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【戦国武将に学ぶ】朝倉義景~北陸に“文化の華”築くも上洛の機逃す~

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浮世絵「太平記英勇伝 二十六 朝倉左衛門尉義景(部分)」(東京都立中央図書館特別文庫室所蔵)
浮世絵「太平記英勇伝 二十六 朝倉左衛門尉義景(部分)」(東京都立中央図書館特別文庫室所蔵)

 越前国(福井県北部)を支配した朝倉義景は、1533(天文2)年に朝倉孝景の子として生まれています。「孝景」というと、戦国大名朝倉氏初代の孝景と同じ名前ですが、義景の父は4代目の方です。従って、義景は5代目となります。

経済振興にも力、隆盛誇る

 名乗りははじめ、延景(のぶかげ)でしたが、1552年、13代将軍・足利義輝から名前の1字を与えられ、義景と名乗っています。また、正室が幕府重臣・細川晴元の娘、さらに継室が摂関家の近衛稙家(たねいえ)の娘だったことからもうかがわれるように、京都との結びつきが強く、本拠の一乗谷には、戦乱の絶えない京都から避難してきた公家が多く住み、戦国三大文化の一つといわれる「一乗谷の朝倉文化」が生まれました。

 一族の長老、朝倉宗滴(そうてき)の活躍もあり、越前は敵に攻めこまれることもなく、逆に加賀の一部に版図を広げるなど、戦国争乱の時代にあって比較的平穏でした。越前国は、太閤(たいこう)検地のデータでも49万9000石余と豊かで、また、日本海航路の主要な港でもある三国湊(みなと)や敦賀湊を持っていて、商品流通経済も盛んでした。義景は街道や橋などの整備にも力を入れ、平和を享受していました。

信長に先越され、滅亡へ

 ところが、1565(永禄8)年5月19日、将軍・足利義輝が三好三人衆らによって殺されたことで、義景の身辺も慌ただしくなります。義輝の弟で奈良・興福寺の一乗院にいた覚慶(かくけい)が義輝の近臣だった細川藤孝に連れられ、一乗谷の義景を頼ってきたのです。覚慶は途中で還俗(げんぞく)し、はじめ義秋、ついで義昭と名乗り、義昭・藤孝主従は2年後の1567年11月21日に一乗谷の安養寺に入っています。

 義昭としては、義景の力を借りて一日でも早く上洛(じょうらく)し、三好三人衆や松永久秀らを追放して将軍になりたいと考えていたわけですが、ことは簡単ではありませんでした。義景は義景で、単独では義昭を擁して上洛できるとは考えておらず、ずるずると月日だけが過ぎてしまったのです。

 しかも、1568年6月25日には、義景の嫡男・阿君(くまぎみ)丸が急死し、悲嘆に暮れた義景は義昭を擁しての上洛など考えられない事態に陥ってしまいました。結局、義昭は尾張から美濃まで版図を広げた織田信長を頼り、その信長によって、その年10月18日、晴れて15代将軍になることができました。

 義景にしてみれば、自分のふがいなさが招いた結果だったわけですが、まさに「鳶(とび)に油揚げをさらわれる」で、信長に敵対意識を持つようになり、ついには信長との戦いとなります。その戦いは1570(元亀元)年4月から1573(天正元)年8月まで続きました。

 義景にとって不幸だったのは、父・孝景が早く亡くなり、1548(天文17)年に16歳の若さで家督を継いだことです。一族の重鎮で義景の曽祖父の弟・宗滴が軍事部門を一手に引き受け、義景自身はほとんど出陣することがありませんでした。1570(元亀元)年6月28日の、織田・徳川連合軍と雌雄を決するあの「姉川の戦い」にも義景は出陣せず、一族の朝倉景健(かげたけ)を総大将として出陣させています。

 義景自身は弓法(きゅうほう)など、吉良流や小笠原流の伝授を受けたといわれていますので、個人技はあったと思いますが、一軍のリーダーとしての資質は欠けていたように思われてなりません。

 その代わりに越前では、義景の好む武芸・犬追物(いぬおうもの)が行われています。家臣たちの士気が落ちないように催されたといわれていますが、盛んに開かれたという曲水宴とともに、国内でしばらく戦いがない状態が続いたことで「平和ボケ」が生じていたのかもしれません。

 結局、1573(天正元)年8月20日、織田軍に攻められ、越前大野郡の六坊賢松寺(ろくぼうけんしょうじ)において自害しています。北陸の地で隆盛を極めた朝倉家の滅亡でした。

静岡大学名誉教授 小和田哲男

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