直線距離にして13km、「日本最短の航空路線」として知られるRACの南大東~北大東線が8月から運休となります。同路線の2024年6月の利用率は9割近く。にも関わらず、なぜ運休するのでしょうか。
1997年10月に開設された激短空路
JAL(日本航空)グループにおける南西諸島方面の地域航空会社として、那覇空港を拠点に、おもに離島路線を運航するRAC(琉球エアーコミューター)が2024年7月末をもって「南大東~北大東線」を運休します。この路線は直線距離にして13km。「日本一短い航空路線」として知られる名物路線でした。なぜ運休に至ったのでしょうか。
南大東空港で。RACのDHC8-Q400CC(乗りものニュース編集部撮影)。
沖縄県の南大東島と北大東島を結ぶRACの空路は1997年10月に開設されました。同路線の13kmという距離は、東京駅と羽田空港を直線で結んだのとほぼ同程度です。時刻表上の所要時間は20分ですが、もちろんこの時間は地上走行などを含めたもの。実際に飛んでいる時間は10分未満であることも珍しくなく、時期や天候によっては飛行時間が3分程度しかない場合もある、超ショートフライトです。
使用される飛行機も珍しいものが使用されています。50席を配するターボプロップ機、ボンバルディアDHC8-Q400CCです。機番末尾の「CC」は「カーゴコンビ(貨客混載型)」を意味しており、胴体後方約3分の1のエリアが貨物室というユニークなレイアウトが特徴。このモデルは、国内航空会社ではRACしか導入していません。
そして、同路線の2024年6月の利用率は88.1%。運休が発表されて以降、航空ファンらによる”乗り納め”需要があったと考えても、RACが運航する路線のなかでは最も高い利用率を記録しています。それなら、運休する必要はなかったのではないでしょうか。
「利用率9割弱」で運休の経緯…その後の両島のアクセスは?
RAC・JTA(日本トランスオーシャン航空)の広報担当者は次のように説明しています。
「この路線の搭乗率は『北大東~南大東』のみの数値ではなく、『那覇~北大東~南大東』と『那覇~南大東~北大東』の数値となります。『北大東~南大東』のみの需要は少ないのが現状です。その点とお客さまの利便性を考慮し今回の判断となりました」
北大東空港(乗りものニュース編集部撮影)。
この路線は、那覇空港を基点に「三角運航」と呼ばれる、国内の定期旅客便としては珍しい運用形態が採られてきました。これは、月・金・土・日曜は那覇→北大東→南大東→那覇を、火・水・木曜は那覇→南大東→北大東→那覇の順で同じ機体を飛ばすというものです。
高い利用率は、南大東島から北大東島経由で那覇、もしくは北大東島から南大東島経由で那覇、あるいはその逆といったように、単純な南・北大東島の移動ではなく、両島と那覇を移動するための需要が多くを占めていたためでした。このためRACは北大東~南大東の運休にともない、那覇~南大東、那覇~北大東の各路線を、1日0.5便ずつ増やす予定です。
なお、今回RAC便が運休となることで、南北の大東島間を行き来するアクセス方法としては、大東海運の貨客船を用いた海路がメインになります。