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20代女性が高確率で見ている「2つの番組」、共通点は「企画力」と「脱・東京」だ

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「テレビ離れ」の時代でも人気の理由は

 2020年9月28日(月)に放送されたバラエティ番組『月曜から夜ふかし~日本の大大大問題 秋の一斉調査SP~』(日本テレビ系)の中で、「子どものテレビ離れが進んでいる件」について取り上げられました。

 インターネットの普及、YouTubeやTikTokといった動画配信サービスの増加により、テレビを見る若者が減少している昨今。実際に、日本人のテレビ離れはどれほど進んでいるのでしょうか。

 テレビの視聴率は普段、番組ごとに発表される数字を目にする機会が多いかと思いますが、実はチャンネル別の区分なく集計されるテレビ総世帯視聴率(HUT)というものもあります。

 HUTとは、テレビを設置している全世帯のうち、リアルタイムでテレビ放送を視聴している世帯の割合を指す数字。

 ニュースサイト「ガベージニュース」管理人の不破雷蔵さんのまとめによると、1997(平成9)年度下半期のゴールデンタイムにおけるHUTの割合は71.2%。しかし、2019年度の下半期には60.2%となり、その値は年を追うごとに減少していることが確認できます。

 ところが先日、東京在住(20代女性)の友人4人と会話していると、そこにいる5人全員が毎週欠かさず見ている番組がふたつあることが明らかになりました。

やはり人気は、マツコと有吉

やはり人気は、マツコと有吉

 そのひとつが、子どものテレビ離れを題材に挙げた冒頭の『月曜から夜ふかし』だったのです。

『月曜から夜ふかし』は2012年から放送がスタートし、今年で8年を数えるバラエティー番組。関ジャニ∞の村上信五さんと、マツコ・デラックスさんがMCを務めています。

「若者のテレビ離れ」と言われる昨今。それでも20代女性たちが毎週見ている番組の特徴とは?(画像:写真AC)

 公式サイトの概要説明は、「世間で話題となっている様々な件に対してちょっとだけ首を突っ込んだり 突っ込まなかったりする番組」。東京だけでなく全国を番組ディレクターが回り、地方のシュールな場所や面白素人さんを取り上げています。

 株主優待で生活のほどんどを賄い、自転車を乗り回して優待券を使うことに奔走している「桐谷さん」や、滑舌の悪さが人気を博し現在はプロのキックボクサーを目指している「フェフ姉さん」など、キャラクター性のある人物はシリーズ化され何度も登場することも。

 番組が全力で地方や素人から引き出す素朴な笑いが面白く、深夜帯の放送にもかかわらず毎回Twitterのトレンドワード入りを果たしています。

 もうひとつ話題に上がった番組が『有吉の壁』(日本テレビ系)。

 2015年からスペシャル番組として深夜帯で放送されていましたが、視聴者からの好評を得て2020年4月からゴールデンタイムでのレギュラー化が決定しました。

真逆のような2番組の共通点

真逆のような2番組の共通点

 こちらは、MCを務める有吉弘行さんが用意した“壁”(お題)を若手から中堅の芸人たちが乗り越えるロケバラエティーです。現在の放送は四千頭身やハナコ、宮下草薙など、「お笑い第7世代」と呼ばれるコンビやトリオを中心に、多数の芸人が出演しています。

 メインとなるコーナーは、商業施設や大学などのロケ場所を舞台に、面白い一般人に成りすます「一般人の壁」。流行語大賞に選ばれるような、キャッチーなネタを披露する「ブレイク芸人選手権」は、最近の人気コーナーです。

『月曜から夜ふかし』などでMCを務めるマツコ・デラックスさん。老若男女を問わず人気が高い(画像:花王)

 チョコレートプラネットによる定番ネタ「TT兄弟」が誕生したのも、この企画。同じくチョコプラの「Mr.パーカーjr.」やジャングルポケットの「ストレッチャーズ」など、普段彼らが披露しているコントや漫才とはひと味違った個性的なキャラクターが生まれています。

 特に若手コンビきつねが工具(プラスドライバー、平やっとこなど)に扮して擬人化したキャラクターは、2.5次元舞台にハマっている女性たちの心を捉え、彼らのテーマ曲「KOUGU維新のテーマ」が配信リリースされるまでに。

『有吉の壁』はすでに、総合演出の橋本和明さんがかねて目標として挙げていた「学校や職場で翌日話題にできるお笑い番組」として認識されつつあるのではないでしょうか。

 一般人の素朴な振る舞いが笑いを誘う『月曜から夜ふかし』と、芸人が趣向を凝らし視聴者を笑わせる『有吉の壁』。

 20代女性の友人たちが欠かさず見ているというふたつの番組は、一見真逆の性質を持つように思えます。しかし、どちらも「非・東京的」「非・集権的」という点で共通しているのです。

「脱・東京」的な番組とは何か

「脱・東京」的な番組とは何か

 以前は、東京にある在京テレビ局の制作者たちによる、ある種“中央集権”的な番組づくりが行われていました。

 娯楽の選択肢が少ない時代、幅広い年代の人たちが自然とテレビの前に集まり、それによって今よりも高い視聴率を得ることができたのです。

 しかし時代の変化とともに、社会環境も娯楽シーンも人々のニーズも変わっていき、制作側と視聴者側それぞれが感じる「面白い」という感覚に乖離(かいり)が生じていきました。

 このことが、テレビ不況ともいわれる昨今の状況を生み出す一因となったのでしょう。

ネット追従だけの番組は受けにくい

 ナインティナインの岡村隆史さんが出演する『チコちゃんに叱られる!』(NHK)を手がけるテレビプロデューサー・小松純也氏さんは、テレビが面白くないと言われる理由について以下のように語っています。

「最近のテレビでは、一次情報で番組を作ることがなくなっています。ネットで調べたり、本を読んだりして番組を作っている。それがテレビを『面白くないもの」にしているのではないかと思っていました」(2019年5月24日配信、「プレジデントオンライン」)

 ネットで検索すれば誰でもすぐにたどり着ける情報を基に、番組のネタづくりを行っているという指摘です。

 制作側がネットを活用する理由が「視聴者のニーズを把握するため」であるのなら、それはもちろん間違ってはいません。しかし、素人の観点から生み出した企画満載のYouTubeやTikTokなどの動画サービスにより目が肥えた視聴者を、浅い情報で満足させるのは簡単なことではないでしょう。

 制作側が中途半端に視聴者に寄り添おうとする姿勢が透けて見えてしまえば、視聴者は「こういうのが好きなんでしょ?」と小馬鹿にされているような気持ちにさえなり兼ねません。

ネット時代こそ、ネットを超える番組を

ネット時代こそ、ネットを超える番組を

 一方、先に挙げたふたつの番組は「情報収集能力に長けている」という特長があります。

 その土地の人間しか知らない地方のうわさや真相を検証し、毎度新たな面白素人を見つけてくる『月曜から夜ふかし』。各回のテーマや登場する人物を多くの視聴者はまだ知らない、先述の小松さんが言う「一次情報」でつくられた新鮮な企画が目白押しです。

 YouTuberはそれぞれ「〇〇をやってみた」という形で独自の企画を生み出していますが、彼らの動画制作方法と『月曜から夜ふかし』の番組づくりはどこか共通しています。

 投票型ランキングサイト「みんなのランキング」が発表した「歴代面白いバラエティ番組ランキング!」で2位を獲得したダウンタウンの冠番組『水曜日のダウンタウン』も、芸能人が唱える仮説を面白おかしく独自に検証する内容。

 やはり視聴者は、番組に「独自性」や「企画力」を求めているのではないかと考えられます。

『有吉の壁』など数々の冠番組を抱える有吉弘行さん。ひろゆき、ではなく、ひろいき、とのこと(画像:太田プロダクション)

 一方の『有吉の壁』は、芸人自らが趣向を凝らしています。特に第7世代の芸人は普段からYouTubeやTikTokなどの動画配信サービスにも精通しているため、流行に敏感です。

 求められているのはコンテンツ力。TikTokは15秒~60秒の動画しか投稿できないので、数秒で印象に残り、他の人が真似したり拡散したりしたくなるような笑いである必要があります。

今はテレビの面白さを再発見する好機

今はテレビの面白さを再発見する好機

 だからこそ、キャッチーな振り付けや音楽を盛り込んだ同番組のコーナー「ブレイク芸人選手権」発のネタは、若者から絶大な人気を得ているのでしょう。

 あらゆる番組側から「テレビ離れ」を嘆く声が聞こえる昨今。しかし、特定の番組が高視聴率を獲得している現状を見ると、若者はテレビが全く眼中にないというわけでもなさそうです。

 コロナ禍でおうち時間を過ごす人が多い今は、多くの人がテレビの面白さと出合い直すチャンスとも言えます。

「TikTokも面白いけど、テレビもやっぱり面白い」と感じる若者を増やすためには、各番組の独自性や企画力がいっそう求められる時代になっているのでしょう。

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