「日本一長い駅名」は鉄道会社にとって観光資源になることもあり、新駅開業や改称などで幾度となく「記録更新」が行われました。中には、解釈の違いによって2つの駅が同時に「日本一」を名乗ることも。いくつか例を見ていきます。
ディズニーリゾートラインを抜き表記上の「日本一」は京福電気鉄道に
2020年9月現在、日本の駅名で最長なのは京福電気鉄道北野線の「等持院・立命館大学衣笠キャンパス前」（京都市北区）です。2020年3月20日に「等持院」から改称され、表記17文字、ふりがな26文字（記号を除く）でいずれも日本一となりました。
「等持院・立命館大学衣笠キャンパス前駅」の駅名標（2020年4月、乗りものニュース編集部撮影）。
同じく表記17文字の駅や停留場名は全国に3つあり、
・東京ディズニーランド・ステーション（ディズニーリゾートライン、千葉県浦安市）
・リゾートゲートウェイ・ステーション（同上）
・富山トヨペット本社前（五福末広町）（富山地方鉄道市内軌道線、富山市）
が同率1位です。
「日本一長い駅名」が注目されるようになったきっかけは、1988（昭和63）年に開業した阿武隈急行の「やながわ希望の森公園前駅」（福島県伊達市）といえるでしょう。表記11文字、ふりがな16文字で、駅名標や入場券の長さは他の駅の倍ほどありインパクトは十分でした。
しかしそのわずか2年後の1990（平成2）年、鹿島臨海鉄道大洗鹿島線に「長者ヶ浜潮騒はまなす公園前」（茨城県鹿嶋市）が開業します。表記13文字、ふりがな22文字で日本一に。駅名標に「日本一長い駅名」のステッカーを貼るなどアピールが行われました。
「6年天下」 元になった施設が消滅した一畑電気鉄道の駅
さらにその2年後の1992（平成4）年には、南阿蘇鉄道に「南阿蘇水の生まれる里白水高原」（熊本県南阿蘇村）が開業しました。表記14文字、ふりがな22文字で記録を更新したのです。しかし先述した鹿島臨海鉄道の「長者ヶ浜潮騒はまなす公園前」も、ふりがなでは22文字で首位タイであったため、引き続き「日本一長い駅名」を名乗り続けました。
「長者ヶ浜潮騒はまなす公園前」の駅名標（2019年8月、乗りものニュース編集部撮影）。
しばらく経った2001（平成13）年、一畑電気鉄道北松江線の古江駅（島根県松江市）が「ルイス・C・ティファニー庭園美術館前」に改称されました。表記18文字、ふりがな23文字（記号を除く）で首位に躍り出ました。
ところが、この駅名の元になった美術館は2007（平成19）年に閉館。これにともない駅名も同美術館があった庭園の名前にちなむ「松江イングリッシュガーデン前」に再度改称されました。
そのため、「南阿蘇水の生まれる里白水高原」と「長者ヶ浜潮騒はまなす公園前」はそれぞれ首位に復帰。鹿島臨海鉄道は「駅名返り咲き記念」の記念乗車券を発売したといいます。
「日本一長い駅名」さらなる記録更新はある？
なお長者ヶ浜潮騒はまなす公園前駅の駅名標は現在、「日本一長い駅名」ステッカーに「東」の文字を張り付け、「東日本一長い駅名」としてアピールを続けています。一方、南阿蘇鉄道は2016年の熊本地震によって立野～中松間が不通になり、南阿蘇水の生まれる里白水高原駅も、2020年9月現在、休止となっています。
副駅名の付いた希望が丘高校前の駅名標（2019年9月、乗りものニュース編集部撮影）。
「日本一長い駅名」は新駅開業時や既存駅の改称によって今後も生まれるかもしれません。ただし近年は、システム改修や周知などにかかるコストの問題もあり、駅名を改称せず「副駅名」を付加するというケースが増えています。実際、副駅名を含めると、福岡県北部を走る筑豊電気鉄道の「希望が丘高校前（世界遺産遠賀川水源地ポンプ室）」のほか、各地にネーミングライツによる様々な「長い駅名」が存在しています。
「日本一長い駅名」に、副駅名としてなるか、正式な駅名としてなるのかは、採用にかかるコストと観光資源として期待される増収とを天秤にかけた結果次第になっていきそうです。
