ウクライナのキーウ経済大学研究所が、西側諸国のロシア制裁に関する調査資料を公開。ロシアは兵器の部品の調達などが厳しくなっていると思いきや、生産能力を持ち直していることが強調されています。
生産能力は2023年にほぼ回復?
ウクライナのキーウ経済大学研究所(KSE)は2024年1月11日、2023年におけるロシアの軍需部品などに関する生産や輸入状況についてまとめた資料を公開しました。西側諸国のロシア制裁に関しての計画や勧告を行っている国際グループ、ヤーマック・マクフォールと共同で調査したものです。
UACから2023年にロシア軍に納入されたSu-35(画像:UAC)。
資料によると、西側諸国及びウクライナの友好国による制裁にもかかわらず、ロシアは軍事産業にとって重要と思われる部品を220億ドル以上、輸入したことが明らかとなっています。
これまでウクライナの戦場で、破壊または鹵獲した兵器には、約2800点の外国製部品が使われていたとのことで、これらの製造を担当した企業を調査中だといいます。西側企業の部品は、ロシア軍のヘリコプター、装甲車両、電子戦装置のほか、極超音速ミサイル「キンジャール」や、イランの自爆ドローン「シャヘド」のロシア版である「ゲラン2」にも使用されているなど、ウクライナのインフラ攻撃に大きな影響を与えているそうです。
KSEはロシアの軍需備品輸入に関して、2022年2月侵攻開始直後には急速に落ちたものの、「2023年にはほぼ完全に回復している」と見解を述べています。
実は日本の製品も使われている!?
調査した兵器に使われていた約2800点の外国製部品のうち、72%はアメリカに拠点を置く企業からもたらされており、スイスが6%、日本が5%と続きます。ロシアと関係が深いとされている中国からの部品は、意外にも4%程度しか使用されていなかったとのことです。
ロシアは欧米や日本などの外国製部品を、経済制裁の抜け穴を利用し、中国、香港、トルコなどの代理店を通じて入手しているようです。調査によると、2023年1月から10月までの軍需部品の輸入のほぼ半分が、こうした生産企業から第三国経由でもたらされているようです。
また報告書では、工作機械の動作をコンピュータで自動化する、CNC工作機の輸入状態について特に注目しています。
CNC工作機2023年1月~10月の輸入額は2億9200万ドルとのことで、これは制裁前と比べ33%も増加しているとのことです。輸入した製品を生産している企業の国別では、ドイツ(42.3%)、韓国(20.7%)、台湾(19.5%)、アメリカ(7.1%)、日本(6.9%)と、こちらも西側の企業が多くなっています。
最新鋭機であるSu-57の生産ライン(画像:ロシア国防省)。
CNCは、兵器外板や航空機、ミサイル、ドローンなどの各部品を製造するに欠かせない機械ということで、資料ではこの分野の機械に関しての制裁も強く訴えています。