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新車「800万円超え」の軽自動車! でも乗ればホレる完成度 スズキ製エンジンでなぜ?

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庶民の身近なアシというイメージが強い軽自動車ですが、800万円超するとびっきりの高価格車がイギリス製のケーターハム「スーパーセブン170」シリーズです。このクルマは、なぜこんなにも高価なのでしょうか。

トヨタの高級車「クラウン」に匹敵!? 日本一高い軽自動車

 登録車はもちろん、軽自動車でさえ新車価格がすっかり高くなった昨今、もっとも安価な軽自動車の新車は、ダイハツ「ミライース」とトヨタ「ピクシスエポック」のベーシックグレード「B “SA III”」で、ともに99万2200円(税込)になります。では、反対に2024年11月現在、新車販売されている軽自動車でもっとも価格が高いクルマは何なのでしょうか。

 ダイハツのフラッグシップスポーツカーの「コペン」か、はたまた日産の誇るEV(電気自動車)「サクラ」か――。

 これらもたしかに値は張るものの、じつは「コペン」や「サクラ」の2倍以上のプライスをつけている軽自動車が存在します。それはイギリス製のケーターハム「スーパーセブン170」シリーズです。スタンダードモデルの「170S」でお値段は驚きの818万8000円。トップグレードの「170R」になるとさらにお高い839万3000円になります(ともに税込)。

Large 241112 kei 01軽自動車のイメージ写真(画像:写真AC)。

 この新車価格はトヨタの高級セダン「クラウン」に匹敵するプライスです。そう聞くと、「スーパーセブン170」はさぞかし贅を尽くした高級軽自動車かと思われるでしょうが、じつはこのクルマにはエアコンやカーオーディオはおろかドアすらない、吹きっさらしの2シーターオープンカーです。しかもトップグレードの「170R」には、標準でフロントスクリーン(フロントガラス)すら備わりません。

 なぜ廉価グレードの軽トラよりも装備の劣るクルマがここまで高いのでしょうか。その答えは「スーパーセブン170」が少量生産の本格的なライトウェイト・スポーツカーだからです。

スズキ製のエンジンを搭載するオープンカー

「スーパーセブン170」は、スポーツカーと言っても動力性能に関して目を見張る部分はありません。心臓部はスズキ「ジムニー」にも搭載される排気量660ccの直列3気筒DOHCターボエンジン「R06A」です。トランスミッションやデファレンシャルなどの駆動系もすべてスズキの軽自動車と同じものを流用しており、最高出力は85ps/6500rpm、最大トルクは11.8kgf-m/4000-4500rpmに過ぎません。

 しかし、全長3100mm、全幅1470mmという軽規格内に収まるコンパクトなボディの車重は驚異の440kg(オプション装備による最軽量乾燥重量)。スズキ「スペーシア」が850kg前後なので、軽ハイトワゴンの半分程度の重量です。そのため、0-100km/h加速は6.9秒という俊足ぶりを発揮します。ちなみに、車名の「170」の由来は1tあたりの馬力を示す値です。

Large 241112 kei 02ダイハツ「コペンローブ」。新車価格は188万8700円~(税込、諸費用別)(画像:ダイハツ)。

 もともと「スーパーセブン」は、ロータス・カーズ創業者のコーリン・チャップマンが設計したロータス「マーク6」の後継となる公道走行可能なクラブマンレーサー(アマチュア向きのレーシングカー)として1957年に発表されました。

 ロータス・カーズが生産していた「スーパーセブン」は、大がかりな生産設備を必要としない反面、生産工程の大部分が手作業だったため生産性が低く、本格的なスポーツカーメーカーへの脱皮を目指していたチャップマンは、1966年に後継車のロータス「ヨーロッパ」の登場とともに「スーパーセブン」の生産終了を決定します。

 しかし、「スーパーセブン」のスポーツカーとしての人気はいささかも衰えを見せてはおらず、むしろ当時ロータスの販売店であったケーターハム社は、その完成度の高さを惜しみます。その結果、1973年にロータス・カーズと交渉して、製造販売権のほか、在庫部品や製造治具などの生産設備一切を譲り受け、ケーターハム「スーパーセブン」として生産継続することを許されました。

快適性皆無だけどチョー楽しい!!

 こうして「スーパーセブン」の生産・販売の権利を手に入れたケーターハムは、独自に改良とバリエーション展開を広げていき、2014年には日本仕様としてスズキの軽自動車のパワートレインを流用した「スーパーセブン160」シリーズを発表。これが日本だけでなく世界的に好評を博したことから、2021年に後継車種となる「170」シリーズを登場させました。

 以前、筆者(山崎 龍:乗り物系ライター)は「スーパーセブン170」の前モデルとなる「160」に試乗したことがあります。最低限の快適装備は当然として、ドアすらないので風の巻き込みが凄まじく、走り出せば騒音や振動が常にドライバーを襲うというトンデモないクルマでした。

Large 241112 kei 03ケーターハム「スーパーセブン170R」。オプション装備による最軽量乾燥重量は驚異の440kg。一般的な小型乗用車の半分以下の重量であり、大型バイク2台分ほどの重さしかない。おまけに低重心のため走行性能は軽自動車の水準をはるかに超える(画像:ケーターハムカーズ)。

 しかし、車重の軽さと重心の低さはスポーツカーにとっては何よりも「正義」で、ありとあらゆる運動物理を味方につけ、軽自動車とは思えない素晴らしい走りを堪能させてくれました。最高出力は85psに過ぎませんが、パワー不足を感じさせることは一切ありません。ステアリングやシフト操作は手首のひと捻りでダイレクトに反応し、誰でも安全な範囲内で意のままに操ることができます。

 一言で表すなら「すごく楽しいクルマ」です。それは後継の「スーパーセブン170」も変わらないハズです。このクルマの楽しさを味わうために800万円以上を支払う価値は充分にあるでしょう。軽自動車としてはかなり高価なクルマですが、「スーパーセブン」はリセールバリューもかなり良いため、ピュアスポーツカーを考えている人にはオススメしたい1台です。

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