牛丼チェーンの「すき家」が4月3日から深夜料金を導入し、話題となりました。午後10時から翌日午前5時までの間に注文した商品の合計金額に対し、深夜料金として7%を加算しています。また、牛丼チェーンの「松屋」も5月中旬以降、一部店舗で深夜料金を試験的に導入しており、午後10時から翌日午前5時までの注文商品の合計金額に最大10%の深夜料金を加算しています。
牛丼チェーンの深夜料金導入に対し、SNS上では「ついに牛丼店も深夜料金導入か」「深夜料金がかかるのは世知辛い」「もう行かない」「深夜料金導入は妥当」という内容の声が上がっています。
牛丼チェーンが深夜料金を導入したことで、店の経営にどのような影響が出る可能性があるのでしょうか。飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。
駅付近の店舗では売り上げが大きく増加する可能性
Q.牛丼チェーンが深夜料金を導入したことで、売り上げにどのような影響が出る可能性があるのでしょうか。
成田さん「深夜料金を導入したことにより、深夜帯の売り上げが増加すると考えます。特に駅近くの店舗のほか、居酒屋が多いエリアにある店舗など、元々深夜帯の需要が多かった店舗で売り上げが大きく増加する可能性があるでしょう」
Q.牛丼店は「安い、早い、うまい」がメリットだったと思います。深夜料金を導入したことで、このメリットが失われる可能性はないのでしょうか。
成田さん「バブル崩壊後、長期にわたり、『安い、早い、うまい』が牛丼店のメリットでした。昨今の値上げや深夜料金の導入により、今後ますます、このメリットが失われる可能性があるでしょう。
店舗によるとは思いますが、深夜帯に店を利用する顧客の多くは利便性を重視しており、深夜料金が導入された後でも利用するケースは多いと考えます。一方、必ずしも利便性を重視していない一部の顧客は、深夜以外の時間帯に来店したり、深夜料金を導入していない牛丼店を利用したりするようになる可能性があるでしょう」
Q.すき家が4月3日から深夜料金を導入したことについて、どのように評価しますか。飲食店専門経営コンサルタントとしての見解をお聞かせください。
成田さん「原材料費や人件費、エネルギーコストなどの上昇に対応するとともに、商品の品質維持・向上と安定供給を図る上で、深夜料金の導入は英断だと私は考えます。
これまで日本では、ファストフード店を中心に低価格競争の時代が長く続いてきました。その陰では、低賃金や長時間労働のような形で労働者に過重に負担がかかっていたほか、コスト削減によるサービスの低下といった悪影響が浸透していました。その結果、飲食業界から優秀な人材がどんどん流出し、昨今では深刻な人材不足に陥っています。
深夜料金の導入をきっかけに、デジタル技術でビジネスを変革する『DX(デジタルトランスフォーメーション)』への投資も含めた労働環境の整備のほか、より高いサービスを求める顧客に応えるためのサービス向上、『食のインフラ』として安全性と品質の維持、強いては業界全体の発展につながると私は考えます」
Q.原材料費や人件費、エネルギーコストなどの上昇が続く中、牛丼チェーンが生き残っていくには、どのような取り組みが求められるのでしょうか。
成田さん「多くの牛丼チェーンがすでに着手しているように、業界全体として標準的な料金体系の再構築のほか、時間帯別のメニューや料金に関する差別化、持続化可能な労働力の確保など、多くの取り組みが引き続き必要とされるでしょう。
過渡期を迎えた飲食業界で飲食店が生き残っていくためには、店舗の立地や競合他社、利用客の客層など、多岐にわたって十分に分析した上で、各店舗ごとの細やかな経営戦略を議論することが非常に重要になると私は考えます」
オトナンサー編集部