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その79 政治家への「ノーベル平和賞」授与「こんなものいらない!?」(岩城元)

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1974年12月10日、ノルウェ―のオスロでノーベル平和賞を手に喜ぶ佐藤栄作元首相。(翌11日付の朝日新聞朝刊から)
1974年12月10日、ノルウェ―のオスロでノーベル平和賞を手に喜ぶ佐藤栄作元首相。(翌11日付の朝日新聞朝刊から)

安倍晋三首相がドナルド・トランプ米大統領を、ノーベル平和賞の候補に推薦していた。

トランプ大統領が2019年2月15日のホワイトハウスでの記者会見で明らかにしたもので、北朝鮮問題での「実績」が推薦理由とのこと。安倍首相も否定はしていないし、日本政府の関係者によると、米国側からノーベル平和賞の候補に推薦してくれるよう、依頼があったのだそうだ。

「非核三原則」ノーベル平和賞の陰で米国と密約

もっとも、2月27、28両日の米朝首脳会談が物別れに終わり、この話には水が差された感じだが、いずれにしろ、これまで政治家がノーベル平和賞を受けたあと「失望」させられることが少なくなかった。

たとえば、トランプ氏の前任の米大統領だったバラク・オバマ氏。大統領になってすぐの2009年4月、チェコのプラハでの演説で、核兵器をすべてなくす核廃絶を誓い、同年のノーベル平和賞を受けた。

だが、それにふさわしいことは出来ず、「賞を返すべきだ」との批判まで浴びた。

1991年に「民主主義と人権を求める非暴力の闘い」をたたえられてノーベル平和賞を受けたミャンマーのアウン・サン・スー・チー氏も、失望を呼んでいる一人だ。

今は国家顧問だが、ミャンマーの少数民族で、政府から迫害を受けているロヒンギャ族の問題については、なんの手も打てないでいるように見える。

これまでにわが国でただ一人、ノーベル平和賞を受けた佐藤栄作元首相の場合はもっとひどい。彼は「核兵器を持たず、作らず、持ち込まぜず」の「非核三原則」を提唱したことを評価され、1974年に受賞した。

だが、米国との間では沖縄には核の持ち込みを認めるという密約を結んでいた。ただし、それが明らかになったのは彼の死後のことである。

政治家は世に平和をもたらすのが使命だ

こうした類の話はまだまだある。もちろん、ノーベル平和賞に値した政治家もいる。しかし、大統領や首相などといった政治家は本来、世に平和をもたらすのが使命であり、仕事のはずである。それがうまくいったからといって、ノーベル平和賞まで差し上げる必要があるのだろうか。

昨年(2018年)のノーベル平和賞は、コンゴ民主共和国の婦人科医のデニ・ムクウェゲさんと、過激派組織による性暴力の被害者で、被害者の救済を訴えるイラクのナディア・ムラド・バセ・タハさんが受賞。紛争下の性暴力根絶に向けた尽力が評価された。

ノーベル平和賞は原則として政治家に与えることをやめ、こうした普通の人たち、言い換えれば、草の根の運動家――古くは1964年のキング牧師(マーティン・ルーサー・キング)や1979年のマザー・テレサ、1999年の「国境なき医師団」といった人たちを対象にすべきではないだろうか。(岩城元)

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