する構成となりました。

 このように、ジェット戦闘機が登場する直前の時代には、同調装置は徐々に時代遅れの技術となりつつありました。

【こうなっていたのか!】プロペラの同調装置の仕組みを動画で見る

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