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さらば「74式戦車」 西日本屈指の“赤獅子”戦車部隊もまもなく廃止へ どう生まれ変わるのか

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2022年12月、滋賀県今津駐屯地で創立70周年記念行事が行われ、もうすぐ姿を消す第3戦車大隊の74式戦車が一般公開されました。伝統ある部隊マークも消えるようで、残り少なくなった74式戦車とともに足跡を振り返ります。

第3戦車大隊 最後の晴れ舞台

 2022年12月4日、滋賀県の琵琶湖西岸、高島市今津町にある陸上自衛隊今津駐屯地において、創立70周年の記念行事が執り行われました。当日は曇り空で気温も低く、少し小雨も降った生憎の天候でしたが、それにも関わらず3年ぶりの式典開催ということから多くの一般見学者でにぎわっていました。

Large 230105 3tkb 01 2022年12月4日、今津駐屯地の創立70周年記念式典において、第10戦車大隊と共に観閲行進を行った第3戦車大隊所属の74式戦車(吉川和篤撮影)。

 ここ今津駐屯地には、第3師団隷下の第3戦車大隊や第10師団隷下の第10戦車大隊、中部方面隊直轄の移動監視隊や無人偵察機隊、駐屯地業務隊などといった部隊が駐屯しています。なかでも第3戦車大隊が所属する第3師団は、3個普通科連隊を基幹とする即応近代化部隊で、滋賀県を始めとして京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県など近畿2府4県の防衛警備や災害派遣を担当する重要な役割を担っています。

 そのような首都圏に次ぐ政治経済の要といえるエリアを守る第3師団のなかで、唯一の戦車部隊として第3戦車大隊は存在感を放ってきました。ところが、そんな第3戦車大隊も戦車定数削減と部隊再編の一環で、2023年3月に姿を消す予定です。

 第3師団隷下には、新たに16式機動戦闘車を装備した第3偵察戦闘大隊(仮称)が編成される計画ですが、それにともない、これまで主要装備として運用されてきた74式戦車は姿を消すため、今回の今津駐屯地記念行事における第3戦車大隊の74式戦車による観閲行進や訓練展示は、一般の目に触れる最後の機会となりました。

今津駐屯地の主力 74式戦車とは?

 この74式戦車は、61式戦車の後継として1974(昭和49)年に制式採用された戦後第2世代の国産戦車で、現在陸上自衛隊の主力である10式戦車からは2世代前、90式戦車からでも1世代前のやや古い戦車となります。そのため現在では国内の戦車部隊から続々と退役が進んでおり、西日本ではこの今津駐屯地と岡山県日本原駐屯地の第13戦車中隊でしか見られなくなっています。

Large 230105 3tkb 02 74式戦車とともに観閲行進を行う第3戦車大隊の16式機動戦闘車。砲塔側面には白い「三」と赤いライオンからなる同大隊マークが見える(吉川和篤撮影)。

 しかし、半世紀ほど前の開発当初は、新機軸を盛り込んだ世界レベルで見ても遜色のない性能を持っていました。たとえば起伏に富んだ日本の地形に合わせて油気圧式サシペンション(ハイドロニューマチック)を採用しており、これにより車高を上下に各20cm変える事が可能で、さらに車体全体を前後に6度、左右に9度傾けることができました。

 これにより、丘などの稜線から砲塔(主砲部分)だけ出した待ち伏せ砲撃が容易に行えるようになり、日本の地形を生かした戦闘が可能だとして、この姿勢制御装置は後の90式や10式戦車にも受け継がれていきます。

 またカニの甲羅を思わせる丸みを帯びた偏平なデザインの砲塔は、敵の砲弾をそらして弾きやすい、いわゆる避弾経始に優れたもので、当時としては高い防御力を有していました。主砲のイギリス製L7系51口径105mmライフル砲は、90式戦車や10式戦車の120mm滑腔砲には劣るものの信頼性は高く、現に16式戦闘機動車の52口径105mmライフル砲もこのL7系戦車砲を発展、国産化させたもので、74式戦車と砲弾の共用が可能です。

 こうした性能を持っていたからこそ、74式戦車は配備開始から20年以上に渡って日本の主力戦車としての地位を務めることができたといえますが、やはり開発から50年近く経過し、老朽化・陳腐化していることは否めません。またロシアのT-72戦車のような性能向上のための近代化改修も行われなかったため、“老兵”は静かに消えていく運命になったといえるでしょう。

大隊廃止とともに消える真っ赤な部隊マーク

 今津駐屯地の第3戦車大隊は、自衛隊の前身である警察予備隊時代の1952(昭和27)年9月に新編された今津特別訓連隊が源流となっています。その後、1954(昭和29)年に陸上自衛隊が発足すると、同年10月の第3特車(当時は戦車を特車と呼んだ)大隊への改編を経て、1962(昭和37)年1月に現在の第3師団隷下の第3戦車大隊へとなりました。

Large 230105 3tkb 03 16式機動戦闘車の砲塔側面に描かれた第3戦車大隊のマーク。部隊改編にともない、このマークも廃止されて新しい部隊マークが描かれる(吉川和篤撮影)。

 当初はアメリカから供与されたM24軽戦車を装備しており、後に61式戦車の配備を経て、現在のような74式戦車の運用へと行きついています。ちなみに、部隊規模は現在でこそ大隊本部の指揮下に本部管理中隊と2個戦車中隊という編成ですが、過去には最大4個戦車中隊まであったこともあり、その頃は今の倍近くの戦車を保有していたようです。

 なお部隊マークは、昔は琵琶湖を描いたりしたこともあったようですが、現在は「三」を示す3本の白線に、咆哮する赤いライオンを組み合わせたデザインのものが使われています。

 このように伝統ある第3戦車大隊も、前述したように2022年度末に廃止されて、名称とともに部隊マークもが消えることが決まっています。ただ、こうした戦車部隊の再編成の動きは日本各地で始まっており、関東では首都防衛の要である第1師団の改編にともない、2022年3月にはやはり師団唯一の戦車部隊であった第1戦車大隊が廃止となり、同じく廃止された第1偵察隊と統合。東京と埼玉の都県境にまたがる朝霞駐屯地で、16式機動戦闘車を主力装備とした第1偵察戦闘大隊が新編されています。

 第3戦車大隊と入れ替わる形で、今津駐屯地に誕生する偵察戦闘大隊も同様に16式機動戦闘車を主力装備とすることが決まっていることから、どんなデザインの新部隊マークが用いられるのか、今から想像するのも一興でしょう。

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