まだまだ、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎に注意したい季節ですが、ネット上で先日、「ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎の予防策として腹巻きが注目されている」という記事が掲載されました。最初は「ノロウイルスに腹巻き？ どうして？」と思いましたが、腹巻きをしておなかを温めると腸内の温度も上昇し、それが体の抵抗力をアップさせ、ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎を防ぐという理屈だそうです。
実際に効果はあるのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
腸は「最大の免疫器官」
Q.「腹巻きをすることでノロウイルスによる感染性胃腸炎を予防できる」というのは、少しとっぴな考えのようにも思えますが、何らかの根拠があるのでしょうか。
市原さん「腸内の温度を含め、体温が上がると免疫力が高まると言われています。人間の体は感染症にかかったときに発熱して体温を上げ、細菌やウイルスと戦います。こうした考え方が、腹巻きをしておなかを温め、腸内の温度を上げると免疫力がアップすると考えられるようになった一因ではないでしょうか」
Q.なぜ、腸内の温度が上昇すると免疫力が上がると考えられているのですか。
市原さん「腸内には多くの免疫細胞が存在し、最大の免疫器官と言われています。体全体の免疫細胞や抗体の60％が腸に集中しています。腸内の温度が上昇することで血流が増し、免疫細胞の機能が上がると考えられるからです」
Q.腸内の温度が何度くらいであれば、最も体の抵抗力が高まるのでしょうか。
市原さん「体の免疫機能は、腸内などの深部体温が37度前後であるときに最もよく働きます」
Q.腸内の温度上昇と免疫力の関係は、医学的にも証明されているのですか。
市原さん「実は現在の医療の素地となっている西洋医学では、腸内の温度を上げると免疫力が高まることを証明した具体的な研究がなく、『医学的根拠がある』とは言えません。ただ、東洋医学では、胃腸の冷えが免疫力の低下につながると考えられています。西洋医学でも、低体温療法を行うと感染症にかかりやすくなることが知られています」
Q.結局のところ、腹巻きをすることでノロウイルスなどによる感染性胃腸炎を予防することはできるのでしょうか。
市原さん「腹巻きをすることで体温が上がり、免疫力がアップするとすれば、ノロウイルスなどの感染症にかかりにくくなる可能性はあります。東洋医学の考えでいけば、冷えが免疫力を下げるので、冷えないよう腹巻きなどで温めることはよいでしょう」
Q.腹巻きはインフルエンザや風邪など、他の病気の予防に対しても効果があるのではないかという声があります。実際に効果があるのでしょうか。
市原さん「腹巻きがインフルエンザや風邪などの感染症対策になるというデータはありません。しかし、腹巻きを着けないよりは着けた方が体温が上がるでしょうし、免疫力が落ちにくくなる可能性はあります」
Q.温かい食べ物や飲み物を取ることも、腸内の温度を上昇させることに役立つといわれています。本当でしょうか。
市原さん「はい、役立ちます。温かい食べ物や飲み物を体内に取り入れることで体温や腸内の温度も上昇します」
オトナンサー編集部
