イギリス海軍が原子力潜水艦の運用に苦慮しているようです。ついに修理できずに放置するものまで出ており、稼働率はかなり悪くなっています。
まさかのドックが満杯状態
イギリス海軍が原子力潜水艦の運用に苦慮しているようです。2023年11月に入ってからイギリスの複数のメディアが、アスチュート級攻撃型原子力潜水艦「オーディシャス」が現在修理できない状態で放置されていると報じました。
アスチュート級攻撃型原子力潜水艦(画像:イギリス海軍)。
原因は修理場所が満杯であることのようです。同艦は原子力潜水艦のため収容できる乾ドックが限られ、同艦が修理可能な唯一残っているプリマスのドックが2023年11月現在で修理中のため、丸1年は使うことができないそうです。
実は、2022年2月のウクライナ侵攻以降、ロシアの脅威に備えるために潜水艦は長期間の酷使が続いています。「オーディシャス」は今回のドック入り待ち直前の2023年4月11日まで行われた地中海での任務で、計363日というほぼ1年に及ぶ任務についていました。これはアスチュート級原子力潜水艦としては過去最長です。
潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を積み核戦力を担う、ヴァンガード級原子力潜水艦も、本来は60~70日であるところ150日を超える長期間任務に従事しています。こちらは核ミサイルも扱っているということで、乗務員の心身の疲労増大は「破滅的な危険性をはらんでいる」と2023年9月に批判報道があったばかりです。
原子力潜水艦に関する情報は海軍でも秘匿性が高いため、詳細は明らかではありませんが、イギリスでの一部報道によると、このような酷使に加え、故障などのトラブルの重なりもあり、アスチュート級原子力潜水艦は全艦がドック入り、ヴァンガード級原子力潜水艦も4隻中2隻がドック入りで、しばらく海に出られないとしています。
そのため、タブロイド紙の「ザ・サン」は、「ロシアから守るために修理を待って港に座礁」「ロシアにイギリス海域での『フリーパス』を与えたことになる」と批判しています。
ウクライナ侵攻が始まった2022年2月以降、ロシアの潜水艦の行動が冷戦並みに活発になっていますが、イギリス海軍は度重なる軍縮での準備不足がたたり、対応に苦慮しています。トニー・ラダキン国防参謀総長は2023年7月、その稼働率の悪さについて、ナポレオン戦争(1803~1815)以来、最も軍の規模が縮小していると指摘。「軍全体に言えることだが、我々はより装備を充実させる必要がある」と訴えました。