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飛行機に乗ったら「当便は除雪のため遅延します」と言われました。なぜそこまで入念に除雪するのでしょうか?

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真冬の空港では、旅客機を入念に除雪する光景を見ることは日常茶飯事で、除雪を優先するために遅延することも珍しくありません。素人目にはこの除雪作業は過剰にも見えそうなものですが、実は安全にダイレクトに直結する問題です。

雪=旅客機の大敵?

 真冬の空港では、旅客機を入念に除雪する光景を見ることは日常茶飯事で、除雪を優先するために遅延することも珍しくありません。素人目にはこの除雪作業は過剰にも見えそうなものですが、実は安全にダイレクトに直結する問題です。

Large 01雪の降る新千歳空港を発着するJAL機(乗りものニュース編集部撮影)。

 雪は飛行機の大敵といっても差し支えなく、航空会社は冬を前にして必ずと言ってよいほど、操縦士らに社内誌などで注意喚起を行うほどです。

 雪のなかで航空機を運航するには、滑走路や駐機場の除雪、航空機の主翼や水平尾翼に積もった雪も取り除く必要があります。雪氷が翼の上に付いたまま離陸すると速度が思うように出ず、速度センサーに雪が詰まれば正しい速度も表示されず、事故の危険が非常に高まるのです。

 操縦士たちはこうした知識を持っていますが、一般人には「遅延してまで除雪するの……?」と思われるくらいかもしれません。このため、航空会社は毎年冬が近づくと社内誌などで、気温による雪質の違いや、雪が降りやすく氷が張りやすい天候を解説したり、過去の事故例を紹介したりします。それだけ冬の運航に神経をとがらせているということです。

 ちなみに、作業車両など散布する防除雪氷液には、積もった雪や張った氷を除くものと、再び雪や氷が付くのを防ぐものの2種類があるということです。

 こうした雪氷対策は昔から行われてきましたが、それでも起きた大きな事故として今も航空関係者が記憶しているのが、1982年1月13日に米国の首都ワシントンで起きたエア・フロリダのボーイング737-200の墜落です。ワシントン・ナショナル空港で離陸に失敗し、氷の張ったポトマック川に突っ込んでしまったのです。

「雪は大敵」を広く知らしめた航空事故とは

 事故の主な原因は雪氷が主翼に付いたことと、エンジンの防氷スイッチを入れ忘れ離陸に必要な性能を操縦士が把握できなかったことです。ただ他にも、雪氷を取り除く作業の完了後、離陸までの時間が長すぎたことや、厳冬下での運航経験が未熟で、地上走行中に前を走る機体のエンジン排気で氷を解かそうと意図的に前の機体へ近づき、逆に氷が主翼上に増えるのを促してしまったことなども挙げられます。

Large 02 新千歳空港のスノー・スイーパー(乗りものニュース編集部撮影)。

 この事故は川に落ちた男性乗客がヘリコプターからの救出用ロープを女性乗客に譲ったり、群衆の中から川に飛び込み救出を援護する人が出たりと、さまざまな映像が当時、世界中のテレビで流されました。多くの人の記憶に残っただけでなく、航空会社にとっては冬の運航への注意喚起がどれほど大切かを改めて意識させるものとなりました。

 現在も冬の空港では、雪が降っていないのに防除雪氷液を旅客機の翼に散布しているのを見かけることがあります。各航空会社は天候の変化を入念に予測し、状況次第では降雪が無くてもあらかじめ散布をします。寒い中の作業は辛く、作業を行う人たちは厳重に重ね着をして手袋も2枚重ねで臨むと言います。

「シャッ、シャッ」と作業車両が手際よく液をかけても、旅客機の出発は時に遅れることがあります。しかし、こうした地道な作業が安全運航を確保していると知れば、完了まで待つのが大切と思うでしょう。

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