新型コロナウイルスの感染拡大による経営破綻が9月に入り、再び増勢に転じていることが2020年9月28日、東京商工リサーチが発表した調査によってわかった。
単月の倒産としては、新型コロナ発生後に最多だった今年6月に迫る勢いだという。政府の支援策などで何とか息をつないできた企業が、ついに力尽きてきた状況が心配される。
飲食業が最多、最悪だった6月に迫る勢い
東京商工リサーチの企業倒産統計は、負債額1000万円以上の法的整理、私的整理を対象に集計している。それによると9月は、28日14時時点までに85件発生し、今年2月からの累計が全国で526件に達した。月別では、6月に単月最多の103件発生。その後、7月は80件、8月は67件と前月を下回ってきたが、9月は上昇に転じた。
政府や自治体の各種支援策などに依存し、かろうじて経営を維持している企業が少なくないが、環境悪化が長引き、ここにきて資金繰り支援効果が薄まっている点が懸念される。コロナ前の売上水準に回復するには時間が必要で、新たな支援策がない場合、脱落がさらに加速する可能性もある。
業種別では、来店客の減少、休業要請などで打撃を受けた飲食業が79件で最多。次いで、百貨店や小売店の休業が影響したアパレル関連(製造、販売)が59件、インバウンドの需要消失や旅行・出張の自粛が影響した宿泊業が47件で、この3業種で全体の3割を占め、突出し続けている。このほか、飲食業などの不振に引きずられている飲食料品卸売業が30件に達し、飲食業界全体での需要低迷が広がり始めている。
都道府県別では、東京都が130件で全体の4分の1と突出している。以下、大阪府が54件、北海道27件、愛知県25件と続き、10件以上の発生は全国で16都道府県=図表参照。9月28日には東京都のヘアケア用品企画販売会社が破産した。もともと主要取引先の倒産で焦げ付きが発生し、資金繰りが悪化していた。そこに新型コロナの感染拡大で先行きの見通しが立たなくなり、事業を停止した。
破たんの形態別でみると、倒産した468件のうち破産が414件(構成比88.4%)で最多。次いで、民事再生法が31件(同6.6%)、取引停止処分23件(同4.9%)だった。新型コロナ関連倒産の約9割を「消滅型」の破産が占め、「再建型」の民事再生法は1割未満にとどまる。業績不振が続いていたところに新型コロナのダメージがとどめを刺す形で脱落するケースが大半だ。先行きのめどが立たず、再建型の選択が難しいことが浮き彫りとなっている。
エコノミスト「隠れ失業者の顕在化が心配だ」
こうした調査結果に対して、ネット上ではまずエコノミストのこんな投稿が相次いでいる。
経営コラムニストの横山信弘氏は、こう投稿した。
「財務的に脆弱な企業は、非常に苦しいだろう。直接的な影響がない企業も連鎖倒産がありうる。今こそ松下幸之助氏が唱えた『ダム式経営』(編集部注:事業が好調な時にはダムに水を貯めるように資金を十分にストックしておく。不況になったらダムの門を少しずつあけて水を供給するように蓄えた資金で乗り切っていく)を見習い、財務的な余裕が持てるよう、利益が出やすい経営体質にしていかなければならない。どの企業に対しても言えることだ」
エコノミストで経済評論家の門倉貴史氏は、「隠れ失業者の顕在化」を心配する。
「コロナ破たんの増加に伴い懸念されるのが失業者の増加だ。コロナ禍で企業業績が大幅に悪化しているのに、7月の完全失業率は2.9%と低い水準にとどまっている。これは雇用調整助成金(企業が従業員を解雇せずに休業扱いにすると政府から支給される補助金)の拡充によるところが大きい。7月の休業者数は全国で220万人にのぼり、失業者数の197万人を上回る。この休業者数は潜在的な失業者ととらえられる。企業業績の回復がさらに遅れれば、倒産・破産が増えることになり、この時点で休業者が失業者として顕在化する。政府が雇用対策を中心とした第三次補正予算を組まないと年度内に追加的な失業者が(リーマンショック時を上回る)100万人を超える可能性がある」
第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏も危機感を募らせる。
「少なくとも東京商工リサーチの(過去の)倒産件数で見れば、9月というのは2月、4月に次いで1年間で3番目に少なくなる季節性があります。逆に、10月は3月、7月に次いで1年間で3番目に倒産件数が多くなる季節性がありますから、来月(10月)はさらに破たん件数が増える可能性があるでしょう」
こうしたことから、これから「地獄」がくるのではと心配する人が多かった。
「もし、本当の地獄が来るとすれば年明け早々だと思う。雇用調整助成金の特例措置が今年12月で切れる。それまでにある程度めどが立つといいが、ない場合、再度延長することがあるのだろうか? 従業員1人当たり1日最大1万5000円の助成金は20日働いたとして30万円。中小企業にとってどれだけの助けになっているか。これがなくなったら失業者が一気に増えるはずだ」
「企業の夏ボーナス激減が響いた。冬ボーナスも減ると...」
倒産件数が一番多い飲食業の経営者からは、こんな声が聞かれた。
「東京の市部で飲食店を経営しています。なんとか踏ん張っていますが、厳しい状況が続いています。テナント担当の不動産屋も厳しい状況のようで、ひどい仕打ちをしてさっさと出て行かせて新しいところを引き入れようとしてきます。新しいところなんて入らないと思いますが、危ない業者を使って立ち退かせようとしています。個人事業主はカモにされるので気をつけましょう」
「都心で居酒屋を経営しています。家賃支援給付金を申請、途中、直しもありましたが申請から2か月たっても受け取れません。持続化給付金の詐欺が影響して、こっちの給付が遅れているらしいです。特に都の時短営業要請は本当に痛かった。周りの繁華街では今まで見たこともないくらいの『テナント募集』の看板の数。それと、経済を麻痺させた、煽るだけ煽った感染症専門家やマスコミの罪は本当に重い。怒りを覚えます」
「飲食店やっています。もう持ちこたえられないというか、6月、7月より、8月、9月のほうが数字は悪くなった。うちも含め、そういう店が多いです。理由は企業の夏ボーナス激減です。10月から酒タバコ増税だし、冬ボーナスも激減でしょうから、今年の冬は厳しい。年末調整で夏と冬のボーナス分くらい戻さないとヤバいと思います」
街の景観が変わるほど、倒産が広がっているという指摘もある。
「個々の企業の経営状態は客観的にはわかり難いですが、立地の良い広告看板が空き看板になっているのが目立ってきましたね。それまでは、キャバクラやエステ関係の派手な看板が所狭しと広告を打っていましたが、この半年で綺麗になくなりました。不景気を体感できますね」
「新聞の折り込みチラシも、郵便受けのチラシも大分減ったしね」
「都内ですが、私の街の行きつけの飲食店が2店舗お店を閉めました。外食率が低い私のような者が、最低でも月数回利用するというのはコスパが良くて美味しくてお気に入りだったから。それだけ、ギリギリで頑張って、営業されていたのだろうなと今になってしみじみ感じています。もう届かないけど、たくさんおいしい思いをさせていただきありがとうございました」
明るい秋はこないのだろうか。最後にこんな声を紹介したい。
「福岡で小さな定食屋をやっています。最近は、学校の先生、看護師さん、大学生のお客さんが少しずつ帰ってきて、ホッとしています。肌感では、年明けまでのガマンだと思います。『美味しい=幸せ』と自分にいいきかせています。老眼ですが、明るい未来はクッキリ見えます」
(福田和郎)