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コロナ禍で変わった「健康ビジネス業界」最新動向

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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅を中心とした生活が求められるようになり、健康増進に対する意識が高まった。本書「最新健康ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本」(秀和システム)は、成長産業である健康業界と健康ビジネスの最新動向を紹介した本である。

「最新健康ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本」(川上清市著)秀和システム

著者の川上清市さんは、日刊自動車新聞、日本工業新聞などを経て、1988年にフリージャーナリストとして独立。株式投資、教育、健康、農業など幅広い分野を取材している。著書に「事例でわかる! クラウドファンディング成功の秘訣」「最新機械業界の動向とカラクリがよ~くわかる本」などがある。

大和証券グループ本社、CHO(最高健康責任者)を選任

第1章で、健康ビジネスと業界の最新トレンドをまとめている。

まず、「健康経営銘柄2022」の50社に注目している。東京証券取引所が経済産業省と共同で選定・公表した銘柄で、32業種の50社が選ばれた。

健康経営とは、社員の健康保持・増進の取り組みが将来的に企業の収益性を高める投資であるとの考えのもと、社員の健康管理を経営的な視点でとらえ、戦略的に実施することだ。

8年連続で「健康経営銘柄」に選ばれた花王は、全社および各事業場で健康づくりを推進する体制の強化、データ分析による「花王健康白書」の作成などを行っている。

また、大和証券グループ本社は、CHO(最高健康責任者)を選任し、役員も積極的に関与して、社員向けのオンライン診療、メンタルヘルス対策などに取り組んでいる。

医療費が高騰する中で、「自分で自身の健康を管理する」というセルフメディケーションが、重要視されているという。

こうした背景から、従来の医療費控除とは異なる仕組みも導入された。健康診断や予防接種などをきちんと受けた人が、一部の市販薬を購入した際に、所得控除を受けられるようにしたものだ。

風邪薬や胃腸薬など、厚生労働省のホームページに記載されているスイッチOTC医薬品など3380品目が対象で、家族のぶんを合わせて、年間1万2000円を超えた部分の金額について所得控除を受けられる。会社の健康診断や予防接種を受けた証明書と対象医薬品のレシートを添えて確定申告すれば、所得税と住民税のそれぞれから減税される。

医療関連ビッグデータを活用したビジネスが広がる

医療関連のビッグデータを活用したビジネスが広がりを見せているそうだ。

たとえば、オムロンが2022年2月、医療データ分析のJMDCと資本業務提携。両社がこれまで蓄積してきた健康データを統合してプラットフォームを構築し、心疾患などを予防する新たな医療サービスを提供しようというものだ。

海外では、米アップルが「アップルウォッチで転倒を感知すると自動的に救急車を呼ぶ」サービスを展開するなど、健康データを活用した事業が登場している。

日本では官民が連携し、2023年度中に新組織を置き、データ収集や悪用防止にかんするルールをつくる計画だ。NTTやSOMPOホールディングス、エーザイなど50社が参加する予定だ。

利用者本人の同意のもとで各企業がデータを連携しやすくすることを目指している。血圧や血糖値などのデータをかかりつけ医に提供し、診療に役立てる方法も検討する。

いま最も勢いがあるのは健康食品業界だ。

健康関連菓子やドリンクまで含めれば、2兆円に迫る市場だという。最も成功の確率が高いのは、「単品リピート通販」というモデルだ。1つの強い商品に絞り込み、徹底的に訴求していくことで、リピート客を増やす販売スタイル。

一方、健康食品ビジネスのあとを絶たない悪質販売についても指摘している。

医薬品的な効能・効果をうたった表示や広告を出すことは法律で禁止されているが、虚偽・誇大な広告も少なくないという。たとえば、「〇〇の働きで体内の余分な脂肪を分解する」といった表示も違反となるそうだ。健康食品の景品表示法違反の事例を紹介している。

コロナ禍で会員数急減したフィットネス業界

温浴施設やフィットネスクラブについても取り上げている。

フィットネス業界は会員の高齢化が進む一方、20~30代の女性層のフィットネス離れが目立つという。さらに2020年から21年にかけて、コロナ禍の影響で会員数が急減した。

その一方で、24時間セルフサービス型ジムが増加。新興勢力のライザップが急成長し、売上高で1位になったという。

家庭用フィットネス機器では、外部からの電気的な刺激で筋肉を運動させる他動型のEMSやフィットネスバイクの人気が高まっている。コロナ禍以降、コーチングのオンライン化が進み、トレーニング機器と組み合わせてレクチャーしてくれるサービスも登場した。

一方では、仕事のストレスが原因で「心の病」を抱える人が急増。なかでも「うつ病」は、患者数が100万人を突破し、「国民病」とも言われているらしい。

メンタルヘルス対策として導入が広がっているのが、外部専門機関を利用する「EAP」と呼ばれる従業員支援プログラムだ。社内の人に知られず、専門家に相談できる安心感や自己負担なしで相談できる気軽さが特徴で、利用する企業が増えているという。

新制度でビジネスチャンスも増えそうだ。

経済産業省、総務省、厚生労働省が連携して実証実験を進めている「PHR(パーソナルヘルスレコード)」もその1つだ。

これは、スマホで日々の体調や運動履歴を記録する健康サービスが誕生するなど、民間企業も巻き込んで広がりを見せている。今後、さまざまなアプリが生まれそうだ。

評者もスポーツジム、家庭用フィットネス機器とさまざま利用してきたが、長続きしなかった。いまはアップルウォッチを使ってウォーキングと自転車の記録を付けている。運動すれば自動的に起動するから楽だ。

AI(人工知能)が得意とする分野でもあり、よりパーソナルな展開が期待できそうだ。(渡辺淳悦)

「最新健康ビジネスの動向とカラクリがよ~くわかる本」
川上清市著
秀和システム
1540円(税込)

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