がんばっているのに、家族や子どもにイライラして、空回りしている気がする。そんなママは、がんばり過ぎかもしれません。「5万人を子育て支援して見つけた しない育児」の著者で、12人のママでもある助産師HISKAKOさんにママが笑顔になれる考え方をうかがいました。
「がんばらない」をルール化して
――前回は、ママががんばることをやめて、自分を認められるようになるとうまく回ると教えていただきました。それでも急にがんばることをやめられない、適当になり過ぎそうで心配、というママもいると思います。そんなママはどうすればいいでしょうか?
HISAKO “あなたのために”がんばらなくていいよって言われると、みなさんなかなかやりづらいんですね。でも、あなたががんばらないことで、子どもがすくすく育つんだよって伝えると、みんながんばらないようにがんばりますね 笑
あなたが楽になるためにがんばらなくていいよって言ったら、「私のためだし、私はがんばりたい」ってなるんですけど、がんばるのを手放すと子どもにいい影響があるよって言われると、「えっ!!」って。
ママががんばらないことがいい一番の理由は、子どもたちの自己肯定感をあげることができるから。できないことがあってもいいんだよ、そんなあなたも素敵なんだよって、伝えられる。あなたはこんなことできるじゃん、できることを伸ばしていこうよって言われると、子どもは安心します。ダメ出しされて怒られないから、これでいいんだな、失敗してもいいんだ、じゃあチャレンジしてみようかなってなります。子どもにそんな人生を歩んでほしいでしょ? じゃあ、がんばれる自分が立派、成果を出せる自分が評価されるっていう、あなたの価値観を捨てましょう。そうでないと、子どもたちはあなたと同じ価値観になっていくけど、いいですか?
――そういわれると、がんばり過ぎないようにしなくては! 思います。
ルールにした「がんばらない日」
HISAKO 私も20代、30代は良いママになろうとして、がんばり過ぎていたんです。おやつは全部手作りだったし、総菜を買ってきたこともなくて。汁物とごはんに3品くらいおかずがあってって、世間から見たら完璧なママをやっていました。
でも子どもから見たら、それがしんどかったって。子どもはそんなこと望んでなかったけど、ママが満足するためにやってたんだねって。それで時間がないイライラをわたしたちにぶつけてたんだよねって言われて、その通りって気づいて。でも私は放っておかれてもがんばっちゃうタイプなので。じゃあ、もう、決めようと思ったんです。毎週土曜日は「ご飯作りません」の日。月曜日は「洗濯やりません」の日。水曜日は「掃除機やりません」の日。こうやってやらないことを決定事項として組み込んでいきました。決めないと、ついやっちゃうから。そうやって力を抜くことを今もがんばっています。
――がんばらないことをルール化するのは、まじめなママにはいいですね。
HISAKO そうそう!お弁当には冷凍食品を必ず2品入れる!とか。そしたら手を抜けるんじゃないかな。意識しないと、がんばっちゃうので。
不安になったら「子どもを見ろ!」
HISAKO それで、もし不安になったらね。私、いつもいうんです。「不安になったら子どもを見ろ」って。あなたがどんなやり方をしてようと、子どもを見て、すくすく育ってるな、前はできなかったことができてるな、体重も増えて成長してるなって、直感的に確認できることがあるなら、その感覚は正解なんだよって。今のやり方でいいのか迷ったら、まわりの情報に翻弄されるのではなくて、子ども自身を見てほしいです。
今はネットやSNSでたくさんの情報が飛び交っていて、私から見て「これはあかんやろ」という内容や、正しいんだけど「これを発信したらママさんたちすごくしんどくなるやろ」っていう記事、すごく多いんです。それで追い詰められて、例えば3ヶ月の赤ちゃんはこうという先入観ができて、それができているか・いないかだけで優劣を評価しちゃうことはやめてほしいです。全員ちがうのが正解です。
たとえば、三つ子の魂百までみたいに、3歳までの子育てが子どもに反映されるってよくいわれるんですね。これは根拠があることかもしれないけれど、子どもは大人になるまでの間にいろんな経験を積んで生きていくわけだから。3歳を過ぎてもいくらでも軌道修正できるんです。確かにある程度は決まるのかもしれないけど、そこを超えたら何も修正できない、なんてことはないです。3歳超えてからでもできることはいっぱいありますから。それなのに、3歳までが重要って情報を見ると、ママ・パパたちは追い詰められるんじゃないかな。
子育てに手遅れはない
HISAKO それから親、特にママの影響。「あなたの関わり方が子どもに……」というのもよくありますけど、子どもたちは保育園の先生やお友達、クラスメイト、習い事のコーチなど、いろんな人とのつながりで成長していくから。ママの影響で子どもの全部が決まるなんてことないです。子どもは賢いから、上手にママのいいところを取り込んでいきますよ。
それでもママの中には「全部母親の影響で子どもが育つ」「私がやらないと」っておっしゃる方もいます。だから、私はいつも言うんですよ。「あなたは何様ですか?」って 笑 「あなたの影響で子どもが全部作られるほど、そんなに影響が大きい、えらい人なの? すごいね」って。
ママも、たくさんの子育てに関わる社会のメンバーの中の、会員番号1番です! っていうだけなんですよね。自分ひとりでやらないと、なんて思う必要もないし、思い上がりですからね。
ただ「好きだよ、愛してるよ、生まれてきてくれてありがとう」って伝えながらのスキンシップと、生理的欲求を満たすことと、安全確保、この3つができていればOK。
――ママはつい1人で気負ってしまいがちですね。
HISAKO これは社会が悪いんですよ、そういう風に仕向けるから。〇歳の壁っていうのもそう。最初は「小1の壁」だけだったと思うんですけど、4年生の壁が出てきて、あれ?増えてるなって。そしたら今度は4歳の壁とか、どんどんでてきて、もうどんだけ壁あんねん!って。全部壁やんか。
とにかく、子育ての中で、手遅れってないです。気づいたときに、こうしてみようかな? って思ったことを実践していく。そしたら子どもはそれに反応してくれるし、そうするとやっぱり失敗することもあるんですね。あー間違えた! これやっぱちゃうわ! って。そしたら、また次の方法をやってみようかなって、それもうまくいくかわからないけど、軌道修正していく。その繰り返しなんですね。その結果、子どもが18歳になったときにどんな仕上がりになっているかというと、まあなんとなく立派な大人になってれば、まあOKかなって笑 そんな感じやから。
インタビュー記事は第三回に続きます。
(解説:HISAKO、取材・文:佐藤華奈子)
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