自動車で有名なホンダの航空機事業子会社、米国ホンダエアクラフトカンパニーが手掛けるビジネスジェット「ホンダジェット」シリーズは、主翼の上にエンジンを配置するユニークなレイアウトで知られています。しかし、実はこのエンジン配置には、先人が存在します。今回、その機体を実際に見てきました。
製造は20機弱だったものの…
自動車で有名なホンダ(本田技研工業)の航空機事業子会社、米国ホンダエアクラフトカンパニーが手掛けるビジネスジェット「ホンダジェット」シリーズは、主翼の上にエンジンを配置するユニークなレイアウトで知られています。しかし、実はこのエンジン配置には、先人が存在します。今回、その機体を実際に見てきました。
VFW614(乗りものニュース編集部撮影)。
それが、1971年に初飛行した「VFW614」です。エンジン開発の遅れやオイルショックなどの影響で、製造機数はわずか20機弱にとどまったものの、当時の西ドイツで初めて開発されたジェット旅客機として知られています。このエンジン配置を採用したのは、地上で異物をエンジンに吸い込むことを防ぐため、脚を短くして乗客の乗り降りを簡単にするためなどの理由とされています。
今回、機内を見てきたVFW614は、ドイツ航空宇宙センター(DLR)で運用されていた研究用航空機「ATTAS」。1985年から2012年までの27年間にわたりDLRで使用され、最先端の実験用航空電子機器で構成される飛行試験装置などを装備。この機では「世界最大の旅客機」として知られているエアバスA380の操縦を模擬的に再現したなどの功績があります。
さらにこの「ATTAS」は、量産型のVFW614と異なり、鼻先が尖っているのも特徴です。これは、試験飛行時に正確な飛行速度や高度を測定するために用いる「標準ピトー管」と呼ばれる装置を取り付けているためと見られます。一般的な輸送機や旅客機などの場合、ピトー管は胴体前側面に設置されているために機首部分は緩やかなカーブを描いてるものの、試験機や実験を目的とした民間機などでは、その用途柄「尖った鼻先」がついていることは珍しくありません。
ちなみに、同じようなエンジン配置を採用している「ホンダジェット」では、主翼の上にエンジンを設置することで、客室面積の拡充や低騒音化などを実現しているといいます。「ホンダジェット」の生みの親である藤野道格氏はこの機の存在を知っていたものの、全く別のアプローチからエンジン配置を決定したと、国内メディアでは報じられています。