冬の電車は、汗が出るほど暖房が効いていることがあります。夏のシーズンは弱冷房車がありますが、「弱暖房車」は存在しないのでしょうか。
実は既に「弱暖房」だった!?
寒い季節になると、「暖房で電車内が暑い」という声がしばしば話題になります。2023年も11月の時点で既に「朝の寒さに勝つための上着で電車の暖房に負けてる」「電車の中が、暖房が効きすぎてて汗だくで、気持ち悪くなってきた」といった声がSNSでは確認できます。「弱冷房車」のように「弱暖房車」が設置されていないのは、なぜなのでしょうか。
冬場に混雑する駅のイメージ(画像:写真AC)。
そもそも車内の暖房設定温度は、会社によってバラバラです。各社が考え方をwebサイトなどで公表しています。
たとえば西武鉄道は19度ですが、東武鉄道は23度の設定で、基本的には車内の混雑状況や外気温で車掌が判断し暖房のON・OFFを行っています。東急電鉄の車内暖房は、温度を感知するセンサーにより自動運転となっており、車内設定温度が20度以下で作動し、22度以上になるとスイッチが切れます。
JRに関しては路線が多いため、路線や区間によって異なります。都営地下鉄の場合は、大江戸線以外は20度設定でON・OFFはセンサー感知、大江戸線は原則として暖房を使用しないとなっているそうです。
ちなみにパナソニックの調査によると、自宅での暖房の平均設定温度として、最も回答が多かったのは25度とのことです。各社によって設定温度にバラつきはありますが、家での設定温度よりも低めに温度が設定されているということで、家にいるときよりも厚着の人を想定していることがうかがえます。つまり、自宅に比べれば既に“弱暖房”といっていい設定温度といえます。
果たして対策はあるのか?
では、ここまで配慮されているのになぜ暑いと感じるのか。乱暴な言い方をすれば「寒いと思う人に合わせているから」かもしれません。
暖房の場合、前出したように電車ではこまめにスイッチをON・OFFしていることや、乗客がマフラーやコートを脱ぐなど個人で調節することも可能です。「弱暖房車」がないこともその辺りが関係しています。しかし冷房の場合は、車内の寒さ対策のみのために上着を持っている人は少なく、その場で調節したくてもできない人がいることから、「弱冷房車」などの配慮がされているようです。
各事業者ともこの対応には苦慮しており、都営地下鉄では「利用いただくお客様に少しでも快適にご乗車いただけるよう、引き続き適切な空調の管理に努めてまいります」としています。東急は、「車内の冷暖房に関しては、『暑い』『寒い』両方のご意見等お客さまからさまざまな声をお寄せいただいております。温度の感じ方に個人差もあり、すべてのお客さまに快適と感じられる環境を提供できないのが実状です」と、乗客に理解を求めています。
大江戸線は地下深くで熱がこもりやすいため基本暖房は使用しない(乗りものニュース編集部撮影)。
暑さを避けるべく、乗客が比較的少ない車両を選ぶほか、あえて立ち、座席下にあるシーズヒーターの暖気を避けることもできますが、満員電車の場合はそうはいきません。乗車前に上着を脱ぎ、それを収納できるバッグなどを持って行く程度の方法しかなさそうです。なかには、体に冷却シートをつけて冬の車内の“暑さ対策”をしている人もいるようです。