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目前のガザ侵攻 イスラエル側が圧倒的に不利? だから「メルカバ」戦車は“特設屋根”をつけた

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地上侵攻に向けて集結するイスラエル軍戦車「メルカバMk.4」に「鳥かご」装甲が装着されていました。これはガザ市街地戦に向けた対策であると思われます。なぜこれが必要なのでしょうか。有識者は市街戦の怖さを語りました。

「鳥かご」という名の増加装甲

 2023年10月7日早朝(現地時間)に始まった、パレスチナ武装組織「ハマス」によるイスラエルへ奇襲的な越境攻撃に端を発した緊張は日々高まっており、イスラエル軍はハマス壊滅のため、彼らの拠点となっているパレスチナ自治政府ガザ地区に地上侵攻する準備を進めています。

 そうしたなかで、ガザ周辺に集結したイスラエル軍の主力戦車「メルカバMk.4」の砲塔上部に、「バードケージ(鳥かご)」とも呼ばれる金網の屋根が取り付けられています。

Large 231025 merkava 01イスラエル軍の「メルカバMk.4」戦車(画像:イスラエル国防軍)。

 バードケージを最初に用いたのはロシア軍でした。現在も続くロシアによるウクライナ侵攻の初期、ウクライナ軍の対戦車ミサイル「ジャベリン」などによる戦車上面への攻撃、いわゆる「トップアタック」を脅威と捉えたロシア軍は、応急的な措置として戦車にバードケージ装甲を増設しています。しかし、その後の分析から、バードケージには対戦車ミサイルを防ぐ効果は薄いとされ、SNS上では逆にその不格好な見た目を嘲笑するかのような書き込みも見られるほどでした。

 ロシア軍では効果が薄いとされたバードケージを、なぜイスラエル軍は「メルカバ」に増設したのでしょうか。

 理由として考えられるのが、ドローンの存在です。10月7日の奇襲攻撃で、ハマスはRPG-7対戦車ロケットで使用するタンデム式のPG-7弾頭をクアッドコプター(4枚回転翼の小型ドローン)から投下し、少なくとも2両の「メルカバ」に損害を与えたことが、彼らの公開した映像から確認されています。このような戦果から、ドローンはとても安価ながら、高価な戦車を破壊できる「非対称な」兵器として注目されます。

 なお、ハマスは個人携行式の対戦車ミサイルとして、ロシア製の9M113「コンクールス」や9M133「コルネット-E」、北朝鮮製の「火の鳥2」などを保有していますが、いずれもトップアタック能力は付与されていません。

ロシア軍が大敗した市街戦の教訓

 加えて、より大きな理由と考えられるのが、ガザへの地上部隊投入によって生じる市街戦です。現代の軍隊にとって、建物が連なる都市空間は物理的な制約が多く、もっとも過酷な環境の一つであり、そういった戦いでは攻撃側が兵力や兵器の優位性を活かしにくいと言われています。

 代表的な例としては、第1次チェチェン紛争(1994~96年)における首都グロズヌイの戦いがあるでしょう。このときはロシア軍が同地に攻め込みましたが、兵力差は5倍以上あり、多くの戦車や装甲車を保有していたにも関わらず、グロズヌイを防衛するチェチェン軍のゲリラ的抵抗によって壊滅させられました。

Large 231025 merkava 02テルアビブのカルメル市場を使って市街戦訓練を行うイスラエル空挺旅団の兵士(画像:イスラエル国防軍)。

 それは市街戦であったことが要因として挙げられます。都市の環境は、防衛側に無数の“隠れ場所”を提供することがあります。

 しかし、立体空間である市街地では上方や左右、後方など、あらゆる方向から攻撃される可能性があります。建物上層階からの携行式対戦車兵器によるトップアタックは、特に大きな脅威として知られています。また、このような環境では小型ドローンの発見は難しく、前述した爆弾投下攻撃は戦車にとってより大きな脅威となることは間違いありません。

 一般的に戦車は、野外での有視界戦闘を考慮して被弾しやすい箇所とそうでない箇所で防御力の優先順位を設けています。この結果、装甲のぶ厚いエリアというのは前方側の左右30度(合計60度)程度の範囲に集中させています。逆にいうと、これ以外の真横や後方、上面などは防御力が弱く、市街戦ではそういったところを狙われる割合が圧倒的に高まるのです。

 ほかにも今回のハマスとの戦いにあたっては、戦車にとってもう一つ悪いニュースがありました。それはハマスが「対メルカバ戦闘パンフレット」を作成していたことです。パンフレットには砲塔基部(ターレットリング)や、側面装甲のスキマ、後部ハッチなど、対戦車火器で狙うべき「メルカバ」の“弱点” が写真つきで解説されています。

元米軍将校に聞いた 市街戦の極意とは?

 さらに、対戦車火器を自動で迎撃する「トロフィー」アクティブ防護システムの攻略法として、「システムの反応が間に合わない45m以内で攻撃する」「複数弾の一斉発射でシステムが対処できないようにする」など具体的な指示が記されていました。実際、10月7日の奇襲攻撃で「メルカバ」は破壊されており、ガザの市街地戦でも同様の戦術が用いられる可能性は高いと思われます。

Large 231025 merkava 03ヨルダン川西岸地区のナブラスで軍事作戦を行った際のイスラエル軍部隊。奥に「メルカバ」戦車が見える。兵士たちの目線から全周にわたって警戒しているのがわかる(画像:イスラエル国防軍)。

 こういったことを踏まえ、市街地における戦術と装甲車両の運用について、元アメリカ陸軍将校である飯柴智亮氏に話を伺いました。まず飯柴氏は「市街地戦は基本的に避けるべきもの」と前置きをしたうえで、以下のような戦い方を示しました。

「市街地でゲリラなどを掃討する場合、コードン&サーチ(封鎖と捜索)という戦法が考えられます。これはゲリラが潜むと思われる一帯を封鎖(コードン)し、その中をサーチ(捜索)するというものです」

「今回のような状況だと、戦車は歩兵の支援として用いられるでしょう。敵が抵抗している建物を砲撃で粉砕したり、障害物を破壊して通路を切り開いたりといった役割が考えられます。敵が潜む市街地に先頭を切って入っていくようなことはしません。また、市街地には避難できなかった民間人も残っています。ロシア軍なら、損害無視で攻撃するでしょうが、アメリカ軍はそのようなことはできないため、攻撃を制限する要素となります。イスラエルは、両者の中間くらいのものになるのではないでしょうか。イスラエルにとっては、人質も無視できないでしょう」

 ハマスの壊滅を決意したイスラエルにとって、ガザへの地上侵攻は、それを実現できる唯一の手段ではありますが、それは決して容易なものにはならないでしょう。

【ホント屋根だ!】侵攻に備えて砲塔の上に「金網の屋根」付けたイスラエル戦車

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