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自衛隊の顔「軽装甲機動車」の後継はどうなる? コマツ撤退から1年半 その現状は…?

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陸上自衛隊と航空自衛隊で運用されている「軽装甲機動車」、これまで国内開発されてきましたが、後継車両は海外メーカーのものになるかもしれません。国産が難しい理由と、後継選定の現状について解説します。

陸自だけで1800両あまり調達された「軽装甲機動車」 なぜ更新?

 防衛省は2020年9月30日(水)に発表された、令和3(2021)年度防衛予算の概算要求に、陸上自衛隊と航空自衛隊の軽装甲機動車を後継する車両を選定するにあたって、参考品を取得するための経費として14億円を計上しました。

Large 201017 lav 01アメリカ軍が「HMMVW」の後継として導入を進めている「JLTV」。軽装甲機動車の後継候補のひとつか(竹内 修撮影)。

 2001(平成13)年度から2015(平成27)年度までのあいだに、陸上自衛隊だけで1818両が調達された軽装甲機動車は国内でも目にする機会が多く、陸上自衛隊の「顔」といっても過言ではない車両です。

 しかし、調達が開始された21世紀初頭には想定されていなかった、南スーダンでのPKO活動をはじめとする陸上自衛隊の任務の多様化に対して、既存の軽装甲機動車では装甲防御力などの対応が困難になりつつあります。また、将来の排気ガス規制強化に対応するためには、エンジンの換装も必要になることから、陸上自衛隊と防衛装備庁は数年前から、軽装甲機動車の更新を検討してきました。

 陸上自衛隊の装甲車両は、草創期にアメリカから供与された車輌と、近年、有事の際の法人保護用に少数をタレス・オーストラリアから導入した「輸送防護車」(ブッシュマスター)、水陸機動団用にBAEシステムズから導入したAAV7のような一部の例外を除き、防衛省(庁)と国内メーカーが共同で開発し、国内メーカーが生産した車両で固められてきました。

 この前例に則れば、軽装甲機動車の後継車両は防衛省と国内メーカーが共同開発する車両となるのですが、実のところこの後継車両の国内開発は困難な状況にあります。

軽装甲機動車の後継車両は国産できないかも その経緯と理由

 軽装甲機動車は防衛庁と小松製作所によって共同開発されましたが、2019年2月21日付の読売新聞など複数のメディアは、小松製作所が今後、自衛隊向け車両の新規開発事業から撤退する意向を防衛省に伝えたと報じており、筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)も同様の話を耳にしています。

 日本国内では、三菱重工業と日立製作所も装甲車両の開発と生産を手がけていますが、三菱重工業は16式機動戦闘車と10式戦車の生産に加えて、96式装輪装甲車を後継する次期装輪装甲車に同社の提案が採用される可能性があり、また近接戦闘を行なう普通科などの職種への配備を想定した装輪装甲車「共通戦術装輪車」の開発も受注していることから、前述した軽装甲機動車の後継車両開発にまで手を広げられる余裕はないと筆者は思います。

 日立製作所には96式自走迫撃砲や75式ドーザの後継車輌など、装軌式(いわゆるキャタピラー)装甲車の開発、生産実績はありますが、車輪を備えタイヤを履く装輪装甲車のそれはなく、同社が上述の後継車両開発に手を挙げる可能性は低いと考えられます。

Large 201017 lav 02日産の海外向け四輪駆動車「パトロール」を、UAEの企業が購入し開発した防弾仕様車(竹内 修撮影)。

 ネット上には、トヨタなどの自動車メーカーに開発させるべきとの声もあります。たしかに中東諸国などでは日本製の四輪駆動車をベースとする軽装甲車が開発されていますが、これらは市販されているクルマを購入した上で、車体の防弾加工や対地雷性能の追加といった作業を専門とするメーカーによって開発されています。

 軽装甲機動車後継車両の調達数は市販車に比べてはるかに少ない2000両程度でしかなく、開発のために国内の自動車メーカーが防弾や対地雷技術のために専門家を雇い入れたり、試験設備のための投資を行なったりすることは、まずあり得ないといえるでしょう。

「軽装甲機動車」後継選定の現状は? 候補と目されるものは…?

 こうした理由から防衛省と陸上自衛隊は軽装甲機動車を後継する車両として、外国企業が開発した車両の導入も検討しています。防衛装備庁は2019年10月に、この後継候補となり得る車両の調査などを行なう「小型装甲車に関する技術資料の作成業務」を、三菱総合研究所に委託しました。

Large 201017 lav 03オーストラリア陸軍が運用している軽装甲車「ハウケイ」(竹内 修撮影)。

 筆者が取材したところによれば、防衛装備庁は調査対象とする車両の条件として、4名以上の乗車が可能で、火器、弾薬、所要の補給品などを積載できる構造であること、車体幅2.6m未満であること、車体長6.5m未満であること、最大100km/h以上であること、CH-47輸送ヘリコプターによる懸吊(けんちょう)が可能であることなどを挙げています。

 また外国製品に関しては、アメリカ、オーストラリア、トルコ、スイス、イスラエルの調査を必須としており、1か国以上(イスラエルは必須)を訪問することも求めています。

 三菱総合研究所がどのような外国製車両の調査を行なっているのかは不明ですが、おそらくアメリカ陸軍が現在、運用している汎用四輪駆動車「HMMWV(ハンヴィー)」の後継として採用した「JLTV」やオーストラリア陸軍が運用している「ハウケイ」、2019年11月に幕張メッセで開催された防衛・危機管理総合イベント「DSEI JAPAN 2019」に実車が出展されたトルコの「NMS 4×4」、同展示会で模型が展示された、スイス陸軍などが採用している「イーグルⅣ」といった車両が調査されているものと考えられます。

Large 201017 lav 04スイス陸軍などで運用されている軽装甲車「イーグルⅣ」(画像:ジェネラル・ダイナミクス・ヨーロピアン・ランドシステムズ)。

 防衛省と陸上自衛隊はその調査結果を踏まえた上で、令和3年度予算にて複数の外国製車両を購入し、評価試験を経て、軽装甲機動車の後継車両を選定することになると、筆者は思います。

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