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「漫画村」見えない広告で稼いでいた...... 深い闇の実態に迫る(気になるビジネス本)

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人気漫画を無断でウェブ上で公開する海賊版サイト「漫画村」による著作権法違反事件で2019年7月、関与していたとみられる人物らが相次いで逮捕された。このサイトは18年4月に閉鎖されたが、5月ごろからからSNSでサイトの復活が噂されており、唐突感がある逮捕劇と何か関係があるのだろうか――。

NHKの報道番組と連動した「取材班」による新書シリーズの最新刊「暴走するネット広告 1兆8000億円市場の落とし穴」では、この「漫画村」の謎に挑み、サイトの背後には深い闇があることを示唆している。

「暴走するネット広告 1兆8000億円市場の落とし穴」(NHK取材班著)NHK出版

「防弾ホスティング」を利用

「漫画村」がインターネット上に登場したのは2015年か16年か、はっきりしないようだが、17年に入ってからその存在が知られるようになり、利用者が急激に増えた。トップページには有名漫画週刊誌の最新号がずらりと並ぶ。人気漫画の単行本のほか、アイドル写真集、ビジネス雑誌やファッション雑誌まであり、それらを「登録不要で完全無料」で読めるとあって、SNSで加速度的に知名度をあげた。「漫画村」はしばしば、トレンドワードの上位に入ったという。

「漫画村」の行為はもちろん違法なのだが、告発すれば騒ぎが大きくなりかえって相手を利することになると出版社側はアクションにしり込み。だが、当初は、出版社との関係から動きを控えていた漫画家らがしだいに怒りの声を上げ始める。これに対し「漫画村」は「国交もない、著作権もない国で運営しているから問題ない」などとネットで挑発。サイトの存在がますます知られる結果になった。

「漫画村」の挑発メッセージは、簡単には正体が見破られないという自信の表れ。サイトが社会問題化してから、政府は「サイトブロッキングを含めてあらゆる方策の可能性を検討」と表明したが、この「ブロッキング」の導入是非をめぐって大きな議論が起きる。

それで実効性ある対策がすぐに立てられる見通しは立たなくなったのだが、「漫画村」ではこうした事態もお見通しだったのかもしれない。NHK取材班は「運営者が摘発されるか、このサイト自体が消滅しない限り、解決はないように思われた」と、正体を突き止める取材をスタートさせる。

「漫画村」の狙いは利用者を多く集めて、広告の閲覧数を上げて収入をあげること。広告も通常のルートで掲載しては、すぐに運営者がわかってしまうので、こちらも巧妙に仕組まれており、簡単に解明できるものではなかった。

取材班はまず「漫画村」のIPアドレスを頼りにサーバーの所在を突き止めようとするが、匿名で取得できる海外の代行サービス会社を使ったもので、米国にあったのだが、その中身はいわば「分身」で、本体は別にあるという。その後、本体である「ホスティング・プロバイダ」がウクライナにあることが判明。このサーバーは、スウェーデンのプロバイダを介して「漫画村」と契約している可能性があることがわかる。このプロバイダは「防弾ホスティング」と呼ばれる秘匿サービスを売りにしており、問い合わせなどには一切応じていなかった。

アドフラウドが収入源か

サーバー追跡から転じた広告ルートからの解明も、海賊版サイトだけに、取材相手となる代理店もクライアントも一筋縄ではいかない。しかし、この広告ルートを追う過程で、「漫画村」のサイトでは、その裏側でとでもいうか、見えないところで大手企業の広告が読み込まれていることが判明する。広告費をかすめとる不正な「アドフラウド(広告不正)」だ。「漫画村」の主要収入源だった可能性がある。

取材班は広告配信事業者に接触を重ね、このアドフラウドに使われていた裏側のサイトへの広告配信が18年4月上旬に停止。その直後に「漫画村」サイトへの接続ができなくなった。

19年2月に電通が発表した「2018 日本の広告費」によると、18年のインターネット広告費は1兆7589億円で、前年比16.5%増だった。地上波、衛星を合わせた「テレビ」は前年比1.8減の1兆9123億円だった。インターネットと地上波テレビの差は259億円。こうした動きから、電通では、インターネット広告は19年に「地上波テレビを追い抜くだろう」と予想している。一方で、ネットでは不正を仕掛けるのが容易なだけに、アドフラウドの増加が懸念されている。

「暴走するネット広告 1兆8000億円市場の落とし穴」
NHK取材班著
NHK出版
税別800円

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