“いじめっ子役”でインパクト 俳優、声優、歌手とマルチな才能
俳優の伊藤沙莉さん(29)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「虎に翼」が4月1日からスタートします。芸能生活20周年の伊藤さんの魅力に迫ります。
1994年、千葉県で3人兄妹の末っ子として生まれた伊藤さん。自身のインスタグラムでツーショットを投稿するなど、実兄がお笑いコンビ「オズワルド」の伊藤俊介さんなのも知られています。
そんな伊藤さんは2003年に放送された連続ドラマ「14ヶ月〜妻が子供に還っていく〜」(読売テレビ・日本テレビ系)で役者デビューを果たしました。体が少女に若返った女性研究員役を演じ、当時9歳とは思えぬ大人びた演技が注目を浴び、名子役の道をスタートさせました。
一躍脚光を浴びたのが、2005年放送の連続ドラマ「女王の教室」(日本テレビ系)。同作は俳優の天海祐希さん演じる小学校教師が子どもたちを恐怖で支配していく異色の学園ドラマで、その過激な内容が賛否を巻き起こし、社会現象にもなりました。
伊藤さんが演じたのは、俳優の志田未来さん演じる神田和美をいじめる気の強い田中桃。放送からすでに20年近く経っていますが、伊藤さんの演技は今なお多くの人の記憶に残るほどのインパクトだっため、そこからしばらくは、「演歌の女王」(日本テレビ系、2007年)、「GTO」(カンテレ・フジテレビ系、2012年)、「怪盗 山猫」(日本テレビ系、2016年)と、いじめっ子役が続きました。
どのような作品にも言えることですが、“ヒール役”を任させられるのは大抵実力のある役者ばかり。伊藤さんも、連ドラとしては初となる女性同士の恋愛模様を描いた「トランジットガールズ」(フジテレビ系、2015年)、自分の居場所を求めて宗教団体や風俗の世界へ身を転じていく少女を演じた映画「獣道」(2017年)など、見る人に問題提起する難しい役柄に体当たりで挑み、その演技は高く評価されています。
しかし、2023年9月に出演したトーク番組「アナザースカイ」(日本テレビ系)では、なかなか次の仕事が決まらず、悩んだ時期もあることを明かしていました。家族の励ましや、事務所の社長からの「焦るな、はやるな」という言葉を胸に、役者業を続けた伊藤さん。そんな中、転機が訪れました。2017年に放送された朝ドラ「ひよっこ」で米屋の娘・米子を演じ、再び世間の視線が伊藤さんに注がれたのです。
当初、ヒロインのオーディションを受けていた伊藤さんを見た同作の脚本家・岡田恵和さんがその場で生み出したキャラクターで、勝気な性格ながらも、ヒロインの幼なじみで三男の典男(泉澤祐希さん)が片想いする女性に嫉妬心を燃やす米子のクスリと笑える愛らしい仕草が話題となりました。
2018年には連続ドラマ「獣になれない私たち」(日本テレビ系)で、俳優の新垣結衣さん演じる主人公の頼りない後輩・松任谷夢子も演じました。夢子もまた米子と同様に一見、人から好かれるタイプのキャラクターではありませんでしたが、伊藤さんのコミカルだけど行き過ぎない絶妙なさじ加減の演技により憎めない存在となっていました。
近年では映画でも高い評価を得ており、「寝ても覚めても」(2018年)では大阪のおばちゃん感のあるヒロインの友人役で、「TAMA映画賞」の最優秀新進女優賞と「ヨコハマ映画祭」の助演女優賞をダブル受賞。2021年には、「劇場」「十二単衣を着た悪魔」「ホテルローヤル」の3作品で「ブルーリボン賞」助演女優賞に輝きました。
俳優としての仕事はもちろんのこと、特徴のあるハスキーボイスを武器に連続ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」(カンテレ・フジテレビ系、2021年)ではナレーション、テレビアニメ「映像研には手を出すな!」(NHK総合、2020年)や長編アニメ映画「すずめの戸締まり」(2022年)では声優も務めました。
「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)や「FNS歌謡祭」(フジテレビ系)では、その高い歌唱力も披露。音楽グループ「いきものがかり」の代表曲を12人のアーティストが新解釈したコラボレーションアルバム「いきものがかりmeets」にも名を連ね、男女デュオ「ハンバートハンバート」と「なくもんか」を哀愁のある声で歌い上げるなど、各方面から引っ張りだこの伊藤さん。
4月1日から始まる「虎に翼」では、日本初の女性弁護士で、後に女性初の裁判所長になる三淵嘉子さんをモデルにしたヒロインの猪爪寅子を演じます。戦中・戦後の困難な時代に、現代よりも色濃かった男女差別にも屈せず、自分の生き方を貫いた三淵さん。その意志の強さは、苦しい時期を乗り越えて、朝ドラのヒロインという大役を得た伊藤さんにも通ずるものがあります。これから半年間、伊藤さんが体現するヒロインの波乱万丈な物語は私たちを鼓舞してくれるのではないでしょうか。期待が高まります。
オトナンサー編集部