一度発症すると進行を止めたり、回復するための治療が困難な神経疾患「アルツハイマー型認知症」(アルツハイマー病)。患者数は世界的に年々増加している。
そんなアルツハイマー病の発症を抑える可能性が、「ビフィズス菌」にあるかもしれない。2018年1月31日、その研究成果が東京都内で発表された。
効果は認知症への処方薬とほぼ同等を示す
森永乳業は、マウスを用いたアルツハイマー病の予防効果の検討を行い、「Bifidobacterium breve A1」(ビフィズス菌A1)がアルツハイマー病の発症を抑える可能性があることを発見した。
森永乳業の研究本部基礎研究所長・清水金忠氏は、「ビフィズス菌A1」を1日あたり10億個、計10日間にわたり経口投与したアルツハイマー病のモデルマウスの実験結果を報告した。
空間認識力を評価する「Y迷路試験」、学習・記憶能力を評価する「受動回避試験」、記憶や学習能力に関わる脳組織「海馬」の遺伝子発現の解析の結果から、ビフィズス菌A1の摂取によりアルツハイマー病モデルマウスの認知機能改善作用があることや、脳内の過剰な免疫反応や炎症を抑えることが認められ、すなわち、アルツハイマー病の発症を抑制する可能性が示された、と清水氏は説明した。
またその改善効果は、認知症への処方薬を投与した場合とほぼ同等だったという。「Y迷路試験」と「受動回避試験」実験において、ビフィズス菌A1は認知症への処方薬である「コリンエステラーゼ阻害剤」と同程度の改善効果を示している。
ヒトを対象にさらに大規模試験を予定
マウスでの改善効果は確認できた。では、ヒトへの効果はどうなのか。
清水氏によると、認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)を持つヒトを対象に比較試験を実施したところ、ビフィズス菌A1摂取による認知機能の改善が確認されたという。森永乳業は今後、ヒトを対象にしたさらに大規模な試験により、ビフィズス菌A1によるアルツハイマー型認知症の発症抑制について、研究を進めていくという。
なおこの日の研究発表会では、腸内環境やビフィズス菌研究の専門家の慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授・福田真嗣氏が腸内細菌叢の機能について講演した。 <J-CASTトレンド>